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魔法使い募集中
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各々の家に帰り、それぞれの家族にいきなり朝帰りをしたことを咎められたが、疲労困憊でそれどころでは無かった三人は、泥の様眠り次の日のお昼に目覚めると、いつもの広場に三人して集まった。
「いやぁ冒険したこと母ちゃんに言ったら、めっちゃ怒られたよ。何か太郎がダンジョン入ったら他のメンバーが全滅するから禁止とか酷くない?」
「流石はリーダーのマザー、的確な答に脱帽を禁じ得ない。僕も叱られた、先に報告しなさいって」
「私も同じ。って、私明日から仕事があるから早く帰りたいんだけど。太郎早くクエスト報告して来なさいよ」
太郎が預かっていた燃える石を冒険者ギルドに持っていくことで、ようやく依頼達成となる。つまり今はまだクエスト中と言う事になっている。
「相変わらず如何わしい店にしか見えないな」
この街一番の盛場でもあるギルトだったがネオンが連なり、一応宿経営もしている事から、当日ご休憩ご宿泊可能施設と看板に書かれていた事もあり如何わしい店にしか見えなかった。
「ちーす。また来た」
昨日、初めてギルドを利用した割にはベテラン感を醸し出している太郎だったが、勿論誰も反応などしなかった。ある意味太郎のハートは最強の鋼である。
正面入り口のギルドカウンターに立った瞬間に太郎だけ、裏からやって来た黒ずくめの男達に抱えられ摘み出された。
「あの人何かしたんですか?」
ブートンが他人のフリしてギルドカウンターの受付嬢にそう尋ねると、何でも昨日受付嬢にしつこくナンパに来た新入りの恥知らず冒険者なのだと教えてくれた。
ちなみに、ギルドカウンターの受付嬢は街の綺麗所が選ばれる事はよくある事である。何故ならば冒険者と言えば他所からやってくる人間が殆どである為、各々の街がこぞって美女自慢を兼ねて競う事が原因だと言われている。
太郎の事は今回も放置して、とりあえずギルド依頼書と専用の籠をカウンターに引き渡すと宝石と依頼達成報酬の武具素材を貰うとお礼を言い、立ち去ろうとしたその時。
「そうそう。あの採掘場に最近見知らぬ冒険者が彷徨いてるらしいんだけど、貴方達見なかった?」
「僕は見てません」
「私も、他の冒険者に出会わなかったので」
そう言うと受付嬢は〝分かりました、ありがとう〝と言い、新しいクエストがクエストボードに張り出されているので、またお願いしますとも頼まれた。
「新しいクエスト。あったけど何か低いランクのクエスト少ないな、リーダー持って来たみたいなⅩランク冒険者でも大丈夫なやつ」
「無さそう。あっても殆どが中上級者と同行必須のクエストばかりよ」
ブートンとニコがそう話していると、後ろから魔法使いらしき臙脂色のローブを身に纏いとんがり帽子の女性が声をかけて来た。
「あら、貴方達もしかして新人さん?この時期に始めたなんてツイてないわね」
ブートンにそう言いながら、咥えたパイプから輪っかの煙をブートンに掛けていたが、呆けた様な顔のままブートンは動かなかった。
「どう言う事でしょうか?私達昨日が初クエストだったんですが、今日は新しいクエストが増えたにも拘わらず新人向けのが見当たらないんですよ」
代わりに、ニコが魔法使いに話しかけると少しだけ考えた後、ニコが預かっていた報酬の宝石の入った袋を指差して言ってきた。
「情報はタダって訳には行かないわよ。宝石二つ分かな」
この地域にも通貨自体は存在していたが、地域ごとに通貨が違う為、報酬は通貨と宝石が選べる様になっていた。
