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103.壁前戦闘終幕
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互いの命と名誉、意地をかけた壁前戦闘はECFに分があると見えた。ガラスの魔力放出による隊列破壊と周囲のエーテル破壊により特攻開始、50人いたECFは約半分26人まで減少していた。一方でライヴは立て直し不可能な状態まで疲弊している、勝利は近い。
「カリン!」
「了解サイケン」
正面のライヴ兵を斬り倒して、サイケンが叫ぶと、見事なタイミングでカリンと場所を交換する。連続戦闘で疲れたなんて言えない。
「疲れた?えぇ?」
サイケンを狙っていたライフル兵をカリンが突き刺し、機械槍に魔力を込めて絶命させた。
どうやらサイケンの疲れは目に見えているものだったようだ。
「はっ、冗談じゃない。疲れてたまるか。今のは斬撃後の硬直のスキを無くすためだ。ギンジ隊長もお前の所のカミカゼ隊長だって頑張って……何?」
周囲は圧倒的にECFが優勢、このまま白兵戦を続けていれば確実にライヴを打倒できる。そう思っていたサイケンは疲れか自分の足元を見降ろしていた。だからカリンにバレたのかもしれない。
その時、見えていた自分の影が色濃くなった気がした、そして背筋に感じた寒気と筋肉の硬直と共にその色は赤色に染まっていった。
「あれは何じゃい?」
「ちょっとカワセミ!よそ見すんなよ死にてぇのか!?」
ガラスが怪我をしているカワセミをかばいながら戦っている。五感の鋭いカワセミだからすぐに気が付いたのだろう、周囲も次々に上を見上げていく。
まるで神の降臨でも見ているように、ECFとライヴは戦闘よりも上を眺める。
一方のツルギはアリエと共にゴールドグリップの拳を抑え込んでいた。
「まだ立っているなんて……スキル直撃なんだけど!」
「底知れぬ男だなまったく」
文字通り、ゴールドグリップの拳を二人がかりで受け止めていた。
「ありゃ焦ったけどな、あと数歩も火力が足りねぇぜ。なんならあのシロカミ二人の方がガッツあったなぁ!……ん?おいおい……!向こう様は道連れに全部吹き飛ばす気か!」
ゴールドグリップが壁の上を眺めていた。ツルギが横眼でそれを見ると、サイケンやカワセミが見た赤い光が浮遊していた。
一瞬気が抜けたところでゴールドグリップが二人の刀を弾く。ツルギが追い打ちをかけようとした時には既に逃げられていた。
「逃げられたか……!クソッ」
「ツルギ隊長、あれは……?」
憎悪と焦りに満ちた表情でツルギが通信をつないだ。
アリエはいつも冷静沈着なツルギが絶対見せない顔を見て、状況の深刻さを悟った。
「総員、離脱しろ!急げ!殺されるぞ!」
「ツルギ隊長?」
「アリエ、俺たちの負けだ。アレを避け切れるのは、いたとしてもギンジか……ひとまず引くぞ、ここは消し飛ぶ」
「え?……えぇ!」
ツルギがアリエを腰から持ち上げて、瞬間移動でできるだけ遠くに移動する。瞬間移動の限界人数が二人までだったのだ助けられたとしても近くのアリエしかいなかった。
「ちょっと!ツルギ隊長!まだ皆が……!」
アリエがツルギに壁を指さして激怒する。だが彼の表情は悲愴とぶつけようのない怒りを持っていたことにすぐに気がづいた。
「すまない……お前ら……」
ツルギが遠方から眺めていた赤い光は次第に落下していく。肌を撫でた風を感じた時、その現地での痛み、熱風の威力を想像しただけで足が動きそうだった。
ーーーーーー
「サイケン!立て!逃げるぞ、ツルギ隊長から聞いただろ!」
