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13.諸刃
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「僕が守る」なんてよくもまぁ言えたもんだな。
馬鹿だなぁ、これで死人だ、他人を巻き込んだ。
あの時、洞窟の前で引き返していれば、いや、もっと前、キリカと会わなければお互い死ななかったかもしれない。
「まぁもうどうでもいいか」
意識は薄らいでいく……
血液の粘性が体に纏わりつく感覚が気持ち悪いことしか考えられない。
「諦めんな!!」
僕の横目で食われそうなキリカが下に落ちた。
クイーンは誰かの一撃で怯んだようだ。
「ガキンチョ諦めんな!死んだら全部パーだぞ!ルーイとの約束はどうした?守れよ馬鹿野郎!」
あの剣、盾、髪……リョウトさんだ。いや、他にもタクミさん、ヒムラさんだ。約束?そういえばリョウトさんには言ったような「ルーイとの約束、カイナを助けるまで強くなってみせる」みたいなこと言ったような。
「看板読まなかったのか、オトメらしいな。いくら天才でもこれは無茶だよ」
タクミさんは竜槍を構えた。
「オトメ君、コレ」
ヒムラさんは僕にポーションLv.1を使った。
「ありがとうございます……何とか立てます」
HP+20 CP+50
「貴重なポーションをありがとうございます」
「いいから、キリカちゃんだっけ?助けてやりなよ」
「でも……どうやって?」
「皆で協力して、クイーンゴブリンを倒す。でしょ?」
「……皆で?」
「はい、言われたらやる!」
ヒムラさんに一喝されて急いで立ち上がった。
リョウトも言葉を加える。
「そうだぞ、早く手伝え、元々お前の獲物だろ!」
言葉が僕の足に力を与える。
「はい!……助けに来てくれてありがとうございます!」
僕は、キリカを抱きかかえ部屋の端に寝かせた。
「待っててくれ」
キリカHP36 CP27
目が少し赤くなった。剣が軽くなった気がした。
「オトメいいか、こういう敵はヘイトを一人に集中させるんだ」
リョウトさんはスキル「挑発」「イグジストブレイド」を使い、クイーンのヘイトを集めた。視線がリョウトさんに向いている。
「今だ、オトメ、タクミ!」
僕は鬼神剣発動とナイフを投げ、タクミさんはトライボルトを使い、クイーンのHPを30%削った。
タクミさんのスキルは、三連撃の雷属性攻撃。僕とは比べ物にならない威力だ。
「ヒムラ、お前はその子の面倒を見ておいてくれ!」
リョウトさんがヒムラさんへ待機命令を出す、僕は彼にリーダーとしての素質を感じた。
クイーンの攻撃も的確に防ぎ、10%とダメージを受けていない。
「オトメ、これ使えるか?」
戦いの中、タクミさんがカードを僕に渡した。
「これは?」
「使ってみろ」
「おいタクミ、オトメに何渡した!」
「とっておきさ」
僕は早速使ってみた。
スキル「兜割り・天」
「兜割り……」
「タクミ、お前馬鹿か!それは代償が……」
「時短にはこれしかない!死人を出さないためにはこれしか!」
「……わかった」
なんの会話かわからないが、この戦いの決定打になりそうなスキルが手に入った。
「いいかオトメ、俺とリョウトでヤツの動きを止めたらスキルを全力で使え、いいな」
「わかりました」
リョウトさんがヘイトを稼ぎ、タクミさんがトライボルトで追加効果、麻痺状態にした。
「今だ!」
「了解!」
CP-5 MP-50
大きく跳躍し、クイーンの頭上遥か上を飛び、急降下、重力と全身全霊の力で切り落とした。
脳天から地面へ──一気に駆け抜けた。
まるで水でも斬っているようだった。
クイーンゴブリン HP0
「やった……」
クイーンゴブリンの姿は消え、クエストクリアの表示がされた。
「ドロップ品の確認……」
「いや、後だ!」
僕はリョウトさん達にキリカをどうすれば良いか訊いた。
「リョウトさん、僕、どうすれば……」