一瞬、ニコは躊躇いそうになったが太郎の分二個減らせばいいやと開き直ると、さっさと宝石を手渡した。
「まいどあり~。実は先月からこの辺りに不審な冒険者が彷徨いてるのよ。何か探してる様子だったそうだけど、何を探しているのかは分かってないの。ただその冒険者は採掘場によく出没するそうよ」
「なるほど、だから受付嬢にあんな事聞かれたのか。って始めから受付嬢に聞けばよかったじゃない!」
そんなニコの言葉を交わすかの様に、フラフラと魔法の箒に腰掛けた魔法使いは、ギルドランク上級者しか入れないギルドの二階へ浮く様に飛んでいってしまった。
「まぁ良いか。でも不審ってだけでそんなに警戒するもんかね、太郎は一発アウト感あるけど」
「そうだねニコ。魔法使いって良いよね」
ニコはギロリとブートンの方を見る。会話も噛み合わないほど絆されている様子に、問題児の増えた引率者の如き苦悩を覚えながらも新しいクエストはさておき、ギルドを出た。
「おっせぇ!自分達だけでギルドで何企んでたんだよ。待ちくたびれてバッタ食べそうになったわ」
「企んでるのは太郎だけでしょうが。そもそも、出禁になるような奴が悪い。太郎は存在悪」
「そんな事よりリーダー。魔法使い仲間にしようぜ!」
自由すぎる会話は、終わりどころか先も見えない。しかし、ブートンの提案に太郎は同意して、魔法使いは探す事にした。
「私は反対かなぁ。何考えてるか分からないし、魔法自体が不可思議すぎて苦手」
「だったらニコは休めば良い、ブートンと一緒に〝えきぞちっくだいなまいとばでー〝のセクシー魔法使い探すから」
「そうだ!俺達には女子成分が足りねぇ!コレはもう〝ですてにー〝なのだよ」
「何なのよアンタら!女子なら此処にいるでしょうが」
太郎とブートンの盛り上がりに怒りを覚えたニコがそう言うと、二人は暫く硬直したまま動けないでいたが、ふと我に返った様に言ってきた。
「ゴリラのメスには興味、、、、、、ぐべだばあぁぁぁ」
「ニコの慎ましい胸じゃ僕の心は満たされ、、、、、、、あがゅああぁぁぁ」
ニコは二人に必殺の一撃を放つと、ドシドシと音を立てながら家に帰っていった。邪魔者の居なくなった二人は、コレからが本番だとでも言いたげな物憂げな顔を醸し出していた。
二人はギルド前で魔法使いらしき女子を見つけては、パーティに誘ってみるもやはり特定のパーティがある様で掛け持ちする程の体力は無いと断られ続けた。
暫く誘い続けると、ギルドの職員らしき人間が建物から出て来た為、太郎のみならずブートンまで出禁になるわけには行かないとギルド前を慌てて離れると、いつもの広場まで戻ってきた。
「ヤバかった。でもあれだけ声掛けて駄目ならリーダーもう諦めようよ」
「バッカ野郎!ブートン、オマエのボンキュッボンへの情熱はそんな簡単に挫けて良いのか!オマエの中のオスはその程度なのか!」
「リーダー、、、、、、、、ごめんよ!僕頑張るよ。彼女が出来るまで」
「そうだ!俺達に必要なのは彼女なんだ!」
魔法使いをスカウトすると言う元々の目的を放置しつつ、自分達の欲望を優先させた二人だったがこの後も新たにパーティに入ってくれる者は現れなかった。
「何故だ!何故俺達には魔法使いが必要なのにちょっとスカウトついでに求婚しただけなのに何が悪いって言うんだ」
「リーダー作戦を変えましょう。新人とかならまだパーティ組んでない人である確率は高いと思われます」
その作戦で行こう!と二人はゾンビアタックを続けた結果。どうやらギルドに既に二人の事がバレてしまった様で、広場方向を避けていく新人冒険者を横目に新人冒険者が居ないかを一日探し続けた。
ーーーーーーーー結局、その日は魔法使いが見つかる事はなかった。
