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★白狐☆

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はじめてのおつかい♡的な

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 初めてのクエストの依頼達成条件は、採掘場での燃える石の採取(ギルドから渡された専用籠いっぱい)である。


 燃える石自体は時折、採掘場の入り口付近にも落ちていたが小さい物が多い為、やはり籠をいっぱいにする為には奥に進むしかなさそうである。


「すぐ終わったらピザパーティーだな」


「魔物が来たら経験値にしてやりましょうよ」


「俺の真の力。暗黒ネロダークブラック(そんな技ない)の見せ所だな」


 自信満々の三人は、採取クエストなどすぐに終わるものだと考えていた。しかし、進めば進むほど暗く狭い使われなくなって長らくの採掘場は、まさしくダンジョンと呼べる物になっていた。


 持ってきていた松明の明かりを頼りに、先頭を押し付け合いながら進むと、ようやく開けた場所に辿り着いた。


「何か広いな。穴があちこちに開いているから、帰り用の来た穴に目印を付けようか」


 広い場所には同じような大きさの穴が等間隔で開いており、どう見ても迷路の様な作りは敢えてそう作った様にしか見えなかった。


 太郎が目印を壁に刻んだが松明の明かりが無ければ見えにくかった為、ブートンが食べていたサンドイッチのパン屑を多めに地面に撒いた。これで来た場所の目印とし、とりあえず隣の穴から順番に攻略する事にした。


「別に探検する事とか、攻略する事が目的じゃないんだから採取に力入れて、とっとと終わらせましょう」


 ニコがそう言いながら、壁や地面に燃える石が無いかをチェックしながら、どんどん進むと一つ目の穴の終着点である突き当たりまでやって来た。


 引き返しては進むを繰り返しながら、見つけた大きめの燃える石を少しずつ拾い集め、一つずつ虱潰しに探索を続けていると、どうやらアタリを引いた様で何処まで行っても突き当たらない穴を見つけた。


「何かヤバイかな。あんまり奥に行くと普段出会わないような魔物に出会う事があるらしいし」


 一番強気だったニコが突然そう言いだすと、太郎とブートンは気にした風もなく〝たぶん大丈夫だろ〝と二人が言いながら奥に進んで行く。


 採掘場の中は暗闇に包まれているにも関わらず、闇の中からいきなり自分達以外の明かりらしき物を見つけ、他の冒険者だと思い声を掛けたのが間違いだった。


「、、、、、、、、!何かいる!?」


ーーーーーーーーグラァァァァア!!


 目の前に現れたのは、採掘場に住み着いたと言われるオオトカゲである。人程の大きさがあり尻尾の先を発光させて餌を取る習性がある為、よく冒険者と間違われる事があった。


「いきなり舌を伸ばして来た、って二人ともどこ行ったんだよ」


 その場から離れた太郎とブートンは、オオトカゲと掴み合っているニコを尻目に〝爬虫類はちょっと〝と言うと、男二人は隠れてしまった。


「この薄情者共!コイツやっつけたらお前等も経験値にしてやるからな!覚えとけよ!」


 ニコはそれだけ叫ぶとオオトカゲの横腹を蹴り飛ばした。このまま追い払えれば良かったが、逃げるどころか怒った様子で再びニコに襲い掛かる。


 オオトカゲは壁伝いに走ってくると、ニコの近くに飛び掛かり、そのまま鋭い爪で切り裂いてきた。それを寸での所で交わし尻尾を踏み付けると尻尾が千切れ、そのままニコの足首にオオトカゲが噛み付いた。


 ニコの顔が歪むとほぼ同時に、太郎とブートンの二人が持っていた剣でオオトカゲを貫き、そのまま地面にオオトカゲを張り付け、ニコの足から離れたオオトカゲを見つけニコを素早くブートンがニコの救出を行った。


「太郎!!頭落としてっっっ!!」


「わかって、、、、、オラァァアァアァァッッッッ!!」


 引き抜いた剣を、すばやくオオトカゲの首に落とす。跳ねた首が壁に当たると生臭い悪臭が漂う。密閉こそされてはいなかったが採掘場である為、空気の流れは無いに等しく太郎は顔を歪めた。


