仮想世界β!!

音音てすぃ

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6.ルーイ

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「返してもらうって……もしかしてカイナのこと?」

 ルーイは今にも僕に攻撃しそうだ。抜剣する未来が見える。

「カイナ?その御方はレン姫だ。姫が何を考えているのか知らないが、連れて帰る」

 レン姫?知り合いだろうか、でもPEが「記憶喪失」ってはっきり言ってたしなぁ。

「あんた、ルーイっていうのか?」
「お前……何故名前を知っている!どこかで会ったか?」
「なぁカイナ、あのお兄さん知ってる?」

 ようやくカイナは噴水から目を離し、ルーイを見てくれた。

「……あ、本当にレン姫だ」

 ルーイは片膝立ちになった。忠義を感じる、カイナは本当にお姫様?
 しかし、カイナは首を傾げた。

「すいませんオトメさん、記憶に……ありません」
「そっか……だってよルーイさん。カイナはカイナだ。レン姫なんかじゃないよ」
「何故だ……何故だ姫!共に帰ろう……!」
「悪いな、カイナが怖がる帰ってくれ」
「あぁマジかよ……こんなことって……」

 ルーイは両手で顔を隠していた。
 知らないものは知らない。

ーーーーーー

「あれ?カイナさん、オトメさん、元気ないですね」

 周囲の視線にカイナが怖がっていたから、早急に帰ってきた。

「ああ、色々あって」
「今マスターにコーヒー淹れるので、二人もどうですか?」
「それじゃあいただくよ。カイナはどうする?」
「……ミルクと砂糖があれば飲みます」

 あまあまなのね、可愛い。

「もちろんありますよ、少し待っていてくださいね」

 実は、アカネちゃんのコーヒーはこの世で一番美味しいと感じる。あのカフェで働いてはくれないだろうか。そうすれば、毎日飲めるのだが……

「オトメさん、いつも忙しくて、コーヒー淹れてあげられなくてごめんなさいね」
「気にしないで、たまに飲むからいいんだよ」

 本当に苦味と酸味のバランスがよくて、旨みがあるんだ。
 まぁこういうのは個人の好みだが。

「はいお待たせ」

 フワッと散る香りが鼻から脳と耳と眼球に突き抜ける感覚を楽しみながら一口。

「うめぇ」
「美味しいです……」
「ありがとうございます。それじゃあマスターの所へ届けに行きますので」

 そうして、アカネちゃんはコーヒーをカップ2つに入れ、行ってしまった。きっと二人で話すことでもあるのだろう。

 僕とカイナは二人になった。

「カイナ、あのお兄さんは君を知っているみたいなんだけど……」
「そうみたいですね。でも初対面です。見覚えすらありません」
「だよな、この世の中なら、似た人なんていくらでもいそうだもんな」

 でも、「カイナ レン」という名前と、「レン姫」たまたま名前が一致しているだけなのか?偶然には不自然すぎる。

「……カイナはさ、姫様とかなりたい?」
「え……そうですね、なってもいいかもしれませんね。でも、私には似合いませんよ、きっと」
「(そんなことなさそうだけどなぁ)そ、そうか」

 不可解すぎる出来事、ルーイの発言。ルーイが頭のおかしい奴と考えて、カイナとレン姫さんは似たもの同士とすれば、辻褄を無理やり合わせることはできる。

「しばらくは警戒しないとな……」

ーーールーイーーー

「申し訳ございません」

 ルーイが僕達の前に現れた後、路地裏での会話。

「ルーイ君、君には見つけ次第報告……と言ったはずだが?」
「感情的になってしまいました」
「そうだなー、君は捜索隊からは外れてもらうことにするよ」
「っ!ツルバ様、何故です!」

「捜索に邪魔だと判断したのだよ。いくら君が姫様の護衛隊隊長だとしても、身勝手な行動は困る、慎みたまえよ」

 白髪の初老は静かに笑い声をあげた。

「クソッ!」

「(君は姫のことに関しては熱心な男だ。私がいくら君を突き放しても、君は勝手に行動に出るだろう。ククク、楽しみだ)それでは偵察再開だ。ルーイ君、発見だけは感謝するよ」


ーーーーーー


「メール1件を受諾しました」

 PEから連絡だ。

「メール?」

 コーヒーを飲み終わった。
 視界右上のUIにメールアイコンがある。「見て!」と言わんばかりに赤く光っていた。
 空中のそれをタッチすると、半透明パネルに変形、メール受信箱と表示されている。

「カイナ、見える?」
「何がです?……あぁ……なんですかその光ってる物」
「何に見えてる?」
「板……何にも書いてない」
「うん、だよね」

 おそらく中身は僕にしか見えてない。

「オトメさんそれ凄いですね。どこから出したんです?」
「あえ!?……あー、内緒!みんなには言わないでね?」
「わ、わかりました」

 もう一度受信箱を見る。
 一件(なんか寂しいなぁ……)。


「無題、送信元……不明?」

 少し怖かったが、透明パネルをタッチして開いてみる。

『ここに死はない』

「死はない?どういう意味だろ?」

 誰が送ってきたのかわからないメール、気持ちの悪い内容、凝視されているような恐怖を覚えた。

「メールを消去します」
「え、ちょっとPE!」

 ピチュンという効果音とともに「メールは消去されました」というメッセージが表示された。
 背中が冷たくなる不思議な感覚に陥った。
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