次の日。ニコは仕事に行ってしまった為、昨日と同じ二人でどうするか話し合った結果。街の中心ではなく、採掘場と反対側にある山側の方で魔法使いを探す事にした。
「そう言えばコッチ側あんまり来た事ないな。何か変わったところとか無い?」
「リーダー無理言わないでください。こっちは人口も少ないし、有るのは向こうの端に寂れた廃墟か教会が有るくらいですよ」
山側に近づくにつれ、ブートンが言っていた通り建物や民家が段々と無くなり、辺りが木々に覆われ始めると、突然教会が現れた。
「教会なら、魔法使いの一人や二人いるんじゃ無いか?」
「どうだろう?確か爺さんが一人で住んでるとか聞いたことあるけど」
その時だった。教会の扉が突然破れると同時に誰かが吹き飛ばされ、土煙を上げながら吹き飛ばされたばかりだと言うのに立ち上がる姿が見えた。
「テメェ!いい加減にしやがれ!何度オレの部屋に入るなって言えば気が済むんだ。このクソジジイ!」
白磁の様な不思議な光沢のあるローブを着込んだ、利発そうで小柄な短髪頭の美少年が土煙の中から顔を覗かせ、全身は見えなかったが空色の魔力弾を放ったのが見えた。
「、、、、、、、そんな物では父は倒せん。ドゥーラアァァ!!」
気合いと共にその場で魔力弾は弾け飛び、教会から現れたのは筋骨隆々の老人であった。見れば老人が両手を合わせた箇所が光だし、魔力を溜めていることがわかる。
「撃つときは、腹に力入れて視線で相手をビビらせながらブッ飛ばすんだよ!こうやってな!」
老人が放った魔力弾は、美少年が放ったそれと同じ系統の魔術なのが分かったが、その大きさが比では無いくらい大きかった。
「ふっざけんじゃねぇぇぇぇ!!!」
美少年は向かって来た魔力弾を正面から受け止めていた。掴むと同時に空に向かい受け流すと、予想通りに今の隙をついて老人が美少年に襲いかかると羽交締めにし、ようやく親子ゲンカらしきものに終止符が打たれた。
「あれって魔法使いだよな」
「どうだろう?リーダー聞いて来てよ何か怖いし」
離れた場所から様子を伺っていた太郎とブートンは、話しかけるか戸惑っていると、向こうから声をかけて来た。
「どうかされましたかな?当教会は本日はお休みとなっております」
そう話しかけられたが、老体とは思えぬ筋肉美に慄き話が全く入って来なかった。放心状態のブートンをおいてようやく太郎が口を開いた。
「見事な筋肉ですね。90マッスルはしますよ」
「いやいや、ワシなどまだまだいいとこ80マッスルですわい」
妙な会話が成立した。その姿を見て我に返ったブートンは、筋肉もとい目の前の老人に魔法使いがこの辺りに居ないか聞いてみた。
「ふむ、だったらうちの娘のリリィはどうじゃ?何たって僧侶じゃからのう」
「娘さんがいるんですか!まさかのシスターが仲間に」
何やら表情の溶けたままの太郎はにやけ面のままそう言うと、太郎の肩を何者かが掴み後ろに物凄い勢いのまま投げ飛ばされ、木に叩きつけられた。
「勝手に決めてんじゃねぇ!なんか生理的に無理だから二人とも殴られとけ」
「あー、そんな事だと思っフガァ!!!」
太郎だけでなくブートンも、起き上がってやって来ていた美少年に痛恨の一撃の拳を貰う。もとい、ボーイッシュ過ぎるシスターに殴られたのだった。
「不束な娘ですが、どうかよろしくお願いしまフガァ!!!」
「だから勝手に決めんな!!!」
シスターの独り勝ちであった。
この後、教会で二人の治療を終えると、マッスル爺さんがシスターに〝修行代わりにこの街の不審者とっ捕まえるまで帰ってくるな〝と教会から追い出していた。
「仕方ねぇから、お前ら子分にしてやるよ」
「なんで女なんか、、、、、あぎゃああ」