カリンが膝をついたサイケンの肩を強く引く。
「あれはなんだ?きっとあれだ。ここ一面を消す気だ。俺たちを一点に集めてから一気に……あ?ああぁ逃げよう逃げよう!って思ってたよりヤバいんじゃねーかコレ!」
サイケンも喋りながらとはいえすぐに走り出した。
「黙れクソ野郎!分析する前に逃げるんだよ!」
「おいおい、俺らの足で逃げ切れんのか!?」
ーーーーーー
ガラスとカワセミもいち早く逃げ出していた。
ガラスは振り返り際にまだ刀を振り続けているECFを見た。まだ戦っている兵士がいた。自分では止めることが出来ないと思った。できたとしても逃げ切れるかわからないあの赤いモノからは逃げ遅れるだろう。静かに自分の無力さを呪った。
「なぁガラス……」
かすれた声を横で聞いた。
「なんだよ、おしゃべりの余裕なんてないぞ」
「ははは……最後くらい喋ろうや……悲しくなるんじゃい……」
足のもつれたカワセミがアスファルトに顔面から直撃した。
「カワセミ!どうした!……あぁマジかよ」
銃弾を受けた場所から再出血していた。無理して戦うからだ。でもマズイぞ、カワセミを担いで逃げていたら時間が足りない。
そこで悪い案が浮かんだ。だが、その案をとるわけにはいかず、ガラスは歯を食いしばってカワセミを持ち上げた。出血している場所を避けている時間は無い。迷っている時間があるならさっさと逃げろ!
「いででで!!おい!ガラス、おしゃべりは冗談じゃ、俺は走れん、置いていけ!」
強く一歩を踏み出した。意識を失うギリギリまで魔力を放出するんだ。身体強化に全集中しろ!
「うるさい!恨むなよ、後遺症とかなっても命はギリギリ助かるかもしれないからな。その時はたくさんボクに感謝してもらうよ」
上になったカワセミは放出されたガラスの魔力を直接浴びることによって、吐き気を催した。怪我と吐き気、身体部位の痺れと感覚の退行を感じた。
「死ぬなよカワセミ……」
重いカワセミは小柄なガラスにはつらかっただろう。毎日のトレーニングが無ければこうも速く走れなかったかもしれない。
マズイ、5秒全力疾走しただけでかなり疲れる。視界も朦朧としている。やっぱり初めの特攻魔力放出の時に使い過ぎたかも。
気を張った一歩を踏み出した時、ふらついた足を踏み外して二人ともアスファルトに体を打ち付けた。制服の上からでもわかる痛みを感じた後、背後から感じる熱を見ていた。もう間に合わない。感じるのは熱と自分の至らなさだった。
「ゴメンなカワセミ……友達を置いていくなんて出来ないよ、ボクを許してくれ……!」
失神しているカワセミと赤い光の前に移動してカワセミに覆いかぶさる。
「さて、生きていたら、何かくれよ?カワセミ」
魔力放出の応用でシールドのようなものを展開した。走りながらよりも止まっている時の方が集中しやすい。その上、枯渇した時に削るHPも止まっている方が多い。意思の問題なのだろう。ボクはここで人生最大の挑戦をする。
「さようならカワセミ」
ーーーーーー
死神が降ってくる。
赤い光は落下と共に威力を増していく。周囲を溶かしながら進み、着地と共に網膜と鼓膜を潰すような光を放った。
戦闘を続けた勇敢な彼ら、逃げ遅れた彼ら、ぼんやり眺めて生をあきらめた彼ら、発狂して人でなくなった彼らを飲み込んで、大爆発を引き起こした。壁前を丸ごと吹き飛ばした光の爆風は周囲の建物と人の欠片をまき散らし、多大な被害を広げた。
ツルギはそれを眺めている。握りしめた拳の中で、自らの至らなさを実感した。
