仮想世界β!!

音音てすぃ

文字の大きさ
上 下
5 / 121

C4.転送装置

しおりを挟む
 ここはあの施設。初めて見たときは、小さなプレハブみたいで驚いた。何に驚いたって、こんな小屋みたいな所を病院といっていたことにだ。僕を監禁するためにさっさと作ったのだろう。

 さて、これまでの話をする。時は僕が世界を去る数分前。

「ここが赤田が使ってた施設ね。素敵だわ。やっぱりセンスがある」

 ばかにしてるのかこの人。
 ナノさんは、施設の内装を感慨深い表情で見まわしていた。花瓶を見つめていた。きっとそのセンスのことを言っていたのだろう。

「赤田さん、あのままでよかったんですか?」
「いいの。あとで私の部下が掃除するから」
「は、はぁ……」

 掃除?ゴミとしてとかじゃないよね?

「ここに座って」
「はい」

 ナノさんは、椅子を2つ用意して、向かい合うように座った。

「それじゃあ、何について話していこうか」
「あの……色々聞きたいことがあるんですけど」
「どうぞ」

 僕は、はちきれんばかりの疑問をぶつけることにする。

「この目は何ですか?ナノさんがこうしたんですよね?あの時」
「えぇ、当たり」
「そして、さっきから聞こえてるこの声はなんですか?『推奨行動……』とか『今日の天気は……』とか『メンタルが……』とか言うんです!」
「そうね……」
「そして、何で僕なんですか!?何かどうなってるんですか!一度に色々起こりすぎて、状況が掴めない……」
「一つずつ、説明していくね」

 感情的な僕と、反対的に冷静なナノさん。きっと彼女には想定済みのことなのだろう。

「その目はPersonal Eyes、通称PEという。寄生型独立デバイス。見たこともない情報が見えると思うけど……どう?」
「見えます。まるで、ゲームのようで」
「そう、なら、適合成功ね」
「なんですかそれ」
「PEっていうのはね、持ち主の目に寄生して利便性を発揮するの。でも、適合するのにしばらくの間視力を奪うからそこが弱点なんだけど」

 僕はこの1週間のことを少し分かってきた。再生までのあいだここに監禁されていたのだ。

「目のことは少しわかりました。じゃあ、何で僕なんですか?何で僕を襲ったんですか?別に他の人にすればいいとかじゃなくて……」

 この時ナノさんは笑った。手で口元を抑えていた。出会い方が違えば惚れていたかもしれない。いや、ぜったいにない。

「フフフ、それはね、簡単そうだったからよ」

 僕は簡単(騙されやすい)男。

「む、僕ってそんなふうに見えます?」
「理由は後で教えるわ。ちゃんとね」
「そういえば、あの永田って誰ですか?」
「オトメ君の殺害を企んでる組織の手先……って感じかな。まぁただのザコだよ」
「そうなのか……」

 いやいや、レベル差70オーバーはザコだろうな。

「他に質問は?」
「僕をこんな目にして、何がしたいんだ?……したいんですか?」
「……それも、今は言えない」
「どうして!!」

 すると、ナノさんは立ち上がった。

「しっ!……静かに!」

 僕の視界にも、『警戒』の文字が赤く表示される。

「約十秒で会敵」

 PEが僕に警告する。

「どうやらゆっくり話す時間は無いようね。……それじゃあこれを使って」


 ナノさんは僕にポンッとペンを渡した。

「これは?」
「転送装置って言うと分かり易いかな、使い方はNO.D9に訊いて」

 ナノさんは手を変形させ、戦闘態勢に入る。

「スキャン開始……『転送装置』使用方法、上のボタンを押してください」
「ナノさん、NO.D9って誰?」
「知らなくていいよ……どうせもう一回説明するから」
「え?もう一回?」
「さっさと押しなさい!奴らが来る!一人だけじゃなかったか!」

 爆発音とともにプレハブのドアは破壊され、数人の武装集団が入ってきた。

「推奨行動、ペンをノックする」

 僕は無我夢中でペンの上をノックした。
 ガチャという重い音とともに、僕の体が光とともに半透明になっていった。

「ナノさん!」
「大丈夫、私は強いからね」

 2秒後、体が消えた。

 後から考えたら、ここで死んでもよかったんじゃないかとも思った。何故って?ここから正義もクソもない、死ぬことの無い殺し合いが始まるのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...