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★白狐☆

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目覚めの鷹

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 かつて、ダイヤホークと呼ばれる霊獣が国々を襲い続け、誰もがその名を知らない者居ないほどの悪名が轟いていた。


 しかしどういう訳か霊獣は忽然と姿を消し、ようやく平穏を取り戻した様に思えたが、ダイヤホークを誰がどうやって退治、もしくは封印したのかを知るものが現れなかった。


 だが、それは突然に起こる事となった。王国に飛び込んだ一人の魔術師は、瀕死の状態で現れたかと思えばこの国の危機だと言い、その者の一族の秘密を国側に話し再びダイヤホークの脅威を知る事になった。


「って、此処までが大まかなあらすじですが、問題はこの魔術師の話しなんです」


 姫様がそう言い、隣にいた顎髭の男とレイリンと呼ばれるフード姿の者。そして二人のリーダーらしきハーフエルフの女性にアイコンタクトを送り再び口を開いた。


「魔術師はいわゆるはぐれ里と呼ばれる場所からやって来ました。私達とは違う魔術方式をとっているので、里から離れたり国を追い出したりされた者もいたそうです」


「つまり、ダイヤホークはその私達とは違う魔術を使ってどうにかされたと」


「えぇ。ダイヤホークは封印、もとい動けなくなる様に強固に魔術で縛り上げていたそうです。まるで鷹の像のように」


「つまり、それが目覚めの鷹とでも言いたいのか」


 シスターリリィの返事に、ただ頭を縦に振る事しか出来ない姫様は、その目覚めの鷹と呼ばれる封印物が王国の宝物庫から盗み出され、盗賊達がどこかの異世界の宝物庫に隠したまで突き止め今に至ると言う。


「じゃあ。盗んだ盗賊は捕まえてるんだろ?ならソイツらに吐かせれば良いじゃん」


「それが。自らに封印魔術プロテクトを掛けてそこだけは言えない様になっていました」


「でも、目覚めの鷹が盗まれた事と国の危機は関係ないんじゃないの?」


 シスターリリィと姫様の会話に入ったのはブートンだった。確かに封印が解けて暴れ出す事は理解出来るが、王国をわざわざ襲いに来るとは考えにくい。


「我々も例えばダイヤホークが狙っている物や、過去襲われた場所から共通点がないか調べましたが残念ながら何も分からず仕舞いでした」


 姫様がそう言い、結果だけ見ればダイヤホークが王国にやって来る要因を見つけられないでいた。


 危機を伝えにやって来た魔術師が言った為、もしかすると自分達の知り得ない魔術の力かも知れないと、災害が起こる前提でずっと動いて来たのだと語った。


 これまで、口を摘むんでいた太郎は何か思い出そうと頭をかきむしりながら、突然思いついた様に姫様に聞いてみた。


「もしかして、目覚めの鷹ってコレくらいの大きさでコレぐらいの重さで何かグルグル布巻いてる」


「そうですよ。あと裏側に封印の護符貼ってますから見ればすぐ分かります」


「あっ。ほんとお札貼ってる」


「って!なんで持ってるんですか!」


 太郎の手にはソフトボール程の大きさの鷹の形をした布の塊の様なものを握っていた。話しを聞くと初めてのクエストの際、巨大な扉前に落ちていたのを拾っていたとの事だった。


「でも何で扉の中じゃなくて外に」


「まぁ良いんじゃない?って事でアニスに上げる」


 太郎は姫様アニスに目覚めの鷹を当たり前の様に手渡すと、一同は目を見開いたまま固まり、口も開けないでいた。


 この目覚めの鷹を王国まで持って行くだけでギルド証明書が3ランクは上がり、多額の報酬を貰える事は間違い無かったが、まるでお茶を手渡すかの様に当たり前に渡したのである。


「あの、本当に宜しいのですか?報酬等が必要であれば王国の方に」


「ん?いい。だって要るんだろ」


 一同は理解した。そもそもであるが、ギルドの探している不審者が姫である事は明白であり、引き渡すだけで多額の報酬が得られる。


 そして目覚めの鷹の引き渡し。つまり、太郎は報酬という物に対して関心が薄すぎるのである。ただ誰もが良い事なのか悪いことなのかは分からなかった。


「だったら俺達に、譲って貰えるかな?俺達の方が目覚めの鷹をより必要としている」


 突然、森の中から五人組の集団が現れると、魔弾をいつでも放てる様に片腕を構えたまま此方に近づいて来た。


「そうか!不審者は一人だと思い込んでいた」


 多すぎる目撃情報。そして、性別もはっきりとせずに今までチグハグだった情報はココに来て、アニスを含めたこの五人組の仕業だとシスターリリィは確信を持った。


「絶対に渡してはいけません!その中のものが解き放たれれば、どうなる事かは分かるでしょう!」


 アニスの叫びと共に、謎の集団と太郎達との乱戦が始まった。魔術攻防は苛烈を極め、魔弾が飛び交う森の中で散開していった。


 相手はプロであったが、こちらにも顎髭、レイリン、ハーフエルフの姫様の護衛がついていた事と太郎を始めとし、暴力装置シスターリリィが此方にはいる為、圧勝は必須であった。