「敗北か?味方を巻き込んだ陽動と集団撃破。彼らはゲームか何かかと思っているのか?笑えるな。あいつらも俺らと何も変わらないじゃないか……クソッ、アリエ、本部に作戦中止と増援の報告だ。生存者をUIで確認次第、撤退」
「……はい」
燃える黒鉄の街は一夜にして半壊、集団パニックが引き起こされたという。ECFも人員的な大損害を被り、作戦は失敗に終わった。
「カリン!」
「了解サイケン」
正面のライヴ兵を斬り倒して、サイケンが叫ぶと、見事なタイミングでカリンと場所を交換する。連続戦闘で疲れたなんて言えない。
「疲れた?えぇ?」
サイケンを狙っていたライフル兵をカリンが突き刺し、機械槍に魔力を込めて絶命させた。
どうやらサイケンの疲れは目に見えているものだったようだ。
「はっ、冗談じゃない。疲れてたまるか。今のは斬撃後の硬直のスキを無くすためだ。ギンジ隊長もお前の所のカミカゼ隊長だって頑張って……何?」
周囲は圧倒的にECFが優勢、このまま白兵戦を続けていれば確実にライヴを打倒できる。そう思っていたサイケンは疲れか自分の足元を見降ろしていた。だからカリンにバレたのかもしれない。
その時、見えていた自分の影が色濃くなった気がした、そして背筋に感じた寒気と筋肉の硬直と共にその色は赤色に染まっていった。
「あれは何じゃい?」
「ちょっとカワセミ!よそ見すんなよ死にてぇのか!?」
ガラスが怪我をしているカワセミをかばいながら戦っている。五感の鋭いカワセミだからすぐに気が付いたのだろう、周囲も次々に上を見上げていく。
まるで神の降臨でも見ているように、ECFとライヴは戦闘よりも上を眺める。
一方のツルギはアリエと共にゴールドグリップの拳を抑え込んでいた。
「まだ立っているなんて……スキル直撃なんだけど!」
「底知れぬ男だなまったく」
文字通り、ゴールドグリップの拳を二人がかりで受け止めていた。
「ありゃ焦ったけどな、あと数歩も火力が足りねぇぜ。なんならあのシロカミ二人の方がガッツあったなぁ!……ん?おいおい……!向こう様は道連れに全部吹き飛ばす気か!」
ゴールドグリップが壁の上を眺めていた。ツルギが横眼でそれを見ると、サイケンやカワセミが見た赤い光が浮遊していた。
一瞬気が抜けたところでゴールドグリップが二人の刀を弾く。ツルギが追い打ちをかけようとした時には既に逃げられていた。
「逃げられたか……!クソッ」
「ツルギ隊長、あれは……?」
憎悪と焦りに満ちた表情でツルギが通信をつないだ。
アリエはいつも冷静沈着なツルギが絶対見せない顔を見て、状況の深刻さを悟った。
「総員、離脱しろ!急げ!殺されるぞ!」
「ツルギ隊長?」
「アリエ、俺たちの負けだ。アレを避け切れるのは、いたとしてもギンジか……ひとまず引くぞ、ここは消し飛ぶ」
「え?……えぇ!」
ツルギがアリエを腰から持ち上げて、瞬間移動でできるだけ遠くに移動する。瞬間移動の限界人数が二人までだったのだ助けられたとしても近くのアリエしかいなかった。
「ちょっと!ツルギ隊長!まだ皆が……!」
アリエがツルギに壁を指さして激怒する。だが彼の表情は悲愴とぶつけようのない怒りを持っていたことにすぐに気がづいた。
「すまない……お前ら……」
ツルギが遠方から眺めていた赤い光は次第に落下していく。肌を撫でた風を感じた時、その現地での痛み、熱風の威力を想像しただけで足が動きそうだった。
ーーーーーー
「サイケン!立て!逃げるぞ、ツルギ隊長から聞いただろ!」
カリンが膝をついたサイケンの肩を強く引く。
「あれはなんだ?きっとあれだ。ここ一面を消す気だ。俺たちを一点に集めてから一気に……あ?ああぁ逃げよう逃げよう!って思ってたよりヤバいんじゃねーかコレ!」
