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107.花束
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「……あ、あぁあああ?どこだここ」
左目の痛みで呼吸を取り戻した。四肢を拘束されて、仰向けに寝ている。腕も足も動かない。
「動かない……アレ?拘束されてる?」
大の字でベッドのようなものの上にいるのだろう。
首が多少まわる。広い空間に見慣れない器具と薬品群、白衣の老人がなにやら作業中のようだ。
「す、すみません!ここ!どこですか!?なんで拘束されてんですか!?」
僕は目の痛みを我慢してガチャガチャと拘束を解こうとするが、びくともしない。キョウスケの声もしない、ストレージも反応しない。ひどい喪失感に似たものが体を駆けまわった。
「おや、お目覚めか。欠損した四肢の再生ご苦労。ヲルによって君の再生スキルのみがアクティブだ。PE固有の能力は使えないよ。あきらめろ」
「四肢の再生?そうか、そういえば……」
前の記憶が蘇る。そういえばヲルという少女に目をやられたのだった。この老人の話によるなら、僕が使えるスキルは再生スキルのみだ。通りでなくなったはずの手足があるわけだ。
で?なんで拘束?その器具はなんだ?いやな予感しかしない。
「君にはここで実験に付き合ってもらうよぉお!想定の起床時間より速かったから予定の数より増やしてもヲルは怒らないだろ?さささささ!歯ぁ食いしばってね!」
老人は小型のナイフを右手に、白濁した液の入った瓶をとりだし、僕に近づいて来た。
脈動を感じた。無意識に体を動かすが、頑丈な拘束具はびくともしない。腕や足を引きちぎって逃げようとしても体に以前の力が働かない。
「おい、何する気だ!?」
「それは自身の体で体感してくれ」
僕の腹部にナイフが突き立てられる。変に体に力が入って、洪水みたいに血が流れた。
「いっでぇ……あああああ!」
逃げられない痛みを感じていると、刺さったナイフで傷口を無理やり広げてくる。体の中で異物が動いている感覚に吐き気を覚えた。
「いくよ!いくよ!D9!」
広がった僕の傷に薬品が注がれる。ひんやりした感覚の後に体が暴れだした。ある毒物を致死量取り入れた時、並みの人間が数メートル飛び上がって死んだという話を思い出した。多分それに似た何かが体で起こっている。拘束具の中で手足が千切れんばかりに暴れた。
何かを叫んだせいで喉が壊れた。
何かの笑い声が聞こえてくる。きっとあの老人だろう。意識が戻った時、腹の痛みはほとんど消えていて、腹の中で何か小さいものが動いている感覚があった。
「意識が戻るまで5分……再生まで30秒、ヲルの封印を受けても30秒?少し早いな、素晴らしい!」
「あ……」
気持ち悪い、口に溜まった血を床にぺっと吐き出した。
「君の中に入れたのは、並みの人間に投与した瞬間に宿主を食い殺す寄生虫。勿論私のオリジナルだ。ふむ……500匹はいれたのだが……君はなかなか死なないな。再生が食事よりも速いか」
「変なの入れてんじゃ……ねぇよ」
「変とは失礼だ。ECFの全滅の為に作った試作なんだから」
腹の気持ち悪さを我慢して再び拘束具に力を込める。
「君は基本なにをしても死なないんだから、何をしてもいいよね?」
僕と老人は嫌悪と喜びの表情を交わした。
いつまで続くのかわからない拷問という名前の実験。
寄生虫たちは瓶の中から取り出され、僕に投与される。視界にあった薬品庫の在庫はまだまだある。僕は地獄のような日々をこの老人と過ごすことになった。
痛みに慣れてきた。
もう何日たったか分からなくなった。
彼ら寄生虫は僕を苗床にして生き死にを繰り返している。そのうち抵抗する元気もなくなってきて、あの瓶をみるのが怖くなってきた。いつまでも終わらない時間、変わらない天井と床、ベッドは僕の血で悪臭を放っている。慣れても恐怖は消えなかった。永遠に終わらない全身の痛みの中で、作業を終えた老人が部屋から出ていく時だけが安心できた。
20種を超えてきた辺りから「やめてくれ」だけが僕の台詞だった。そして50を超えて来たあたりで何も言わなくなっていた。ただ時間が過ぎていくのを、この老人が飽きてやめるのをまっていた。
痛い、体がいたい。目が痛い。キョウスケ、どこだよ?君に会いたい。キリカに会いたい。ツルギさん助けて!