ーーーーーーーーただ、それは足を引っ張る者さえいなければの話である。


「って!何でそんなところに、、!!邪魔」


「ひぃやぁぁぁ、魔弾があったりゅううう!」


 シスターリリィの接近戦のさなかに太郎は通り過ぎた。ブートンとニコは何だかんだと息のあった攻撃を繰り出し、うまく立ち回っているのが見えた。


 つまり太郎だけが戦火の中にあって、何一つ役には立っていなかった。というよりは邪魔なのでお荷物以下であった。


「こうなったら、女子だけでも無効化してやる。見せてやるよ俺のスキル恥知らずをな!」


 太郎は一秒にも満たない刹那の瞬間に衣服を全て脱ぎ捨て全裸へと変わっていった。太郎は特殊スキルlevel2の恥知らずを使い、辺りにいた異性に対してナニを見せつけたのだった。


「って!誰も効いてない、男しか居なかったのか!!」


「馬鹿じゃないの!コッチが汚いもの見せられてやる気失せるのよ」


「ニコ。見るなよ恥ずかし、、、、いぎゅうぅぅ!!」


 戦っていた筈のニコとシスターリリィの二人から、急所への制裁蹴りという名のクリティカルヒットが見舞われた。


「駄目、返しなさい!それは貴方達が思っている様な物ではないのよ」


 アニスが謎の集団の一人と揉み合ったかと思うと、腕力の無さからか無理やり引き離されると、目覚めの鷹を簡単に奪われてしまった。


「作戦終了。今より全員撤収する」


 その声を皮切りに五人組は、森に散り散りに逃げていった。太郎達も追いかけようとしたが、アニスに深追いして怪我人を出す方が恐ろしいと引き止められた。


「クソッ、折角手に入れたのに奪われるなんて」


 一番悔しがったのは、護衛のハーフエルフの女性であった。勿論、皆一様に肩を落としたが、護衛だけでなく目覚めの鷹まで奪われメンツは丸潰れであった。


 しかし、ハーフエルフの肩に手を置いたアニスは慰める様にしながら、此処にいた者たち全員を呼び寄せると、演説さながらの口調で話し始めた。


「皆様、あまり気に病まないでください。あの鷹は恐らくですが、既に入れ物に過ぎませんでしたので」


 突然の告白。しかし、誰もがどういう事かと理由を知りたがらない訳もなく、皆アニスに向かって我先にと説明を求めた。


 アニスの話によると、あの目覚めの鷹は間違いなく本物である事に変わりはなかったが、どうにも持った瞬間に抜け殻の様な感覚を覚えたらしい。


「つまりは、中身のない入れ物に過ぎないと」


「えぇ、ただその入れ物が不必要という訳ではないので、どちらにせよ奪還する必要はあります」


 すでにダイヤホークは目覚めの鷹の中にはおらず、像自体に危険性はもう無い。しかし、ダイヤホークがどうなったのかはわからない為、危険性はむしろ増したのだと語った。


 一度仕切り直す為、話し合いの結果この場所を離れる事に決めたが、暫くの間はなかなか次に向かう良い場所が決まらなかった。


「そう言えば、お父さんの宿題はもういいの?」


 歩きながらニコが先頭を歩くシスターリリィに聞く。アニスには護衛がピッタリと取り囲み、それを無視して近寄ろうとする太郎とブートンは激し目に殴られていたが、無駄なバイタリティを見せていた。


 結果、人数的にシスターリリィの教会に向かう事にした。いつもであれば広場かギルドの食堂で話をするが、話す内容もさることながら大所帯になった為、費用の掛からない安全な場所を探した結果での事である。


「教会かぁ、でも何か入る時ドキドキするよね。普段入る事なんて無いから、あと背徳感」


 ブートンがそう言うと太郎だけが納得していたが、他の者達からは白い目で見られた。そして何故か護衛達のガード率が上がった。



 教会前にはシスターリリィの父親が掃除をしている最中であった。以前来た際に壊していた壁も真新しく補修されており、普通の教会に見えた。


「何!オヤジ狩りオヤジ狩りなのか!」


 突然の大所帯に驚いた様子でそう叫んだが、シスターリリィが回し蹴りを入れると、スイッチが入ったようで以前と同じ様にシスターリリィとのとっ組み合いが始まった。


 どうにも拳を交えないと意思疎通の出来ない面倒な親子らしい。


 しばらく手合わせを続けていたが、すぐに決着がつくとシスターリリィが教会に入る様に促した。隣には神父である父親がいじけた様子で地面にのの字を書いているのを横目に中に入る。


「じゃあ何処でもかけて良い。椅子ならいくらでもあるからな」


 礼拝堂に入った一同は各々自分の座りたい場所に腰掛けると、今までの事とこれからの作戦の話し合いが始まった。
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