「宜しくお願いします。ニューリーダー!!!」
新リーダーに逆らった太郎は、魔力を乗せたリリィの拳に吹き飛ばされ、ブートンは新たなリーダーを迎えたのだった。
「いやぁ冒険したこと母ちゃんに言ったら、めっちゃ怒られたよ。何か太郎がダンジョン入ったら他のメンバーが全滅するから禁止とか酷くない?」
「流石はリーダーのマザー、的確な答に脱帽を禁じ得ない。僕も叱られた、先に報告しなさいって」
「私も同じ。って、私明日から仕事があるから早く帰りたいんだけど。太郎早くクエスト報告して来なさいよ」
太郎が預かっていた燃える石を冒険者ギルドに持っていくことで、ようやく依頼達成となる。つまり今はまだクエスト中と言う事になっている。
「相変わらず如何わしい店にしか見えないな」
この街一番の盛場でもあるギルトだったがネオンが連なり、一応宿経営もしている事から、当日ご休憩ご宿泊可能施設と看板に書かれていた事もあり如何わしい店にしか見えなかった。
「ちーす。また来た」
昨日、初めてギルドを利用した割にはベテラン感を醸し出している太郎だったが、勿論誰も反応などしなかった。ある意味太郎のハートは最強の鋼である。
正面入り口のギルドカウンターに立った瞬間に太郎だけ、裏からやって来た黒ずくめの男達に抱えられ摘み出された。
「あの人何かしたんですか?」
ブートンが他人のフリしてギルドカウンターの受付嬢にそう尋ねると、何でも昨日受付嬢にしつこくナンパに来た新入りの恥知らず冒険者なのだと教えてくれた。
ちなみに、ギルドカウンターの受付嬢は街の綺麗所が選ばれる事はよくある事である。何故ならば冒険者と言えば他所からやってくる人間が殆どである為、各々の街がこぞって美女自慢を兼ねて競う事が原因だと言われている。
太郎の事は今回も放置して、とりあえずギルド依頼書と専用の籠をカウンターに引き渡すと宝石と依頼達成報酬の武具素材を貰うとお礼を言い、立ち去ろうとしたその時。
「そうそう。あの採掘場に最近見知らぬ冒険者が彷徨いてるらしいんだけど、貴方達見なかった?」
「僕は見てません」
「私も、他の冒険者に出会わなかったので」
そう言うと受付嬢は〝分かりました、ありがとう〝と言い、新しいクエストがクエストボードに張り出されているので、またお願いしますとも頼まれた。
「新しいクエスト。あったけど何か低いランクのクエスト少ないな、リーダー持って来たみたいなⅩランク冒険者でも大丈夫なやつ」
「無さそう。あっても殆どが中上級者と同行必須のクエストばかりよ」
ブートンとニコがそう話していると、後ろから魔法使いらしき臙脂色のローブを身に纏いとんがり帽子の女性が声をかけて来た。
「あら、貴方達もしかして新人さん?この時期に始めたなんてツイてないわね」
ブートンにそう言いながら、咥えたパイプから輪っかの煙をブートンに掛けていたが、呆けた様な顔のままブートンは動かなかった。
「どう言う事でしょうか?私達昨日が初クエストだったんですが、今日は新しいクエストが増えたにも拘わらず新人向けのが見当たらないんですよ」
代わりに、ニコが魔法使いに話しかけると少しだけ考えた後、ニコが預かっていた報酬の宝石の入った袋を指差して言ってきた。
「情報はタダって訳には行かないわよ。宝石二つ分かな」
この地域にも通貨自体は存在していたが、地域ごとに通貨が違う為、報酬は通貨と宝石が選べる様になっていた。
一瞬、ニコは躊躇いそうになったが太郎の分二個減らせばいいやと開き直ると、さっさと宝石を手渡した。
「まいどあり~。実は先月からこの辺りに不審な冒険者が彷徨いてるのよ。何か探してる様子だったそうだけど、何を探しているのかは分かってないの。ただその冒険者は採掘場によく出没するそうよ」