「まあまあ落ち着け、その前にお前からどうにかしろよな」
急に激痛が僕の右腕を襲ったと思ったら、右腕が消えていた。
「あれ?腕が無い」
ヒムラさんが補足する。
「スキルを全力で使った代償だね。……大丈夫、再生できるから」
ヒムラさんは一旦ためらったように口を止めた。
「再生……?」
リョウトさんが落ち着いて言った。
「ミルザンド地下の『再生湖』ってやつに浸かればいい」
「そうすればキリカは助かるんですね!?」
「たがら急ぐぞ、時間がない」
リョウトさんは急かしている。
洞窟を急いで脱出し、4キロある道をキリカの体調を確認しながら運ぶ。ヒムラさんがいてよかった。時間を忘れる道のりだった。
街に到着すると、リョウトさんが先導し、急いでミルザンド地下に向かった。地下入り口には鎧を身に着けた誰かがいたような気がするが、開拓組三人を見たその人は急いで道を開けた。
たどり着いた再生湖はミル区の地下、湖の広さは上の噴水より遥かに大きく、光る水だけが唯一の照明だった。
場所はミル区噴水のある場所から少し離れた路地裏にある知る人ぞ知る地下通路だった。
主に開拓組、ミルザンドの兵士が使うらしいが一般公開されていない。
他にも入り口があるらしいが……
僕とキリカは煌めく水に浸かった。
湖というには浅い、半身浴になってしまう。
一体どこから湧き出ているのか。
隣で再生していく自分の腕を無視して、キリカの容態を見ていた。
貫かれた傷口が文字のようなものを纏、縮んで消えていった。
ヒムラさんの薬学、魔術が無ければここまで運んでくるのは無理だっただろう。
「……ん……ここは?クイーンゴブリンは?」
「キリカ……キリカ!よかった目が覚めた……」
僕は安心しすぎて涙が少しでた。
「オトメ、今回は何とか俺らが駆けつけたからいいが、もうあんなことするな、いいな」
黙って頷いた。
ごめんリョウトさん約束できない。僕はまだやらないといけないことがあるんだ。
「ドロップ品の確認」
・イノセント(片手剣):白、悪魔特攻
・ルーンナイフ×12
・お金 12万円
馬鹿だなぁ、これで死人だ、他人を巻き込んだ。
あの時、洞窟の前で引き返していれば、いや、もっと前、キリカと会わなければお互い死ななかったかもしれない。
「まぁもうどうでもいいか」
意識は薄らいでいく……
血液の粘性が体に纏わりつく感覚が気持ち悪いことしか考えられない。
「諦めんな!!」
僕の横目で食われそうなキリカが下に落ちた。
クイーンは誰かの一撃で怯んだようだ。
「ガキンチョ諦めんな!死んだら全部パーだぞ!ルーイとの約束はどうした?守れよ馬鹿野郎!」
あの剣、盾、髪……リョウトさんだ。いや、他にもタクミさん、ヒムラさんだ。約束?そういえばリョウトさんには言ったような「ルーイとの約束、カイナを助けるまで強くなってみせる」みたいなこと言ったような。
「看板読まなかったのか、オトメらしいな。いくら天才でもこれは無茶だよ」
タクミさんは竜槍を構えた。
「オトメ君、コレ」
ヒムラさんは僕にポーションLv.1を使った。
「ありがとうございます……何とか立てます」
HP+20 CP+50
「貴重なポーションをありがとうございます」
「いいから、キリカちゃんだっけ?助けてやりなよ」
「でも……どうやって?」
「皆で協力して、クイーンゴブリンを倒す。でしょ?」
「……皆で?」
「はい、言われたらやる!」
ヒムラさんに一喝されて急いで立ち上がった。
リョウトも言葉を加える。
「そうだぞ、早く手伝え、元々お前の獲物だろ!」
言葉が僕の足に力を与える。
「はい!……助けに来てくれてありがとうございます!」
僕は、キリカを抱きかかえ部屋の端に寝かせた。
「待っててくれ」
キリカHP36 CP27
目が少し赤くなった。剣が軽くなった気がした。
「オトメいいか、こういう敵はヘイトを一人に集中させるんだ」
リョウトさんはスキル「挑発」「イグジストブレイド」を使い、クイーンのヘイトを集めた。視線がリョウトさんに向いている。
