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7.自己防衛を学ぶ(実践)
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あのメールから四日が経った。リョウトさん達はダンジョン攻略を無事に完了。
そろそろカイナも外に出てもいいだろうか。いいかげんルーイとかいう男もいないだろう。
「そろそろ起きてください、オトメ」
ギルドの寮、ベットの上でまだ横になっていた。
「いやいや、目は覚めてるんだ」
「ルーイのことが気になっているんですか?」
「いや(そうなんだけど)、PEの名前を考えていた。それで、キョウスケはどうかなと。使ってない僕のもう片方の名前なんだ」
「……了解、命名ありがとうございます」
「名前をつけるって恥ずかしいな」
僕はゆっくり立ち上がり、ギルド制服に着替え、寮から出ていった。
「おはようございますオトメさん」
「おはようカイナ」
カイナは朝からカウンターとテーブルを拭いていた。
「あのオトメさん、お願いがあるんです」
「ん?何なに」
1時間後。
「この中から好きなのを選んで」
ここは「アッパーグラス」涼しそうな木の下で、何種類かの武器を広げているところだ。
「えっと、実際見ると重量感がありますね」
「カイナさ、敬語つかわなくてもいいんだよ別にタメで。多分歳変わらないよ僕たち」
謎の距離感をここで排除しておきたかった。このメモリーに来た時期もたいして変わらないんだ。もっとラフに会話していきたい。
「じゃあ……オトメ君って呼びます。あっいや……オトメ君って呼ぶよ」
「まぁいいか(ぎこちない)……っとそれで、何がピンとくる?」
カイナは、金属がぶつかり合う音を鳴らしながら、色々と手に持ってみる。
「これは重い、大剣ですかね。それと、これはナイフ?」
一応持ってきた物を確認する。
大剣「ビッグブレード」
両手剣(長剣類)「ロングソード」
片手剣「アイアンソード」
細剣「レイピア」
ナイフ「スモールナイフ」
槍「ロングスピア」
名前が簡素なのは、量産型だかららしい。基本素材は鉄、あとは鍛冶師によって攻撃力に個体差が生じる。
正直、大剣を持ってきたのはバカだった。
カイナに持てるはずがない。
この世界にはもっと多くの種類の武器が存在しているのに、持ってこれたのが剣ばかりだったのは申し訳なかった。
もっとこう、メイスとか、棍棒とか、トンファー、モーニングスター……
「私、これにします」
カイナが選んだのはロングスピアだった。
「結構早かったな。しかも重めの槍とはね」
僕の中では、カイナが小柄なため、細剣やナイフ、重くても片手剣を選ぶと思っていた。しかし、よりによって最強クラスのDPSを誇る槍か。
「それでいいんだな」
「はい、なんか強そうですし、身を守るには最適と思います!」
これは同じ槍使いのタクミさんが喜ぶやつだ。
「よし、じゃあ始めるか」
「はい!っとその前に、この武器はどこから集めてきたんですか?」
「ギルド行きつけの『タナカ武具店』で貸してもらった。選んだものはプレゼントってことで心配しなくていいよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
さて、ここに至る経緯は、カイナが戦闘を学びたいと言ったから。
自分で身を守る術を付けたいと、そう言っていた。
僕的にも感心したよ、本当に。
僕じゃ自らやろうなんて絶対思わなかったのに。だってねぇ、めちゃくちゃ怖いからね。今は少し慣れたけど!