「なるほど、だから受付嬢にあんな事聞かれたのか。って始めから受付嬢に聞けばよかったじゃない!」
そんなニコの言葉を交わすかの様に、フラフラと魔法の箒に腰掛けた魔法使いは、ギルドランク上級者しか入れないギルドの二階へ浮く様に飛んでいってしまった。
「まぁ良いか。でも不審ってだけでそんなに警戒するもんかね、太郎は一発アウト感あるけど」
「そうだねニコ。魔法使いって良いよね」
ニコはギロリとブートンの方を見る。会話も噛み合わないほど絆されている様子に、問題児の増えた引率者の如き苦悩を覚えながらも新しいクエストはさておき、ギルドを出た。
「おっせぇ!自分達だけでギルドで何企んでたんだよ。待ちくたびれてバッタ食べそうになったわ」
「企んでるのは太郎だけでしょうが。そもそも、出禁になるような奴が悪い。太郎は存在悪」
「そんな事よりリーダー。魔法使い仲間にしようぜ!」
自由すぎる会話は、終わりどころか先も見えない。しかし、ブートンの提案に太郎は同意して、魔法使いは探す事にした。
「私は反対かなぁ。何考えてるか分からないし、魔法自体が不可思議すぎて苦手」
「だったらニコは休めば良い、ブートンと一緒に〝えきぞちっくだいなまいとばでー〝のセクシー魔法使い探すから」
「そうだ!俺達には女子成分が足りねぇ!コレはもう〝ですてにー〝なのだよ」
「何なのよアンタら!女子なら此処にいるでしょうが」
太郎とブートンの盛り上がりに怒りを覚えたニコがそう言うと、二人は暫く硬直したまま動けないでいたが、ふと我に返った様に言ってきた。
「ゴリラのメスには興味、、、、、、ぐべだばあぁぁぁ」
「ニコの慎ましい胸じゃ僕の心は満たされ、、、、、、、あがゅああぁぁぁ」
ニコは二人に必殺の一撃を放つと、ドシドシと音を立てながら家に帰っていった。邪魔者の居なくなった二人は、コレからが本番だとでも言いたげな物憂げな顔を醸し出していた。
二人はギルド前で魔法使いらしき女子を見つけては、パーティに誘ってみるもやはり特定のパーティがある様で掛け持ちする程の体力は無いと断られ続けた。
暫く誘い続けると、ギルドの職員らしき人間が建物から出て来た為、太郎のみならずブートンまで出禁になるわけには行かないとギルド前を慌てて離れると、いつもの広場まで戻ってきた。
「ヤバかった。でもあれだけ声掛けて駄目ならリーダーもう諦めようよ」
「バッカ野郎!ブートン、オマエのボンキュッボンへの情熱はそんな簡単に挫けて良いのか!オマエの中のオスはその程度なのか!」
「リーダー、、、、、、、、ごめんよ!僕頑張るよ。彼女が出来るまで」
「そうだ!俺達に必要なのは彼女なんだ!」
魔法使いをスカウトすると言う元々の目的を放置しつつ、自分達の欲望を優先させた二人だったがこの後も新たにパーティに入ってくれる者は現れなかった。
「何故だ!何故俺達には魔法使いが必要なのにちょっとスカウトついでに求婚しただけなのに何が悪いって言うんだ」
「リーダー作戦を変えましょう。新人とかならまだパーティ組んでない人である確率は高いと思われます」
その作戦で行こう!と二人はゾンビアタックを続けた結果。どうやらギルドに既に二人の事がバレてしまった様で、広場方向を避けていく新人冒険者を横目に新人冒険者が居ないかを一日探し続けた。
ーーーーーーーー結局、その日は魔法使いが見つかる事はなかった。
次の日。ニコは仕事に行ってしまった為、昨日と同じ二人でどうするか話し合った結果。街の中心ではなく、採掘場と反対側にある山側の方で魔法使いを探す事にした。
「そう言えばコッチ側あんまり来た事ないな。何か変わったところとか無い?」
