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★白狐☆

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はずれ町のハズレパーティ

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 此処はかつて、オーパーツ採掘を目的とされた採掘場。異世界からの物が何故が山やら地下やらから出る為に街は炭鉱夫達で栄え、いつしか田舎町であるにも関わらず、そこそこの繁栄をもたらしてくれていた。


ーーーーーーらしい。


 というのも、それは過去の話。採掘場は今は立ち入り禁止のために閉鎖され、ただの洞窟と化している。それもこれも、当時オーパーツの採掘を進めたのは魔界との戦中で、異世界からの武器を手に入れる為だったそうだ。


 つまり、魔王が勇者と呼ばれる誰かに退治され、戦う為の武器は必要とされなくなった今となっては、ただのデカい穴のあるだけのクソ田舎でしかない。


 時折やってくるのは、物好きな冒険者達くらいで穴を見てはダンジョンだと同じ事を口走り、欲の皮を突っ張らせたまま意気揚々と炭鉱に足を踏み入れると、夕方に肩を落として飛び出して来る姿を何度も目撃した。


「でも、リーダーは冒険者になったんだろ?」


「だから、リーダーと呼ぶな。オレには超速院ちょうそくいん  光星きらぼしと言う名前が有るんだから」


「彫刻刀 梅干しがなんですか?太郎リーダー」


「お前絶対聞こえてるだろ!何でこのタイミングで本名明かすんだよ!」


 太郎はキラキラネームに憧れる冒険者見習いの16歳である。ボサボサ頭は腰まで伸び、服は冒険者らしく革装備でダボダボのズボンに革のブーツ。そして、特徴的なのはヒーローがしそうな赤マントを付けている所である。


「聞こえてませんよ。超特品 切り干しリーダー」


 太郎の言葉に、的確な嫌がらせの出来る肥満気味の男はオーバーオールを着込み、牛でも飼ってそうな雰囲気があった。手にはサンドイッチが握られ、太郎の話半分に聞きながらそれを口に運び続けていた。


「ブートン。お前この間、治癒師に太り過ぎ注意って言われてなかったか?」


「言われてた。だが断る!!!」


 ブートンと呼ばれた青年は断固たる決意。不退転の意思を持ってサンドイッチを口の中に捩じ込むと一気に飲み込んだ。


「仕方ない。ブートン、幼馴染のよしみだ。お前には一番にこのギルド証明書を見せてやろう」


「じゃあ。僕もリーダーにギルド証明書を見せてあげよう」


「って!何でブートンまで持ってんだよ!」


「そりゃ、僕だけギルド証明書持ってないとギルド内の食堂割りが効かないからだよ」


 方や冒険者。方や食堂の割引きの為にギルド証明書を取得するご時世である。ちなみに同じ日にギルド証明書取得の手続きをしたのだが、太郎がオロオロしていた姿をブートンと他一名が隠れて楽しんだのは此処だけの話である。


「そう言えば、ニコのやつも取った筈なんだけど今日また仕事かな」


「え!ニコの奴まで、あの暴力装置がギルド証明書なんか取ったら、この辺りの魔物が皆経験値になっちまう!急いで冒険に行くぞブートン、、、、、、、、あぎゃぁぁぁあー!」


「痛い?痛かった痛いって言って良いのよ。まぁ言えたらだけど」


 太郎は背中からヘッドロックを決められ悶絶する。その様子を見ながらブートンは、太郎にヘッドロックをキメている、翡翠色の衣服にツインテール頭の太郎と同じ背丈の女の子に〝もう良いんじゃない?ニコ〝と言うとようやく太郎は解放された。


「で?誰が暴力装置だって」


「いえ、決してその様な事は御座いません。この超速院ちょうそくいん  光星きらぼしの名に掛けて」


「誰よ!アンタ雷帝永遠院 太郎でしょ」


 太郎自身苗字は気に入っていたが、苗字と名前のバランスがどうしても気に入らない太郎であった。ちなみに、太郎はずっと正座させられニコが、仁王立ちしている構図である。


 三十分程のお叱りを受けた太郎は、この町で唯一のスイーツハウスあんこ屋のパイナップルおはぎ三十個で手を打った。と言うより買わなければ、確実に五時間はこのままの状態である事は間違いなかった。