「オトメ君……オトメ君!」
「ん?」
「ぼーっとしすぎですね」
カイナは大切そうに槍をしっかりと両腕で抱きかかえている。
「おっと考えて事をしていたのだよ」
「それで、何から教えてくれるんですか?」
「アレ、見て」
僕は小さなキャンプを指さす。
カイナがその方向を見つめると、目標が理解できたみたいだ。
「ご、ゴブリンですか!?私一人で出来ますかね……」
「おいおい、僕も一緒だ。もしもの時はどうにかするから安心して。しかも、今回はおひとり様みたいだ」
キャンプには一匹のゴブリン、楽勝だろう。
この世界に来てから、僕は何度もコイツらとやり合ってきた。身体能力も上がっただろうし、キョウスケの言うレベルとかいうものも上がっただろう。
何よりも経験だ。やった分だけ、実践が大切だと思う。
「よし、行きます!」
「了解!」
正直、これが僕にとっての初パーティだった。
視界の左上、僕の名前の下に『カイナ』とステータスが表示されている。
二人でキャンプに突っ込むと、ゴブリンが気づき、カイナにヘイトが向いた。
「やばい、馬鹿野郎こっち向け!」
初戦闘のカイナに攻撃が当たるのはマズイ。
「はぁ!」
カイナは迷い無くゴブリンに一撃を入れた。一旦は怯んだゴブリンだが、すぐに体勢を立て直し剣を振り上げる。
「オトメ君、やったよ!」
「カイナ、よく見ろ、まだ動いてるだろ!」
ギリギリ攻撃に間に合い、ゴブリンの攻撃を防ぎ、剣を弾いた。
「流血にビビんないことは褒めれるけど、油断はダメ絶対、いい?」
「は、はい……」
「……よし、切り替えて次いくよ」
役割的には、僕がゴブリンを引きつけ、カイナが攻撃という感じだった。彼女の戦闘センスはなかなかのもので、一撃は重いし速いしで、あっという間に連携が上手くなった。
最後の一撃、カイナの突き刺しからの払いでゴブリンの首が飛んだ。
HP0
「終わりましたね」
「お疲れさん、色々成果と反省点がある。よく頑張ったね」
「オトメ君……って結構強いんだね」
詰まってから頑張って声を出してた。
「お褒めありがとうございます。それにしても、初戦にしては手慣れていたよね。まぁ悪いことではないけど」
「もちろん命を奪うことに抵抗が無いわけではないですよ。怖いですし、緊張します。でもそれって当たり前で当然じゃないですか?」
「それも……そうだな」
当然、そういう考えもあるのだと僕は先輩ながら学んだ。カイナは潜在的にどう動けばいいかが分かっているのだろう。体のこなし方が武人みたいだった。
その後、すこし二人で談笑していた。
「あぁそうだ、ドロップ品はしっかり確認してね」
「はい……オトメ君これはなんです?」
カードの様なものだ。スキャンすると、スキルカードだと判明した。
僕のアイテムは全てキョウスケが管理しているし、「ストレージ」と呼ばれるところに保存されるから実際手に取ったことはほとんどない。
どうやら他の人も同じく「ストレージ」を使う人もいるらしいが、それはスキルとして存在するらしい。
「どれどれ……『サイクロンスラスト』だってさ……カッコイイ!」
「どんなものなんですか?」
「使うと、このスキルが使えるようになるんだ。まさにレアアイテム。でもなんでゴブリンなんかが?」
「……私がそのゴブリンに渡したものだ」
一気に体が警戒準備状態になる。
「スキャン開始、ルーイ」
僕らの前に現れたのは、ルーイだった。右手が背中の剣に伸びている。
「何故……ここにいる?」
「連れ戻しに来た!」
今度は容赦なく切りかかってきた。
そろそろカイナも外に出てもいいだろうか。いいかげんルーイとかいう男もいないだろう。
「そろそろ起きてください、オトメ」
ギルドの寮、ベットの上でまだ横になっていた。
「いやいや、目は覚めてるんだ」
「ルーイのことが気になっているんですか?」
「いや(そうなんだけど)、PEの名前を考えていた。それで、キョウスケはどうかなと。使ってない僕のもう片方の名前なんだ」
「……了解、命名ありがとうございます」
「名前をつけるって恥ずかしいな」
僕はゆっくり立ち上がり、ギルド制服に着替え、寮から出ていった。
「おはようございますオトメさん」
「おはようカイナ」
カイナは朝からカウンターとテーブルを拭いていた。
「あのオトメさん、お願いがあるんです」
「ん?何なに」
1時間後。
「この中から好きなのを選んで」
ここは「アッパーグラス」涼しそうな木の下で、何種類かの武器を広げているところだ。
「えっと、実際見ると重量感がありますね」
「カイナさ、敬語つかわなくてもいいんだよ別にタメで。多分歳変わらないよ僕たち」
謎の距離感をここで排除しておきたかった。このメモリーに来た時期もたいして変わらないんだ。もっとラフに会話していきたい。
「じゃあ……オトメ君って呼びます。あっいや……オトメ君って呼ぶよ」
「まぁいいか(ぎこちない)……っとそれで、何がピンとくる?」
カイナは、金属がぶつかり合う音を鳴らしながら、色々と手に持ってみる。
「これは重い、大剣ですかね。それと、これはナイフ?」
一応持ってきた物を確認する。
大剣「ビッグブレード」
両手剣(長剣類)「ロングソード」
片手剣「アイアンソード」
細剣「レイピア」
ナイフ「スモールナイフ」
槍「ロングスピア」
名前が簡素なのは、量産型だかららしい。基本素材は鉄、あとは鍛冶師によって攻撃力に個体差が生じる。
正直、大剣を持ってきたのはバカだった。
カイナに持てるはずがない。
この世界にはもっと多くの種類の武器が存在しているのに、持ってこれたのが剣ばかりだったのは申し訳なかった。
もっとこう、メイスとか、棍棒とか、トンファー、モーニングスター……
「私、これにします」
カイナが選んだのはロングスピアだった。
「結構早かったな。しかも重めの槍とはね」
僕の中では、カイナが小柄なため、細剣やナイフ、重くても片手剣を選ぶと思っていた。しかし、よりによって最強クラスのDPSを誇る槍か。
「それでいいんだな」
「はい、なんか強そうですし、身を守るには最適と思います!」
これは同じ槍使いのタクミさんが喜ぶやつだ。
「よし、じゃあ始めるか」
「はい!っとその前に、この武器はどこから集めてきたんですか?」
「ギルド行きつけの『タナカ武具店』で貸してもらった。選んだものはプレゼントってことで心配しなくていいよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
さて、ここに至る経緯は、カイナが戦闘を学びたいと言ったから。
自分で身を守る術を付けたいと、そう言っていた。
僕的にも感心したよ、本当に。
僕じゃ自らやろうなんて絶対思わなかったのに。だってねぇ、めちゃくちゃ怖いからね。今は少し慣れたけど!
