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4.カイナ
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あれから二週間ほど経った。街周辺の危機の排除、お使いなど、色々慣れてきた。
最近は、ギルド近くのカフェで、朝コーヒーを飲むのが好きだ。いやーギルドの寮はすごしやすいし、生活に安定感が出てきたな。
「心の余裕が感じられます、良い心がけです」
「ありがとうPE。そういえば、今日の仕事はなんだっけ?」
「今日はアカネと案内役の仕事です。後二十分後にギルド集合となっています。それと、愛称は考えてくれましたか?」
「あー、まだだわ。なかなか思いつかなくてね」
案内役の仕事は毎日ある。
毎日のように記憶喪失者がフラフラと何処からか現れる。
彼らを捌き続けるアカネちゃんは凄いと思う。
僕はコーヒーの残りを飲み、カフェを後にした。
ギルドへ向かっていると、道で立ち尽くしている女の人を見つけた。
周りの人は目的を持って動いているように見えるのに対して、ただぼけーっと立っているので、余計目立つ。目を見れば大体わかる。
「ねぇPE、もしかして、あの人記憶ないのかな」
「スキャンしてみましょうか」
「頼む」
『カイナ レン』Green
・記憶喪失
・相対レベル -20
・装備 コート
「マジモンの記憶喪失じゃん、助けないと」
僕は人混みをかき分けていく。
「あの、お困りですか?てか、ですよね?」
「……」
近くに来ると、特徴がよく分かる。
綺麗な蒼い瞳、モデルさんのような整った顔とスタイル、髪は高貴な雰囲気の長い金髪である。良かった、僕と同じくらいの身長だ。きっと貴族の方だろう。
「自分が誰だか分かんないでしょ?」
「……はい、わかりません」
声は色気すら感じる耳触りのいい声だ。おっと危ない。
「ここ、どこかわかる?」
「……いいえ」
「行くとこ無いんでしょ?ついて来てよ」
「え?」
僕は彼女の腕を掴み、ギルドへ向かった。
「オトメ、カイナのメンタルバランスが崩れています」
「今はいち早く連れていくべきだ。黙ってろ」
「……わかりました」
ギルドに着くと、アカネが僕を待っていた。
「オトメさん、来ましたね。それでは今から案内役の基礎をお伝え……って誰です?隣」
「推奨行動、名前は明かさない」
確かにむやみに人の名前を喋る必要はない。
「街で拾ってきた、僕と同じ記憶喪失だ」
「あらら、これでは私が教えること何にもありませんね。うわーめっちゃ美人……」
「ギルドマスターに会わせればいいんだよな?」
「そうです」
僕は彼女と目を合わせる。
「よし、行こうか」
「はい。あの、えーっと、ここがギルドというのもですか?」
言葉が少しおかしいが、数週間前の僕もこんなだっただろう。
「そうだよ、君とかみたいな人が来る場所だ。現状理解はゆっくりでいいから、とりあえず僕の言う事にしたがって」
彼女は黙って頷いた。
「マスター、記憶喪失者、連れてきました!」
「おやおや、初案内成功だねオトメ君。さぁて話を聞こうか」
マスターは彼女と話を始めた。僕の時と同じように。
それは五分程度で済んだ。
「ふむ……名前は覚えていないのか……そうだオトメ君、彼女の名前を考えてやってくれないか」
「え?僕がですか?」
「たまにいるのだよ、名前が無い人がね。そういう時は、皆で決めたものだよ。アカネちゃんは私が決めてあげたのだ」
そんなことがあったなんて知らなかった。
「僕にネームセンスは無いし……」
そうだ、スキャンした時の名前を使おう。
「カイナなんて、どうでしょう」
すると、マスターは少し驚いた表情をしてから「あ、あぁ素晴らしい名前だな」と言った。
「それじゃあオトメ君がカイナ君の面倒を見てもらうことにしようかな」
「ええ!僕ですか?僕の時もそれくらい手厚くサポートしてもらいたかったですよ」
「ふふ、そうだね。しかし、その子はどうやらワケありみたいだ。君が面倒を見てくれ」
マスターの顔が少し不気味だった。
