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第1章 出会い
幸せ
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小鳥のさえずり、煌く木漏れ日。
家の窓から眺める景色にロゼは幸せを感じながら、自分の三つ編みに結った髪にそっと触れた。
海を映したような青い瞳に青い髪。ロゼを語るとするならばそれで十分すぎるほどだった。
「お母さん!今日のお昼ご飯は何にする?」
ロゼは無邪気に母に尋ねた。母はその青い瞳をロゼに向けると「もう直ぐお父さんが買い物から帰ってくるから、そしたらそのお野菜でサンドイッチにしましょう」と笑って答えた。
ロゼが「うん!」と明るく頷いた時、ちょうど玄関の戸が叩かれた。
「ただいま帰ったよ」
父の声にロゼは「おかえり!」と言って玄関の戸を開けた。手に抱えられた野菜や果物の数々。ロゼたちが住んでいるのは市場のある街からは少し離れた静かな森の中だった。
「おかえりなさいあなた。今日のお昼はサンドイッチにしようと思うの。どうかしら?」
「いいね。手伝うよ」
「私も一緒に作るよ、お母さん」
ロゼは母と父の間に割り込んだ。そんなロゼを見ながら母は「じゃあみんなで作りましょう」と幸せそうな笑みを浮かべた。
青い瞳をもった母と青い髪をもった父。そしてその双方を生まれ持ったロゼ。珍しい家族ではあったが、三人は静かに流れる時間に幸せを感じていた。
****************
「いただきます!」
サンドイッチが完成し、三人はテーブルへ着いた。その美味しそうな出来栄えにテーブルでも三人の笑顔は絶えなかった。
その時だった。
静かな森の中に玄関の戸を叩く音が響いた。
それは普段父が叩くよりも強く、荒いものだった。
心当たりのない三人は不安げに目を合わせた。
「俺が出よう」
そう言って立ち上がったのは父だった。
「どちらさまですか?」
父が戸を開けるとそこには屈強な男が二人立っていた。
「へぇ~、本当に青い髪なんだな。でも男か…。お、母親は噂通り瞳が青い。そしてその娘は両方か…。これは珍しいものを見た」
男の一人がそう呟いた次の瞬間、父がその場に倒れ伏した。
「え…?」
ロゼは何が起こったのか理解できなかった。綺麗だった木目の床に不似合いな赤が広がっていく。
「いやああああ!」
先に状況を理解したのは母だった。男に握られているのは小さめのナイフ。その切っ先は真っ赤に染まっていた。
「お父、さん…?」
「ロゼ逃げて!」
母はそう言ってロゼを突き飛ばした。そして置いてあったパン切り包丁を手に取ると二人の男に向かって駆け出した。
「瞳だけじゃあまり金にならないか」
男は母に怯えることなくなれた手つきでパン切り包丁を振り払った。そしてその切っ先は真っ直ぐ母の首を切り裂いた。
「あ…あぁ…」
ロゼはその地獄絵図にただ腰を抜かしてその場に崩れ落ちることしかできなかった。
母と父の真っ赤な姿。
さっきまで笑いあっていたはずなのに。
どうして…。
頭に衝撃が走りロゼの意識はそこで途絶えた。
家の窓から眺める景色にロゼは幸せを感じながら、自分の三つ編みに結った髪にそっと触れた。
海を映したような青い瞳に青い髪。ロゼを語るとするならばそれで十分すぎるほどだった。
「お母さん!今日のお昼ご飯は何にする?」
ロゼは無邪気に母に尋ねた。母はその青い瞳をロゼに向けると「もう直ぐお父さんが買い物から帰ってくるから、そしたらそのお野菜でサンドイッチにしましょう」と笑って答えた。
ロゼが「うん!」と明るく頷いた時、ちょうど玄関の戸が叩かれた。
「ただいま帰ったよ」
父の声にロゼは「おかえり!」と言って玄関の戸を開けた。手に抱えられた野菜や果物の数々。ロゼたちが住んでいるのは市場のある街からは少し離れた静かな森の中だった。
「おかえりなさいあなた。今日のお昼はサンドイッチにしようと思うの。どうかしら?」
「いいね。手伝うよ」
「私も一緒に作るよ、お母さん」
ロゼは母と父の間に割り込んだ。そんなロゼを見ながら母は「じゃあみんなで作りましょう」と幸せそうな笑みを浮かべた。
青い瞳をもった母と青い髪をもった父。そしてその双方を生まれ持ったロゼ。珍しい家族ではあったが、三人は静かに流れる時間に幸せを感じていた。
****************
「いただきます!」
サンドイッチが完成し、三人はテーブルへ着いた。その美味しそうな出来栄えにテーブルでも三人の笑顔は絶えなかった。
その時だった。
静かな森の中に玄関の戸を叩く音が響いた。
それは普段父が叩くよりも強く、荒いものだった。
心当たりのない三人は不安げに目を合わせた。
「俺が出よう」
そう言って立ち上がったのは父だった。
「どちらさまですか?」
父が戸を開けるとそこには屈強な男が二人立っていた。
「へぇ~、本当に青い髪なんだな。でも男か…。お、母親は噂通り瞳が青い。そしてその娘は両方か…。これは珍しいものを見た」
男の一人がそう呟いた次の瞬間、父がその場に倒れ伏した。
「え…?」
ロゼは何が起こったのか理解できなかった。綺麗だった木目の床に不似合いな赤が広がっていく。
「いやああああ!」
先に状況を理解したのは母だった。男に握られているのは小さめのナイフ。その切っ先は真っ赤に染まっていた。
「お父、さん…?」
「ロゼ逃げて!」
母はそう言ってロゼを突き飛ばした。そして置いてあったパン切り包丁を手に取ると二人の男に向かって駆け出した。
「瞳だけじゃあまり金にならないか」
男は母に怯えることなくなれた手つきでパン切り包丁を振り払った。そしてその切っ先は真っ直ぐ母の首を切り裂いた。
「あ…あぁ…」
ロゼはその地獄絵図にただ腰を抜かしてその場に崩れ落ちることしかできなかった。
母と父の真っ赤な姿。
さっきまで笑いあっていたはずなのに。
どうして…。
頭に衝撃が走りロゼの意識はそこで途絶えた。
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