「で、ギルド証明書見せなさいよ。ちなみに私は職業が武道家だったのよ」


 ニコは幼い頃から大人に混じって仕事をしていた為、身体能力が同級生達に比べ発達していた事で、武道家になったと思われる。


 ギルド証明書の職業欄は、人物に合った適正な物が割り振られる。つまりはギルド証明書を手にするまでは誰にも本人でさえ、どの様な職業が書かれているかは分からないのである。


「僕は料理人。やっぱり家もパン屋だからかなぁ」


 勿論、ただの料理人ではなく冒険者としての料理人である。倒したモンスターをも調理して食してしまう食いしん坊でもある。


「俺はスゲェぜ。何たってこんな職業見た事ないからなボケ担当」


 太郎は自慢げに掲げて来たギルド証明書には、確かにボケ担当と書かれておりステータス部分を見てみると〝的確な場面でボケられる(笑)〝と書かれていた。ギルド証明書にまで小馬鹿にされる太郎である。


「確かに見た事ないわね。いやイラねぇし、交換して貰った方が良いんじゃないの」


「と言うか職業?リーダーの生き様じゃないの?」


 辛口な二人であったが、太郎は気にした感じもなくギルド証明書を仕舞うと二人の肩を叩いて、めちゃくちゃウザったい感じで言ってきた。


「君達の様な普通の職業の者達には解らないかも知れないが、特質系職業の俺にはお前達にはない伸び代が有るのだ!」


 特殊スキル:恥知らずlevel2を獲得した。


「何か変なスキルレベル上がったけど、大丈夫か恥太郎」


「そうだぞ、何か変わった事ないか?恥太郎」


「ふふん、何かムラムラちょっとした」


 流石の特殊スキルであった。そして、このパーティーに今必要なのはツッコミである事が露見した瞬間でもあった。


「で、何で広場に今回は集合なのよ。ブートンの家でいつも集まってるのに。パン食べ放題場所なのに」


「俺もブートン家の食べ放題に後ろ髪引かれない訳ではないが、朝食べて来たからとかそう言う理由では無い」


「何かってに人の家で朝食済ませてんだよ食い逃げリーダー!あとうちは食べ放題じゃないから勝手に売り物食うな二人とも!」


 二人は密かに、ブートン家の事をパン補給場所と呼んでいたりするが、今のブートンにそれは火に油でしかない為、出かかった言葉を飲み込んだ。


「まぁ食べ放題は置いておいて。今回は冒険者への第一歩として、いつも行っている洞窟のさらに奥へと探検しようと思ってる」


「えっ魔物が出る区域に行くって事?何であんな所にわざわざ行くなんて馬鹿じゃないの」


「じゃじゃーん!何とギルドでこんな物を見つけました。コレなら上級冒険者の付き添い無しで始めから行けるクエストだ」


 太郎の手には、ギルドに張り出している依頼書が握られていた。そこにはギルド証明書等級Ⅹから依頼可能と書かれており、つまりは冒険者であれば誰でも受けられるクエストである。


 クエストは等級制でありギルド等級Ⅰ(1)~Ⅹ(10)まであり、数字が小さくなる程受けられるクエストが増える良くある仕様となっている。


 また、新人冒険者は全滅する可能性が高い為、中上級者とパーティーを組んでの依頼がほとんどである。しかし、太郎の持って来た依頼は採取クエストと呼ばれる初心者向けの為、中上級者の付き添いを必要としない物だった。


「って事でさっさと支度して行こうぜ!」


「ごめん、私今からエステに行くの」


「リーダーごめん。僕今から家の手伝いしないと」


「ニコエステ何てこの町にねぇよ!ブートンも店の物食うから親に営業中は店出禁にされてんじゃん」


 そんな事ばかり鋭い太郎だったが、二人はしぶしぶ一度家に戻り再び集まった。しかし、本格的な冒険などした事の無い三人は何となく動きやすい服装に着替えたに留まっていた。


 これが世界のはずれの町で生まれた、ハズレパーティと呼ばれる違った意味で有名となるべくして生まれたチームであった。
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