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C4.転送装置
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ここはあの施設。初めて見たときは、小さなプレハブみたいで驚いた。何に驚いたって、こんな小屋みたいな所を病院といっていたことにだ。僕を監禁するためにさっさと作ったのだろう。
さて、これまでの話をする。時は僕が世界を去る数分前。
「ここが赤田が使ってた施設ね。素敵だわ。やっぱりセンスがある」
ばかにしてるのかこの人。
ナノさんは、施設の内装を感慨深い表情で見まわしていた。花瓶を見つめていた。きっとそのセンスのことを言っていたのだろう。
「赤田さん、あのままでよかったんですか?」
「いいの。あとで私の部下が掃除するから」
「は、はぁ……」
掃除?ゴミとしてとかじゃないよね?
「ここに座って」
「はい」
ナノさんは、椅子を2つ用意して、向かい合うように座った。
「それじゃあ、何について話していこうか」
「あの……色々聞きたいことがあるんですけど」
「どうぞ」
僕は、はちきれんばかりの疑問をぶつけることにする。
「この目は何ですか?ナノさんがこうしたんですよね?あの時」
「えぇ、当たり」
「そして、さっきから聞こえてるこの声はなんですか?『推奨行動……』とか『今日の天気は……』とか『メンタルが……』とか言うんです!」
「そうね……」
「そして、何で僕なんですか!?何かどうなってるんですか!一度に色々起こりすぎて、状況が掴めない……」
「一つずつ、説明していくね」
感情的な僕と、反対的に冷静なナノさん。きっと彼女には想定済みのことなのだろう。
「その目はPersonal Eyes、通称PEという。寄生型独立デバイス。見たこともない情報が見えると思うけど……どう?」
「見えます。まるで、ゲームのようで」
「そう、なら、適合成功ね」
「なんですかそれ」
「PEっていうのはね、持ち主の目に寄生して利便性を発揮するの。でも、適合するのにしばらくの間視力を奪うからそこが弱点なんだけど」
僕はこの1週間のことを少し分かってきた。再生までのあいだここに監禁されていたのだ。
「目のことは少しわかりました。じゃあ、何で僕なんですか?何で僕を襲ったんですか?別に他の人にすればいいとかじゃなくて……」
この時ナノさんは笑った。手で口元を抑えていた。出会い方が違えば惚れていたかもしれない。いや、ぜったいにない。
「フフフ、それはね、簡単そうだったからよ」
僕は簡単(騙されやすい)男。
「む、僕ってそんなふうに見えます?」
「理由は後で教えるわ。ちゃんとね」
「そういえば、あの永田って誰ですか?」
「オトメ君の殺害を企んでる組織の手先……って感じかな。まぁただのザコだよ」
「そうなのか……」
いやいや、レベル差70オーバーはザコだろうな。
「他に質問は?」
「僕をこんな目にして、何がしたいんだ?……したいんですか?」
「……それも、今は言えない」
「どうして!!」
すると、ナノさんは立ち上がった。
「しっ!……静かに!」
僕の視界にも、『警戒』の文字が赤く表示される。
「約十秒で会敵」
PEが僕に警告する。
「どうやらゆっくり話す時間は無いようね。……それじゃあこれを使って」
ナノさんは僕にポンッとペンを渡した。
「これは?」
「転送装置って言うと分かり易いかな、使い方はNO.D9に訊いて」
ナノさんは手を変形させ、戦闘態勢に入る。
「スキャン開始……『転送装置』使用方法、上のボタンを押してください」
「ナノさん、NO.D9って誰?」
「知らなくていいよ……どうせもう一回説明するから」
「え?もう一回?」
「さっさと押しなさい!奴らが来る!一人だけじゃなかったか!」
爆発音とともにプレハブのドアは破壊され、数人の武装集団が入ってきた。
「推奨行動、ペンをノックする」
僕は無我夢中でペンの上をノックした。
ガチャという重い音とともに、僕の体が光とともに半透明になっていった。
「ナノさん!」
「大丈夫、私は強いからね」
2秒後、体が消えた。
後から考えたら、ここで死んでもよかったんじゃないかとも思った。何故って?ここから正義もクソもない、死ぬことの無い殺し合いが始まるのだから。
さて、これまでの話をする。時は僕が世界を去る数分前。
「ここが赤田が使ってた施設ね。素敵だわ。やっぱりセンスがある」
ばかにしてるのかこの人。
ナノさんは、施設の内装を感慨深い表情で見まわしていた。花瓶を見つめていた。きっとそのセンスのことを言っていたのだろう。
「赤田さん、あのままでよかったんですか?」
「いいの。あとで私の部下が掃除するから」
「は、はぁ……」
掃除?ゴミとしてとかじゃないよね?
