仮想世界β!!

音音てすぃ

文字の大きさ
上 下
8 / 121

3.ゴブリンスラッシュ

しおりを挟む
 続いてイノシシであるが、作戦が必要だ。牛かと見間違うぐらいの大きさだ。ウリボーとはわけが違うのだ。

「これを殺すのか……無理なんじゃ……」

 少し離れた草むらからイノシシを眺めている。

「スキャン開始」

『イノシシ(魔性狂暴)』Enemy
・相対レベル 14
・攻撃力 致命的一撃

「んー、若干強いな」

 というか、レベル14差は戦うべき相手ではない気がするのだが。

「推奨行動、スキル使用によるダメージ」

 今のところ、ゴブリンスラッシュはMP(魔力)を20%使用する。ある程度は、威力と使用MPを自由に変化させることは可能らしいが、まだヒヨッコの僕には関係の無い話だ。

「また、あのイノシシは目があまりよくありません。急なターンを行うとダウンが取れます」
「お!これはいい情報だ!」

 しかし、そうこうしているうちに、イノシシは歩き出した。
 逃げられる。

「ヤバイ、速く仕掛けないとっ!」

 僕は草むらから飛び出し、イノシシを追いかける。
 これがまた速い。普通に歩いても結構速い。

「クソッ追いつけない……そうだ!」

 僕は何を血迷ったのか、剣をイノシシに向かって放り投げた。すると、直線的に飛んでいき、イノシシのお尻に突き刺さった。

「これはやってしまったかもしれない……」

 怒り狂ったイノシシは、僕の方へ全力疾走してくる。

「良く……見るんだ、僕……!」

 それをギリギリで避けると、イノシシは大勢を崩して倒れ込んだ。

「スキャン開始」

 すると、CPが若干減っていた。
 今がチャンスだと思い、剣を何とか抜き、ダウンが終わる前にスキルを発動した。

「ゴブリンスラッシュ!」

 剣から緑色の光が漏れ、強烈な三連撃を放った。
 飛び散る血、手に響く感覚、最高だった。
 なんと、HPを70%削ることに成功。HPゲージはイエローだ。
 更にCPが0、さらにダウンを奪い、追い打ちをかけた。

「HPゲージ破壊完了、剥ぎ取り、ドロップ確認」

 どうやら、クレイジーイノシシの肉、牙、皮を手に入れた。こんなにもスキルが強力だとは……

「任務完了か、ちょっと疲れたな」

 近くの木の影で休むことにした。

それにしても、広い草原だ。所々木が生えていて、まぁ自然豊かといえばそうだが、ここから西の「グルール自然地帯」のほうが緑が濃いと聞いた。行ってみたい。

「飛行生物が接近……スキャンの結果、マスターの物であると推測されます」

 上を飛行する何か、それは鳥のようで見慣れない何か。

「来た」

 それは上から降りてくるみたいだ。
 地面すれすれで停止し、僕に近づいてくる。

「子供の竜?」
「御名答、この青い竜は『蒼炎龍』の子供です。まだ二歳程でしょうか」

 青い全身、翼飛竜というやつかなぁ。
 全長50センチ程の小さな竜は、背中に手紙を持っているらしい。

「え、くれるのか?……どれどれ……マスターからか」

 怖がりながら竜の頭をナデナデしながら手紙を読む。

「オトメ君、どうだい、サクサク進んでいるかな?そろそろ終わったところだろうと思ったんだけれど、どうかな?任務完了したら一度戻ってきなさい。あぁ、林檎は忘れないでくれよ」
「林檎?あのキャンプにあったやつか」

 視界のメニュー覧の『ストレージ』を押して、林檎を確認する。
 どうやら荷物はここに表示される、手に持つと、アイテムは消え、ここに入る。
 何故か、このシステムに違和感をもった。
 不自然……じゃないか?

「んじゃ戻ろうかな」




ギルドに戻ると、食堂にアカネちゃん、リョウトさん、ギルドマスター、たまに見るリョウトさんのパーティメンバーの人達がいた。

「おうオトメのガキンチョ!初戦闘はどうだった?」
「リョウトさん、僕はガキじゃないですよ。まぁちょっと緊張しましたけど、大丈夫でした」
「お疲れ様ですオトメさん」
「ありがとうアカネちゃん」
「オトメ君、とりあえず席に座りなさい。食事をしよう」

 僕は皆と一緒に席に座る。

「それではオトメ君の初戦闘を記念して……」

 皆で歓迎してくれるのは嬉しいが、そんなに喜ぶことなのか?

「カンパーイ!!」

 リョウトさん達大人はお酒をぐびぐび飲み始めた。

「うっひょーマジうまいな!攻略後はこの一杯よ!」
「それにしてもオトメ君、無傷とは大したものだよ」
「そうですよね。初戦闘にゴブリンはやり過ぎだと僕も思いましたよ(ちょこまか動くし)」

 僕の台詞にリョウトさんの手が止まる。

「……おいマスター、オトメにゴブリンを殺らせたのか?アレはHPは高くはないが、動きがしっかり読めたり、戦闘慣れしてたり、そういう奴が初めて戦うやつだろ?そもそも、複数人で狩る相手だし」

 僕って結構凄いのかな。ってかリョウトさんは僕が何と戦った知らないでいたのか。

「いや、オトメ君には最高の敵さ。無傷だったわけだしね」
「まーそーだけどよー、まぁいい、オトメが天才ってことにしといてやるよ!な、オトメのガキンチョ」

 リョウトは笑顔で頭をグチャグチャ撫でてきた。

「大変心が安定、豊かになっています、とても良い状態異常です。まぁ私がいれば無傷は当たり前です」
「ん?なんか言ったかPE」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

処理中です...