「今だ、オトメ、タクミ!」
僕は鬼神剣発動とナイフを投げ、タクミさんはトライボルトを使い、クイーンのHPを30%削った。
タクミさんのスキルは、三連撃の雷属性攻撃。僕とは比べ物にならない威力だ。
「ヒムラ、お前はその子の面倒を見ておいてくれ!」
リョウトさんがヒムラさんへ待機命令を出す、僕は彼にリーダーとしての素質を感じた。
クイーンの攻撃も的確に防ぎ、10%とダメージを受けていない。
「オトメ、これ使えるか?」
戦いの中、タクミさんがカードを僕に渡した。
「これは?」
「使ってみろ」
「おいタクミ、オトメに何渡した!」
「とっておきさ」
僕は早速使ってみた。
スキル「兜割り・天」
「兜割り……」
「タクミ、お前馬鹿か!それは代償が……」
「時短にはこれしかない!死人を出さないためにはこれしか!」
「……わかった」
なんの会話かわからないが、この戦いの決定打になりそうなスキルが手に入った。
「いいかオトメ、俺とリョウトでヤツの動きを止めたらスキルを全力で使え、いいな」
「わかりました」
リョウトさんがヘイトを稼ぎ、タクミさんがトライボルトで追加効果、麻痺状態にした。
「今だ!」
「了解!」
CP-5 MP-50
大きく跳躍し、クイーンの頭上遥か上を飛び、急降下、重力と全身全霊の力で切り落とした。
脳天から地面へ──一気に駆け抜けた。
まるで水でも斬っているようだった。
クイーンゴブリン HP0
「やった……」
クイーンゴブリンの姿は消え、クエストクリアの表示がされた。
「ドロップ品の確認……」
「いや、後だ!」
僕はリョウトさん達にキリカをどうすれば良いか訊いた。
「リョウトさん、僕、どうすれば……」
「まあまあ落ち着け、その前にお前からどうにかしろよな」
急に激痛が僕の右腕を襲ったと思ったら、右腕が消えていた。
「あれ?腕が無い」
ヒムラさんが補足する。
「スキルを全力で使った代償だね。……大丈夫、再生できるから」
ヒムラさんは一旦ためらったように口を止めた。
「再生……?」
リョウトさんが落ち着いて言った。
「ミルザンド地下の『再生湖』ってやつに浸かればいい」
「そうすればキリカは助かるんですね!?」
「たがら急ぐぞ、時間がない」
リョウトさんは急かしている。
洞窟を急いで脱出し、4キロある道をキリカの体調を確認しながら運ぶ。ヒムラさんがいてよかった。時間を忘れる道のりだった。
街に到着すると、リョウトさんが先導し、急いでミルザンド地下に向かった。地下入り口には鎧を身に着けた誰かがいたような気がするが、開拓組三人を見たその人は急いで道を開けた。
たどり着いた再生湖はミル区の地下、湖の広さは上の噴水より遥かに大きく、光る水だけが唯一の照明だった。
場所はミル区噴水のある場所から少し離れた路地裏にある知る人ぞ知る地下通路だった。
主に開拓組、ミルザンドの兵士が使うらしいが一般公開されていない。
他にも入り口があるらしいが……
僕とキリカは煌めく水に浸かった。
湖というには浅い、半身浴になってしまう。
一体どこから湧き出ているのか。
隣で再生していく自分の腕を無視して、キリカの容態を見ていた。
貫かれた傷口が文字のようなものを纏、縮んで消えていった。
ヒムラさんの薬学、魔術が無ければここまで運んでくるのは無理だっただろう。
「……ん……ここは?クイーンゴブリンは?」
「キリカ……キリカ!よかった目が覚めた……」
僕は安心しすぎて涙が少しでた。
「オトメ、今回は何とか俺らが駆けつけたからいいが、もうあんなことするな、いいな」
黙って頷いた。
ごめんリョウトさん約束できない。僕はまだやらないといけないことがあるんだ。
「ドロップ品の確認」
・イノセント(片手剣):白、悪魔特攻
・ルーンナイフ×12
・お金 12万円
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