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K2.起動
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1週間が経っただろうか。それなりに生活に慣れてきた。
そして不思議なことに、目が見える気がするのだ。気がするだけ。
ここに物があるとか、どんな形をしてるとか、どんな空間なのか……感覚で認知している気がする。
まぁ、見えてる気がするだけで、実際何も見えないのだが。
そして、赤田さんから「見るな」と言われている。訳がわからない。
「おはようございます」
朝方、ベットから起き上がる。
「おはよう。今日は君に会ってもらいたい人がいるんだ」
一瞬で恐怖した。誰かと会う?嫌だ。
「え、あの……」
「大丈夫だよ。悪い人じゃない。ただ、君は苦手な人かもね……」
「……わかりました。でも、赤田もいるって約束してください」
「あぁもちろんさ。一時間以内に準備してくれ。そしたら包帯を変えよう」
「はい」
慣れた手つきで服を着替えて朝食を済ませた。
今なら、窓際に花瓶が置いてあることがわかる。
なんなら色まで……
「オトメ君、包帯を変えよう」
「はい」
スッキリした気分で外に出た。
「赤田さん、どこに行くんです?」
「あっ、あぁ、ついてきてくれ」
ん?なにか挙動不審な?
僕は赤田さんの後ろをポケットに手を突っ込みながらついていく。
「オトメ君、今日はとても元気だね」
「えぇ、こんなに調子のいい日は久しぶりです。前までは目の辺りがグチャグチャで触りたくもなかったですけど、今は前と大して変わりません!」
「……そうか」
暫く歩いただろう、人気が無くなってきた。
すると、誰かが耳打ちしたような声が聞こえる。
「さい……せい……ん………りょう」
「ん……今、何か聞こえたような……誰かいる?」
「オトメ君、危ない!!」
空間を認知する間も無い間に、赤田さんは、覆い被さるようにして僕を突き倒した。
「大丈夫……かい?」
次の瞬間の音を、僕の耳は捉えていた。
肉を切り裂き、骨を砕くような音。上の赤田さんの力が抜けるのがわかる。
「グッフ……ああ」
「赤田さん!何があったんです!?」
僕は危険を察知して、包帯を取ろうとしたが「取るな」という言葉が邪魔をした。
「やれやれ、雑魚いなぁー。一撃とかやんなっちゃう」
聞きなれない声だ。本能が逃げろと言っている。
「てかさー、お前、PE持ちなのになんで目隠してんの?バカ?」
「誰だお前……」
「はー、ビビってそれどころじゃねぇか。まぁいい、てめぇを殺せば任務は完了だ」
すると、また耳打ちが聞こえた。
「初期設定完了。エネルギー不足。太陽光を直接見ない程度に見てください」
「は?」
耳打ちに気を取られている内に、空間認知が完了した。
170オーバーの男、身の丈を上回る大剣を肩に乗せて、首のネックレスが金属音を鳴らしている。
「に……逃げろ!」
「でも!」
「君なら大丈夫だ。いざとなれば包帯を取るんだ、いいね?」
僕は頷いて走り出した。
「あ!このオッサン何か吹き込んだな!」
「私の……仕事は……彼を守ることだ!」
「はぁ?そうですかい。でもその身体でどうやって……もう稼働できないんじゃない?」
「もう……必要無い」
「はぁ?意味不明」
「今の君では彼には勝てん」
男は舌打ちすると、大剣を振り下ろした。
「うぜぇ。あんなガキに負けるかってんだ。この仕事は俺にしか出来ねぇんだよ」
真っ赤な液体が水溜まりになった。
ーーーーーー
「ハァハァ……これくらいでいいか?」
目は見えないが、周りをブンブン見まわす。
「残念、てめぇの場所はすぐにわかる。いくら逃げても無駄だ」
本当に残念、どうやら回り込みされたようだ。
「それにしてもよぉ、なんで包帯してんのに走って逃げれんの?」
「僕が知るわけないだろ?」
「それもそうか。まぁ多少何か知ってたところで関係ない。殺すからなー」
その間も、僕の耳にはあの声がリピートされていた。無感情の女の人の声だ。
「推奨行動、包帯を取る」
「わかった」
「ん?なに独り言言ってんだ?」
どうやら声は僕にしか聞こえないようだ。
「赤田さん、ありがとう」
僕は下から指を引っ掛け、勢い良く包帯を取った。
閉じられた目を、ゆっくりと、力強く開ける。眩しい日光のせいで視界が悪い。
その2秒後、カメラのピントを合わせるように視界がはっきりとした。
「エネルギー100%、完全完治、オペレーションシステム起動、UI表示、回避補正Lv.1発動。おはようございます。私の名前は……」
「こっこれは……!」
まだ話し続ける声を無視して、目が見える感動を味わった。
視界には見慣れない文字、ゲームで見るステータスの様なもの、マップ、様々な情報が表示された。
「……起動完了、これからよろしくお願いします、オトメキョウスケ」
そして不思議なことに、目が見える気がするのだ。気がするだけ。
ここに物があるとか、どんな形をしてるとか、どんな空間なのか……感覚で認知している気がする。
まぁ、見えてる気がするだけで、実際何も見えないのだが。
そして、赤田さんから「見るな」と言われている。訳がわからない。
「おはようございます」
朝方、ベットから起き上がる。
「おはよう。今日は君に会ってもらいたい人がいるんだ」
一瞬で恐怖した。誰かと会う?嫌だ。
「え、あの……」
「大丈夫だよ。悪い人じゃない。ただ、君は苦手な人かもね……」
「……わかりました。でも、赤田もいるって約束してください」
「あぁもちろんさ。一時間以内に準備してくれ。そしたら包帯を変えよう」
「はい」
慣れた手つきで服を着替えて朝食を済ませた。
今なら、窓際に花瓶が置いてあることがわかる。
なんなら色まで……
「オトメ君、包帯を変えよう」
「はい」
スッキリした気分で外に出た。
「赤田さん、どこに行くんです?」
「あっ、あぁ、ついてきてくれ」
ん?なにか挙動不審な?