ーーーーー
「……」
長い時間が経った。
体の感覚がほとんど消えてしまった。
四六時中体を這いずり周る何かを感じているだけ。
「元気かねオトメ君、おやおや焦点が合ってないよ。気が触れたかな?」
返事をしない僕の腹部に老人が手を触れる。無意識に叫び声をあげる。腹部が隆起し、皮膚を引き裂き、血液が爆散した。
「あああああ!」
「素晴らしい!これはいい、この寄生虫も少し刺激を与えればここまで……ふむ、兵器としては十分以上だ。だが少々投与し過ぎた。3種類まで抑えたい」
「……殺してくれ」
僕の体の中は寄生虫の巣となっていた。しかも外部からの少しの刺激で体が爆散するレベル。もうまともな生活は送れない。この時、いやもっと前に再生スキルを会得したことを後悔していた。
「これが新作だよ、さぁ」
気を抜いていた時だった、投与された寄生虫はすぐに全身へ周り、効果が表れた。
体中が硬直するようだった。筋肉も骨も全て硬化し、変形し、木の枝のような骨が至るところから飛び出していた。
「あ……が」
「ふむ、まるで造花だな」
唯一原型をとどめていた左目に意識が集中する。全身から出血しても冷たいも暖かいもない。ここから全てを投げ出して消えてしまいたかった。人に誓った願いなぞも投げ出して。
左目の痛みで呼吸を取り戻した。四肢を拘束されて、仰向けに寝ている。腕も足も動かない。
「動かない……アレ?拘束されてる?」
大の字でベッドのようなものの上にいるのだろう。
首が多少まわる。広い空間に見慣れない器具と薬品群、白衣の老人がなにやら作業中のようだ。
「す、すみません!ここ!どこですか!?なんで拘束されてんですか!?」
僕は目の痛みを我慢してガチャガチャと拘束を解こうとするが、びくともしない。キョウスケの声もしない、ストレージも反応しない。ひどい喪失感に似たものが体を駆けまわった。
「おや、お目覚めか。欠損した四肢の再生ご苦労。ヲルによって君の再生スキルのみがアクティブだ。PE固有の能力は使えないよ。あきらめろ」
「四肢の再生?そうか、そういえば……」
前の記憶が蘇る。そういえばヲルという少女に目をやられたのだった。この老人の話によるなら、僕が使えるスキルは再生スキルのみだ。通りでなくなったはずの手足があるわけだ。
で?なんで拘束?その器具はなんだ?いやな予感しかしない。
「君にはここで実験に付き合ってもらうよぉお!想定の起床時間より速かったから予定の数より増やしてもヲルは怒らないだろ?さささささ!歯ぁ食いしばってね!」
老人は小型のナイフを右手に、白濁した液の入った瓶をとりだし、僕に近づいて来た。
脈動を感じた。無意識に体を動かすが、頑丈な拘束具はびくともしない。腕や足を引きちぎって逃げようとしても体に以前の力が働かない。
「おい、何する気だ!?」
「それは自身の体で体感してくれ」
僕の腹部にナイフが突き立てられる。変に体に力が入って、洪水みたいに血が流れた。
「いっでぇ……あああああ!」
逃げられない痛みを感じていると、刺さったナイフで傷口を無理やり広げてくる。体の中で異物が動いている感覚に吐き気を覚えた。
「いくよ!いくよ!D9!」
広がった僕の傷に薬品が注がれる。ひんやりした感覚の後に体が暴れだした。ある毒物を致死量取り入れた時、並みの人間が数メートル飛び上がって死んだという話を思い出した。多分それに似た何かが体で起こっている。拘束具の中で手足が千切れんばかりに暴れた。
何かを叫んだせいで喉が壊れた。
何かの笑い声が聞こえてくる。きっとあの老人だろう。意識が戻った時、腹の痛みはほとんど消えていて、腹の中で何か小さいものが動いている感覚があった。
「意識が戻るまで5分……再生まで30秒、ヲルの封印を受けても30秒?少し早いな、素晴らしい!」
「あ……」
気持ち悪い、口に溜まった血を床にぺっと吐き出した。
「君の中に入れたのは、並みの人間に投与した瞬間に宿主を食い殺す寄生虫。勿論私のオリジナルだ。ふむ……500匹はいれたのだが……君はなかなか死なないな。再生が食事よりも速いか」
「変なの入れてんじゃ……ねぇよ」
「変とは失礼だ。ECFの全滅の為に作った試作なんだから」
腹の気持ち悪さを我慢して再び拘束具に力を込める。
「君は基本なにをしても死なないんだから、何をしてもいいよね?」
僕と老人は嫌悪と喜びの表情を交わした。
いつまで続くのかわからない拷問という名前の実験。
寄生虫たちは瓶の中から取り出され、僕に投与される。視界にあった薬品庫の在庫はまだまだある。僕は地獄のような日々をこの老人と過ごすことになった。
痛みに慣れてきた。
もう何日たったか分からなくなった。
彼ら寄生虫は僕を苗床にして生き死にを繰り返している。そのうち抵抗する元気もなくなってきて、あの瓶をみるのが怖くなってきた。いつまでも終わらない時間、変わらない天井と床、ベッドは僕の血で悪臭を放っている。慣れても恐怖は消えなかった。永遠に終わらない全身の痛みの中で、作業を終えた老人が部屋から出ていく時だけが安心できた。
20種を超えてきた辺りから「やめてくれ」だけが僕の台詞だった。そして50を超えて来たあたりで何も言わなくなっていた。ただ時間が過ぎていくのを、この老人が飽きてやめるのをまっていた。
痛い、体がいたい。目が痛い。キョウスケ、どこだよ?君に会いたい。キリカに会いたい。ツルギさん助けて!
ーーーーー
「……」
長い時間が経った。
体の感覚がほとんど消えてしまった。
四六時中体を這いずり周る何かを感じているだけ。
「元気かねオトメ君、おやおや焦点が合ってないよ。気が触れたかな?」
返事をしない僕の腹部に老人が手を触れる。無意識に叫び声をあげる。腹部が隆起し、皮膚を引き裂き、血液が爆散した。
「あああああ!」
「素晴らしい!これはいい、この寄生虫も少し刺激を与えればここまで……ふむ、兵器としては十分以上だ。だが少々投与し過ぎた。3種類まで抑えたい」
「……殺してくれ」
僕の体の中は寄生虫の巣となっていた。しかも外部からの少しの刺激で体が爆散するレベル。もうまともな生活は送れない。この時、いやもっと前に再生スキルを会得したことを後悔していた。
「これが新作だよ、さぁ」
気を抜いていた時だった、投与された寄生虫はすぐに全身へ周り、効果が表れた。
体中が硬直するようだった。筋肉も骨も全て硬化し、変形し、木の枝のような骨が至るところから飛び出していた。
「あ……が」
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