サイケンも喋りながらとはいえすぐに走り出した。
「黙れクソ野郎!分析する前に逃げるんだよ!」
「おいおい、俺らの足で逃げ切れんのか!?」
ーーーーーー
ガラスとカワセミもいち早く逃げ出していた。
ガラスは振り返り際にまだ刀を振り続けているECFを見た。まだ戦っている兵士がいた。自分では止めることが出来ないと思った。できたとしても逃げ切れるかわからないあの赤いモノからは逃げ遅れるだろう。静かに自分の無力さを呪った。
「なぁガラス……」
かすれた声を横で聞いた。
「なんだよ、おしゃべりの余裕なんてないぞ」
「ははは……最後くらい喋ろうや……悲しくなるんじゃい……」
足のもつれたカワセミがアスファルトに顔面から直撃した。
「カワセミ!どうした!……あぁマジかよ」
銃弾を受けた場所から再出血していた。無理して戦うからだ。でもマズイぞ、カワセミを担いで逃げていたら時間が足りない。
そこで悪い案が浮かんだ。だが、その案をとるわけにはいかず、ガラスは歯を食いしばってカワセミを持ち上げた。出血している場所を避けている時間は無い。迷っている時間があるならさっさと逃げろ!
「いででで!!おい!ガラス、おしゃべりは冗談じゃ、俺は走れん、置いていけ!」
強く一歩を踏み出した。意識を失うギリギリまで魔力を放出するんだ。身体強化に全集中しろ!
「うるさい!恨むなよ、後遺症とかなっても命はギリギリ助かるかもしれないからな。その時はたくさんボクに感謝してもらうよ」
上になったカワセミは放出されたガラスの魔力を直接浴びることによって、吐き気を催した。怪我と吐き気、身体部位の痺れと感覚の退行を感じた。
「死ぬなよカワセミ……」
重いカワセミは小柄なガラスにはつらかっただろう。毎日のトレーニングが無ければこうも速く走れなかったかもしれない。
マズイ、5秒全力疾走しただけでかなり疲れる。視界も朦朧としている。やっぱり初めの特攻魔力放出の時に使い過ぎたかも。
気を張った一歩を踏み出した時、ふらついた足を踏み外して二人ともアスファルトに体を打ち付けた。制服の上からでもわかる痛みを感じた後、背後から感じる熱を見ていた。もう間に合わない。感じるのは熱と自分の至らなさだった。
「ゴメンなカワセミ……友達を置いていくなんて出来ないよ、ボクを許してくれ……!」
失神しているカワセミと赤い光の前に移動してカワセミに覆いかぶさる。
「さて、生きていたら、何かくれよ?カワセミ」
魔力放出の応用でシールドのようなものを展開した。走りながらよりも止まっている時の方が集中しやすい。その上、枯渇した時に削るHPも止まっている方が多い。意思の問題なのだろう。ボクはここで人生最大の挑戦をする。
「さようならカワセミ」
ーーーーーー
死神が降ってくる。
赤い光は落下と共に威力を増していく。周囲を溶かしながら進み、着地と共に網膜と鼓膜を潰すような光を放った。
戦闘を続けた勇敢な彼ら、逃げ遅れた彼ら、ぼんやり眺めて生をあきらめた彼ら、発狂して人でなくなった彼らを飲み込んで、大爆発を引き起こした。壁前を丸ごと吹き飛ばした光の爆風は周囲の建物と人の欠片をまき散らし、多大な被害を広げた。
ツルギはそれを眺めている。握りしめた拳の中で、自らの至らなさを実感した。
「敗北か?味方を巻き込んだ陽動と集団撃破。彼らはゲームか何かかと思っているのか?笑えるな。あいつらも俺らと何も変わらないじゃないか……クソッ、アリエ、本部に作戦中止と増援の報告だ。生存者をUIで確認次第、撤退」
「……はい」
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