僕は赤田さんの後ろをポケットに手を突っ込みながらついていく。
「オトメ君、今日はとても元気だね」
「えぇ、こんなに調子のいい日は久しぶりです。前までは目の辺りがグチャグチャで触りたくもなかったですけど、今は前と大して変わりません!」
「……そうか」
暫く歩いただろう、人気が無くなってきた。
すると、誰かが耳打ちしたような声が聞こえる。
「さい……せい……ん………りょう」
「ん……今、何か聞こえたような……誰かいる?」
「オトメ君、危ない!!」
空間を認知する間も無い間に、赤田さんは、覆い被さるようにして僕を突き倒した。
「大丈夫……かい?」
次の瞬間の音を、僕の耳は捉えていた。
肉を切り裂き、骨を砕くような音。上の赤田さんの力が抜けるのがわかる。
「グッフ……ああ」
「赤田さん!何があったんです!?」
僕は危険を察知して、包帯を取ろうとしたが「取るな」という言葉が邪魔をした。
「やれやれ、雑魚いなぁー。一撃とかやんなっちゃう」
聞きなれない声だ。本能が逃げろと言っている。
「てかさー、お前、PE持ちなのになんで目隠してんの?バカ?」
「誰だお前……」
「はー、ビビってそれどころじゃねぇか。まぁいい、てめぇを殺せば任務は完了だ」
すると、また耳打ちが聞こえた。
「初期設定完了。エネルギー不足。太陽光を直接見ない程度に見てください」
「は?」
耳打ちに気を取られている内に、空間認知が完了した。
170オーバーの男、身の丈を上回る大剣を肩に乗せて、首のネックレスが金属音を鳴らしている。
「に……逃げろ!」
「でも!」
「君なら大丈夫だ。いざとなれば包帯を取るんだ、いいね?」
僕は頷いて走り出した。
「あ!このオッサン何か吹き込んだな!」
「私の……仕事は……彼を守ることだ!」
「はぁ?そうですかい。でもその身体でどうやって……もう稼働できないんじゃない?」
「もう……必要無い」
「はぁ?意味不明」
「今の君では彼には勝てん」
男は舌打ちすると、大剣を振り下ろした。
「うぜぇ。あんなガキに負けるかってんだ。この仕事は俺にしか出来ねぇんだよ」
真っ赤な液体が水溜まりになった。
ーーーーーー
「ハァハァ……これくらいでいいか?」
目は見えないが、周りをブンブン見まわす。
「残念、てめぇの場所はすぐにわかる。いくら逃げても無駄だ」
本当に残念、どうやら回り込みされたようだ。
「それにしてもよぉ、なんで包帯してんのに走って逃げれんの?」
「僕が知るわけないだろ?」
「それもそうか。まぁ多少何か知ってたところで関係ない。殺すからなー」
その間も、僕の耳にはあの声がリピートされていた。無感情の女の人の声だ。
「推奨行動、包帯を取る」
「わかった」
「ん?なに独り言言ってんだ?」
どうやら声は僕にしか聞こえないようだ。
「赤田さん、ありがとう」
僕は下から指を引っ掛け、勢い良く包帯を取った。
閉じられた目を、ゆっくりと、力強く開ける。眩しい日光のせいで視界が悪い。
その2秒後、カメラのピントを合わせるように視界がはっきりとした。
「エネルギー100%、完全完治、オペレーションシステム起動、UI表示、回避補正Lv.1発動。おはようございます。私の名前は……」
「こっこれは……!」
まだ話し続ける声を無視して、目が見える感動を味わった。
視界には見慣れない文字、ゲームで見るステータスの様なもの、マップ、様々な情報が表示された。
「……起動完了、これからよろしくお願いします、オトメキョウスケ」
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