「ここに座って」
「はい」
ナノさんは、椅子を2つ用意して、向かい合うように座った。
「それじゃあ、何について話していこうか」
「あの……色々聞きたいことがあるんですけど」
「どうぞ」
僕は、はちきれんばかりの疑問をぶつけることにする。
「この目は何ですか?ナノさんがこうしたんですよね?あの時」
「えぇ、当たり」
「そして、さっきから聞こえてるこの声はなんですか?『推奨行動……』とか『今日の天気は……』とか『メンタルが……』とか言うんです!」
「そうね……」
「そして、何で僕なんですか!?何かどうなってるんですか!一度に色々起こりすぎて、状況が掴めない……」
「一つずつ、説明していくね」
感情的な僕と、反対的に冷静なナノさん。きっと彼女には想定済みのことなのだろう。
「その目はPersonal Eyes、通称PEという。寄生型独立デバイス。見たこともない情報が見えると思うけど……どう?」
「見えます。まるで、ゲームのようで」
「そう、なら、適合成功ね」
「なんですかそれ」
「PEっていうのはね、持ち主の目に寄生して利便性を発揮するの。でも、適合するのにしばらくの間視力を奪うからそこが弱点なんだけど」
僕はこの1週間のことを少し分かってきた。再生までのあいだここに監禁されていたのだ。
「目のことは少しわかりました。じゃあ、何で僕なんですか?何で僕を襲ったんですか?別に他の人にすればいいとかじゃなくて……」
この時ナノさんは笑った。手で口元を抑えていた。出会い方が違えば惚れていたかもしれない。いや、ぜったいにない。
「フフフ、それはね、簡単そうだったからよ」
僕は簡単(騙されやすい)男。
「む、僕ってそんなふうに見えます?」
「理由は後で教えるわ。ちゃんとね」
「そういえば、あの永田って誰ですか?」
「オトメ君の殺害を企んでる組織の手先……って感じかな。まぁただのザコだよ」
「そうなのか……」
いやいや、レベル差70オーバーはザコだろうな。
「他に質問は?」
「僕をこんな目にして、何がしたいんだ?……したいんですか?」
「……それも、今は言えない」
「どうして!!」
すると、ナノさんは立ち上がった。
「しっ!……静かに!」
僕の視界にも、『警戒』の文字が赤く表示される。
「約十秒で会敵」
PEが僕に警告する。
「どうやらゆっくり話す時間は無いようね。……それじゃあこれを使って」
ナノさんは僕にポンッとペンを渡した。
「これは?」
「転送装置って言うと分かり易いかな、使い方はNO.D9に訊いて」
ナノさんは手を変形させ、戦闘態勢に入る。
「スキャン開始……『転送装置』使用方法、上のボタンを押してください」
「ナノさん、NO.D9って誰?」
「知らなくていいよ……どうせもう一回説明するから」
「え?もう一回?」
「さっさと押しなさい!奴らが来る!一人だけじゃなかったか!」
爆発音とともにプレハブのドアは破壊され、数人の武装集団が入ってきた。
「推奨行動、ペンをノックする」
僕は無我夢中でペンの上をノックした。
ガチャという重い音とともに、僕の体が光とともに半透明になっていった。
「ナノさん!」
「大丈夫、私は強いからね」
2秒後、体が消えた。
後から考えたら、ここで死んでもよかったんじゃないかとも思った。何故って?ここから正義もクソもない、死ぬことの無い殺し合いが始まるのだから。
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