「ワケあり?何でしょうそれは」
「ハハハ、ただの勘だよ」
そんな訳で、カイナの面倒を見ることになった。
最近は、ギルド近くのカフェで、朝コーヒーを飲むのが好きだ。いやーギルドの寮はすごしやすいし、生活に安定感が出てきたな。
「心の余裕が感じられます、良い心がけです」
「ありがとうPE。そういえば、今日の仕事はなんだっけ?」
「今日はアカネと案内役の仕事です。後二十分後にギルド集合となっています。それと、愛称は考えてくれましたか?」
「あー、まだだわ。なかなか思いつかなくてね」
案内役の仕事は毎日ある。
毎日のように記憶喪失者がフラフラと何処からか現れる。
彼らを捌き続けるアカネちゃんは凄いと思う。
僕はコーヒーの残りを飲み、カフェを後にした。
ギルドへ向かっていると、道で立ち尽くしている女の人を見つけた。
周りの人は目的を持って動いているように見えるのに対して、ただぼけーっと立っているので、余計目立つ。目を見れば大体わかる。
「ねぇPE、もしかして、あの人記憶ないのかな」
「スキャンしてみましょうか」
「頼む」
『カイナ レン』Green
・記憶喪失
・相対レベル -20
・装備 コート
「マジモンの記憶喪失じゃん、助けないと」
僕は人混みをかき分けていく。
「あの、お困りですか?てか、ですよね?」
「……」
近くに来ると、特徴がよく分かる。
綺麗な蒼い瞳、モデルさんのような整った顔とスタイル、髪は高貴な雰囲気の長い金髪である。良かった、僕と同じくらいの身長だ。きっと貴族の方だろう。
「自分が誰だか分かんないでしょ?」
「……はい、わかりません」
声は色気すら感じる耳触りのいい声だ。おっと危ない。
「ここ、どこかわかる?」
「……いいえ」
「行くとこ無いんでしょ?ついて来てよ」
「え?」
僕は彼女の腕を掴み、ギルドへ向かった。
「オトメ、カイナのメンタルバランスが崩れています」
「今はいち早く連れていくべきだ。黙ってろ」
「……わかりました」
ギルドに着くと、アカネが僕を待っていた。
「オトメさん、来ましたね。それでは今から案内役の基礎をお伝え……って誰です?隣」
「推奨行動、名前は明かさない」
確かにむやみに人の名前を喋る必要はない。
「街で拾ってきた、僕と同じ記憶喪失だ」
「あらら、これでは私が教えること何にもありませんね。うわーめっちゃ美人……」
「ギルドマスターに会わせればいいんだよな?」
「そうです」
僕は彼女と目を合わせる。
「よし、行こうか」
「はい。あの、えーっと、ここがギルドというのもですか?」
言葉が少しおかしいが、数週間前の僕もこんなだっただろう。
「そうだよ、君とかみたいな人が来る場所だ。現状理解はゆっくりでいいから、とりあえず僕の言う事にしたがって」
彼女は黙って頷いた。
「マスター、記憶喪失者、連れてきました!」
「おやおや、初案内成功だねオトメ君。さぁて話を聞こうか」
マスターは彼女と話を始めた。僕の時と同じように。
それは五分程度で済んだ。
「ふむ……名前は覚えていないのか……そうだオトメ君、彼女の名前を考えてやってくれないか」
「え?僕がですか?」
「たまにいるのだよ、名前が無い人がね。そういう時は、皆で決めたものだよ。アカネちゃんは私が決めてあげたのだ」
そんなことがあったなんて知らなかった。
「僕にネームセンスは無いし……」
そうだ、スキャンした時の名前を使おう。
「カイナなんて、どうでしょう」
すると、マスターは少し驚いた表情をしてから「あ、あぁ素晴らしい名前だな」と言った。
「それじゃあオトメ君がカイナ君の面倒を見てもらうことにしようかな」
「ええ!僕ですか?僕の時もそれくらい手厚くサポートしてもらいたかったですよ」
「ふふ、そうだね。しかし、その子はどうやらワケありみたいだ。君が面倒を見てくれ」
マスターの顔が少し不気味だった。
「ワケあり?何でしょうそれは」
「ハハハ、ただの勘だよ」
そんな訳で、カイナの面倒を見ることになった。
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