「リーダー無理言わないでください。こっちは人口も少ないし、有るのは向こうの端に寂れた廃墟か教会が有るくらいですよ」
山側に近づくにつれ、ブートンが言っていた通り建物や民家が段々と無くなり、辺りが木々に覆われ始めると、突然教会が現れた。
「教会なら、魔法使いの一人や二人いるんじゃ無いか?」
「どうだろう?確か爺さんが一人で住んでるとか聞いたことあるけど」
その時だった。教会の扉が突然破れると同時に誰かが吹き飛ばされ、土煙を上げながら吹き飛ばされたばかりだと言うのに立ち上がる姿が見えた。
「テメェ!いい加減にしやがれ!何度オレの部屋に入るなって言えば気が済むんだ。このクソジジイ!」
白磁の様な不思議な光沢のあるローブを着込んだ、利発そうで小柄な短髪頭の美少年が土煙の中から顔を覗かせ、全身は見えなかったが空色の魔力弾を放ったのが見えた。
「、、、、、、、そんな物では父は倒せん。ドゥーラアァァ!!」
気合いと共にその場で魔力弾は弾け飛び、教会から現れたのは筋骨隆々の老人であった。見れば老人が両手を合わせた箇所が光だし、魔力を溜めていることがわかる。
「撃つときは、腹に力入れて視線で相手をビビらせながらブッ飛ばすんだよ!こうやってな!」
老人が放った魔力弾は、美少年が放ったそれと同じ系統の魔術なのが分かったが、その大きさが比では無いくらい大きかった。
「ふっざけんじゃねぇぇぇぇ!!!」
美少年は向かって来た魔力弾を正面から受け止めていた。掴むと同時に空に向かい受け流すと、予想通りに今の隙をついて老人が美少年に襲いかかると羽交締めにし、ようやく親子ゲンカらしきものに終止符が打たれた。
「あれって魔法使いだよな」
「どうだろう?リーダー聞いて来てよ何か怖いし」
離れた場所から様子を伺っていた太郎とブートンは、話しかけるか戸惑っていると、向こうから声をかけて来た。
「どうかされましたかな?当教会は本日はお休みとなっております」
そう話しかけられたが、老体とは思えぬ筋肉美に慄き話が全く入って来なかった。放心状態のブートンをおいてようやく太郎が口を開いた。
「見事な筋肉ですね。90マッスルはしますよ」
「いやいや、ワシなどまだまだいいとこ80マッスルですわい」
妙な会話が成立した。その姿を見て我に返ったブートンは、筋肉もとい目の前の老人に魔法使いがこの辺りに居ないか聞いてみた。
「ふむ、だったらうちの娘のリリィはどうじゃ?何たって僧侶じゃからのう」
「娘さんがいるんですか!まさかのシスターが仲間に」
何やら表情の溶けたままの太郎はにやけ面のままそう言うと、太郎の肩を何者かが掴み後ろに物凄い勢いのまま投げ飛ばされ、木に叩きつけられた。
「勝手に決めてんじゃねぇ!なんか生理的に無理だから二人とも殴られとけ」
「あー、そんな事だと思っフガァ!!!」
太郎だけでなくブートンも、起き上がってやって来ていた美少年に痛恨の一撃の拳を貰う。もとい、ボーイッシュ過ぎるシスターに殴られたのだった。
「不束な娘ですが、どうかよろしくお願いしまフガァ!!!」
「だから勝手に決めんな!!!」
シスターの独り勝ちであった。
この後、教会で二人の治療を終えると、マッスル爺さんがシスターに〝修行代わりにこの街の不審者とっ捕まえるまで帰ってくるな〝と教会から追い出していた。
「仕方ねぇから、お前ら子分にしてやるよ」
「なんで女なんか、、、、、あぎゃああ」
「宜しくお願いします。ニューリーダー!!!」
新リーダーに逆らった太郎は、魔力を乗せたリリィの拳に吹き飛ばされ、ブートンは新たなリーダーを迎えたのだった。
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