「オトメ君……オトメ君!」
「ん?」
「ぼーっとしすぎですね」
カイナは大切そうに槍をしっかりと両腕で抱きかかえている。
「おっと考えて事をしていたのだよ」
「それで、何から教えてくれるんですか?」
「アレ、見て」
僕は小さなキャンプを指さす。
カイナがその方向を見つめると、目標が理解できたみたいだ。
「ご、ゴブリンですか!?私一人で出来ますかね……」
「おいおい、僕も一緒だ。もしもの時はどうにかするから安心して。しかも、今回はおひとり様みたいだ」
キャンプには一匹のゴブリン、楽勝だろう。
この世界に来てから、僕は何度もコイツらとやり合ってきた。身体能力も上がっただろうし、キョウスケの言うレベルとかいうものも上がっただろう。
何よりも経験だ。やった分だけ、実践が大切だと思う。
「よし、行きます!」
「了解!」
正直、これが僕にとっての初パーティだった。
視界の左上、僕の名前の下に『カイナ』とステータスが表示されている。
二人でキャンプに突っ込むと、ゴブリンが気づき、カイナにヘイトが向いた。
「やばい、馬鹿野郎こっち向け!」
初戦闘のカイナに攻撃が当たるのはマズイ。
「はぁ!」
カイナは迷い無くゴブリンに一撃を入れた。一旦は怯んだゴブリンだが、すぐに体勢を立て直し剣を振り上げる。
「オトメ君、やったよ!」
「カイナ、よく見ろ、まだ動いてるだろ!」
ギリギリ攻撃に間に合い、ゴブリンの攻撃を防ぎ、剣を弾いた。
「流血にビビんないことは褒めれるけど、油断はダメ絶対、いい?」
「は、はい……」
「……よし、切り替えて次いくよ」
役割的には、僕がゴブリンを引きつけ、カイナが攻撃という感じだった。彼女の戦闘センスはなかなかのもので、一撃は重いし速いしで、あっという間に連携が上手くなった。
最後の一撃、カイナの突き刺しからの払いでゴブリンの首が飛んだ。
HP0
「終わりましたね」
「お疲れさん、色々成果と反省点がある。よく頑張ったね」
「オトメ君……って結構強いんだね」
詰まってから頑張って声を出してた。
「お褒めありがとうございます。それにしても、初戦にしては手慣れていたよね。まぁ悪いことではないけど」
「もちろん命を奪うことに抵抗が無いわけではないですよ。怖いですし、緊張します。でもそれって当たり前で当然じゃないですか?」
「それも……そうだな」
当然、そういう考えもあるのだと僕は先輩ながら学んだ。カイナは潜在的にどう動けばいいかが分かっているのだろう。体のこなし方が武人みたいだった。
その後、すこし二人で談笑していた。
「あぁそうだ、ドロップ品はしっかり確認してね」
「はい……オトメ君これはなんです?」
カードの様なものだ。スキャンすると、スキルカードだと判明した。
僕のアイテムは全てキョウスケが管理しているし、「ストレージ」と呼ばれるところに保存されるから実際手に取ったことはほとんどない。
どうやら他の人も同じく「ストレージ」を使う人もいるらしいが、それはスキルとして存在するらしい。
「どれどれ……『サイクロンスラスト』だってさ……カッコイイ!」
「どんなものなんですか?」
「使うと、このスキルが使えるようになるんだ。まさにレアアイテム。でもなんでゴブリンなんかが?」
「……私がそのゴブリンに渡したものだ」
一気に体が警戒準備状態になる。
「スキャン開始、ルーイ」
僕らの前に現れたのは、ルーイだった。右手が背中の剣に伸びている。
「何故……ここにいる?」
「連れ戻しに来た!」
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