「うわっ、こっち来んな!エンガチョ」


「そうだ!来んな来んな!このくさ太郎」


「お前等!助けてやってその態度はないだろ!」


称号:悪臭クサ太郎を獲得


「イラねぇよ、何の意味があるだよクサ太郎!ってそんな漢字なのかよ!」


 この後、ちゃんと経験値が振り分けられるとブートンとニコはレベルが4になり、太郎はレベルが消しゴムになった。


「俺のレベル消しゴムって!俺の価値が消しゴム位って事かこの野郎!」


 そんな悪臭を漂わせたままの消しゴムは放置され、さっさと二人は採掘場の奥へと進んだ。採掘場奥でようやく火気厳禁の看板を見つけた三人は、松明を消したかったが魔法使いがいない為、辺りを照らす魔術がなかった。


「仕方ない。食べずに取っておいた飴を使おう」


 ブートンはオーバーオールの胸ポケットから瓶詰めの飴玉を取り出すと、ランプの様に瓶に紐を掛けて松明に照らし暫く待った。


「この飴には光を吸収する特徴があるんだ。長時間は無理だけど、燃える石を手早く拾って光が弱まったら、この場所に戻ってまた松明の光を使って光を溜めればいいよ」


 松明を火気厳禁の看板の隣に突き刺し、消さずに明かりを目印にする事にした。飴の入った瓶を頼りに火気厳禁の先を暫く歩くと、燃える石が無数に転がっており四畳半程のスペースが出来ていた。


「コレならすぐに持って帰れそう。ニコ大丈夫?」


 ブートンがニコの足を気遣っていたが、ニコは自分の脚をさすりながら〝大丈夫だから早く拾おう〝とクエストのクリアを優先させていると。


「そうだぞブートン。ニコにはゴリラの血が流れてるんだから、そんな傷くらいギャアァァァァァ!!」


太郎オマエを経験値にしてやろうか!!?」


 ニコが消しゴムを羽交締めにすると、すぐさま消しゴムはタップを繰り返していたが、失神するまで解放されることは無かった。


 横たわった消しゴムリーダーを尻目に二人で作業を進めた。正直、消しゴムがいない方が仕事が捗った。籠いっぱいの燃える石を集めると、横たわる消しゴムの額にフライングニーキックをクリティカルヒットさせると、カエルを踏んだ様な声を上げて目醒めた。


「そろそろ来ると思ってました!フライングニーキック、はいはい。ワロスワロス」


 消しゴムはキレ方が昔型のヲタクであった。額を摩りながら自然な流れで籠を背負わされた消しゴムは、自分が起こされたのは荷物運びの為かよと思いながらも渋々来た道を戻った。


 先程の松明を通り過ぎようとすると消しゴムはニコ達に止められ、飴の瓶に再び明かりを溜めると松明の炎を消した。燃える石を持って松明を持つのは危険極まりない為である。


「わかってた!わかってましたよ!言わなかっただけだから!本当は、分かってたんだから」


 言い訳の多い消しゴムを放置しつつ来た道を戻っていると、ブートンが突然立ち止まった。パン屑を撒いた場所以外は一本道だったはずだったが、目の前には分かれ道が現れていた。


「薄暗かったから、背中にもう一本道が有るなんて気が付かなかったのかも。と言うかどっちか分からない上にもし他にも分かれ道があったらかなりマズい。明かりも長くは持たないし」


「とりあえず風の吹いている方とか分からないかしら。来た道から上手く入ってくれればだけど」


 ブートンとニコがそう話し合っていると、消しゴムが突然走り出した。何事かと思い二人も追いかけて行ったが、やっと追いつくと消しゴムは二人に向かって言い放った。


「俺のシックスセンスが、此処を呼んだのだ」


 見ると、三人の目の前には巨大な扉が聳えていた。見たこともない魔術文字の様なものが刻まれた扉は、三人くらいの人数ではとても開けられる代物では無かった。


「で?此処に何の様なのよ。早く採掘場から出たいんだけど」


「リーダー。お宝は後で良いから帰ってご飯食べたい」


「、、、、、、、、迷った!!!」


 堂々たる告白であった。二人に叱られた後、来た道を戻りながらブートンの食べこぼしをようやく見つけ出し、やっとの思いで穴から出られた頃には日が変わっていた。


 クエスト報告は次の日にする事にした三人は、ようやく帰宅の路につくと薄暗いひと気の無い街にまで戻ると感動さえ覚えたのだった。
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