仮想世界β!!

音音てすぃ

文字の大きさ
上 下
1 / 121

O0.なのトラップ

しおりを挟む
 今、とんでもないことが起きている。僕は、今まで何事もなく生きてきた一般人。

 音目おとめ 京介きょうすけ

 それが僕の名前だ。大学生1年で、酒は飲めない。現状を伝えなければいけない。

「オトメ君はさぁ、普段無口なの?」

 僕に気さくに話しかけてくれるこの女性、青羽あおばね なの さんと外食をしているのだ。
 スクエアな机に二人向かい合わせ。今まで身内の女性としか話したことのない僕には話題を振る勇気なんてなかった。

「いやいや、そんなことありませんよ?僕とってもおしゃべりです。そういえば最近行方不明事件ばっかで怖いですよね!……(ハハハ)」
「そうだね……あのさ、緊張してる?」
「あ、当たり前です!というか、なんで青羽さんみたいな(美人さん)が僕を食事に誘うんです?」

 彼女は頬に手を置く。

「気になるから……かな?」

 今日は心臓がフル稼働だ。破裂しないといいんだけれど。

「冗談よしてください。僕ら面識なかったですよね?」

 そうだ。僕は今日まで青羽さんを大学内で見かけたことなんて1度もなかった。
 友達の少ない(3人程度)僕をどうやって知ったんだ?

「一目惚れ……かな?」

 僕の頬は真っ赤だった。

 ここで、どのようにして僕らが出会ったか説明する。
 朝方、僕は特にすることも無く、図書館へ出かける。そして、読書に夢中になっていると、僕をのぞき込むように話しかけてきたのが青羽さんだったというわけだ。
 ナンパか。
 確かに美人だし、スタイルいいし、髪も(セミロング程で)綺麗だし、文句一切無しだけど、なんで僕なの?
 僕はどちらかといえば陰の人間なんだけどな……

 時を今に戻そう。
 ようやく僕の温度は冷めてきた。こんなこともあるさ!

「オトメ君はさ、彼女とかいるの?」
「い、いいいいません!今までいたことも無いです……きっと」

 彼女の目線は手錠のように僕を凍らせる。動けない。

「じゃあさ、付き合おうよ」

 ……いきなりすぎじゃないですか?

「え(何で!?)!いいんですか?僕なんかで」
「……あんまり自分を悲観しなくていいんだよ」

 僕の、初めての彼女だ!

「ありがとうございます!」

 僕は握手を求めた。

「みんな見てるから、恥ずかしいって」
「あぁすいません」

僕は、水をグイッと飲み干す。

「ねぇオトメ君、家行っていい?」

 な、なにを言っているんだこの人は!会って数時間も経っていない男の家に上がろうというのか!
 もちろん返事は、決まってる。

「もちろんオーケーです」

 2人でアパートに着いた。僕は一人暮らしで寂しく生きている。

「今片付けるから──」

 綺麗な部屋ではないので、青羽さんを玄関で引き止めておいて、僕は部屋を片付けに向かう。

「いいよ別に」

 なに!あ、青羽さんはもしかして体だけの関係を……!

「そ、それは駄目です青羽さん!」
「何をいってるの?汚いのなんてバレバレだよ」
「え?」

 なんで知ってんの?僕が家に人を呼ぶことはあんまりない。友達も少ないし。

「えーと、オトメ君を知ってる人達から聞いたのよ」
「そうなんですか」

 ちょっと怪しいな。気味が悪くなってきた。そうか、僕が女性を知らないだけだってきっと。

「……ここまでか」

 空気に似合わない声質、台詞。

「どうしたんですか、青羽さん」
「少しでも私に不信感を持ってしまったら、もうこうするしかないんだ。もっと後がよかったのだけど……」

 彼女は指をバキバキ鳴らしながら近づいてくる。

「何を言っているんだ青羽さん?」

 明らかに様子が変だ。まず目が違う。これは、僕を殺す目だ!

「やめて!落ち着こう!ど、どうしちゃったんだ!」

 聞く耳持たないか……ならばこちらから仕掛けるしかない。
 所詮、僕に女性なんかが好意を寄せてくれるわけないんだ。
 僕は渾身の拳を放った。最低だと思った。
 しかし、彼女は余裕の顔で避ける。体制の崩れた僕の左足を彼女は足で払う。

「ぶっ!ぐへっ」

 床に思いっきり顔をぶつけて鼻血が出た。鼻にジーンとした痛みが広がっていった。

「あらあらー、その醜い顔、見たいわ」

 自分のことを女性に殴りかかるクズだ、と思ったが、彼女の台詞で後悔と恐怖に頭がいっぱいになった。
 彼女は倒れている僕の背中に乗って顔を色々と触ってきた。

「な、何をするんだ!それは目だ!や、やめろ!」
「あなたに視力なんて必要ないわ……あら、鼻血が顔にまとわりついて気持ち悪い」
「やめろぉ!!」

 僕の両目は、彼女の鋭く変形した手によって、ミキサーにかけられた。

「痛い痛い痛い痛い痛ーーーい!!やめろ!殺してやる!」

 顔に二つの穴が空いた。

 僕はそのショックで意識を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...