仮想世界β!!

音音てすぃ

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95.忘れてしまう

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「死体は?」
「確認出来ません」
「消滅が早いな」

 ツルギがカエデに確認をとっている最中で、僕は燃える屋根でビヨンドの胴体をどついていた。

「おい出てこい、てめぇに用がある」

 何度剣を突き立ててもその装甲は壊れない。戦闘時間は短かったがもうすぐライヴの兵士がやってくる。この場を離れるか迎撃しなければならない。

「オトメ、もういい、脅威は一旦去った。ここにはECF隊員を数十人配置して何とか持ち帰ろう。だからお前は先に進め、もうマップを見れば行けるだろう?」
「……でも……はい、わかりました」
「安心しろ、数名が向かっている。行け」

 僕は剣を納めて、壁の方向へ移動開始した。
 どうやら向こうに行くにはあの壁の内部か上を歩いていくしかないようだ。

「キョウスケ、ミセットに連絡」
「了解」
『オトメだな、こっちは大丈夫。セツナと一緒に合流する』
「そのまま壁まで」
『分かった……それと、ビヨンドとの戦闘、お疲れ』
「あぁ」

 出来るだけ感情を出さないように返事をした。


 ツルギは隊員に散開命令を告げる。

「オトメは行ったな?よし、お前ら、コイツから離れろ。妙なことするなよ」

 カエデが承知していち早くその場から消えると、一人の隊員が質問した。

「ど、どうしてですか?ビヨンドは無力化出来ましたし、ユイトとかいう人間も姿を消しました。このまま白兵攻撃を続ければ……」
「お前らもオトメみたいに駄々をこねるな。下からライヴが来ている。あと二分で到着する。コイツに魔力攻撃でもしようものならせっかく動かないでくれているのに、また復活するかもしれない。今回は中身には会えない。相当にダメージは与えたはずだ。回収されてもそうすぐに修理されて出てこないだろう」
「で、ですが……」
「悔しいのは分かるが二人もやられた、もうここは先に進むか引くしかない……時間がない、さっさと散れ!」
「了解!」

 全員がビヨンドを中心にして散開した。キリカは心に釘を打たれたような感覚になった。スッキリしないモヤモヤとした焦燥感。厄介な敵に会った。今度敵対したら勝てるかも分からない。

「もう一度オトメ君に会わせる訳にはいかない」

 100メートル程進んだところでキリカも壁へ向かった。


ーーーーーー


「チッ……結構やられたな」

 ユイトが凹んだ車のボンネットから起き上がる。ここは駐車場。ビヨンドに吹き飛ばされて随分遠くまできた。

「魔力攻撃が通用しない……関係ないね。今度会ったら倫理に遅れをとるものか、俺がバラバラにしてやる」

 あと5分は笑っていた。


ーーーーーー


「一応やったけどさぁ……あいつらに手をかしたみたいになっちゃったよ?」
「ちゃったよ!」
「剣士は?」

 ビヨンドとECFの戦いを横で見ていたのは暗殺者のスイレンと二人の兄妹だった。

 兄がスイレンに答えた。

「爆発が強すぎて見えなかった」

 スイレンは呆れてしまった。

「おい」
「でも無事では済まないだろうね」
「……セツナは?」

 妹が頭をブンブン振った。

「分からない。待ち伏せするって言ってたけど……できたのかな?できたのかな?」

 スイレンが胡座をかいて目を閉じた。

「……壁に向かう。剣士はそっちに向かうはずだ」
「どうして?」
「どうしてー!」
「倫理の何とかが北東へ向かい始めた、あの剣士ならお祭りの方向へ向かうだろう?」
「分かった」
「分かった!」



ーーーーーー



「左からミセットとセツナです」
「……ん?いたいた」

 ミセットとセツナの姿が確認できた。元気に屋根を走っている安心した。僕はすぐに彼女達の方へ向かった。

「追われてないな?」
「当然」
「なめないで」

 威勢がいいことで。

「これから壁?に向かう。真っ向からライヴと戦闘になると思う……もしかしたらゴールドグリップも現れるかもしれない。つまり、強敵も出てくる。絶対。だから、セツナは来なくてもいいんだ」
「……え?」

 目を大きくして驚かれた。そりゃ急についてくるなって言ったら驚きもするか。

「えぇと、その剣士を一緒に倒せないのは残念だけど、いや本当ごめん。けど行かないといけないから」
「……なるほどね、あなた達にはあなた達の目的があるのは知ってる。それで?それが近いからって共闘を放棄するの?あなたそれでも男?最後まで付き合うからあなたも私の目的に最後まで!付き合いなさい……よ!」

 拳て肩を叩かれた。

「でも……」
「いいの、別に。それか追加戦力として無能ですか?」
「いいや、願ったりです」
「よろしい」

 ミセットが僕の肩を叩いた。

「ということだ。私も先ほど似たようなことを聞いた。その気持ちに甘えよう。対人戦なら瞬間移動の無いツルギ隊長に匹敵する」
「た、確かに」

 僕はそこまでされる理由を探しつつ、無いよなぁ、と思い、そのまま壁へ向かった。いや嬉しいけど。

「下が騒がしいな」
「あんたらがビヨンドに手こずるからでしょ」
「知ったような口をききますねぇ?」
「冗談」
「悪意のある冗談だ」
「……ごめんって」

 しゅんとしたミセットを初めて見た。なのそれ可愛いんですけど。ちょっともうちょっと見たいんですけど。

「分かれば……いいんですよ」

 後からセツナの視線を感じた。何だよと振り返ると、安全なルートが下にあると案内された。

「コッチからだと人も避けられるし、そろそろライヴが屋根の上探し出すと思って」
「気が利くな」
「まぁこのルートはよく使うの」

 あと100メートルで到着する、ここは慎重に越したことないだろう。

「ここを右」
「うわぁ」

 華やかなストリートとは一変、ごみ溜めのような場所だ。いや失礼、人が通れると錯覚していただけでした。
 幅が10メートルないくらいの道で上には天井を確認した。ここは街の廃墟か。

「ここは?」
「廃墟か何かに見えた?ここはスラムと変わらないよ。街から溢れたり住めなかった人達の最後の場所……かも。ライヴもここには滅多に来ないからいつも通る」

 人気もない。騒ぎを感知して避難でもしたのだろうか。

「止まって」

 先頭を行くセツナが手のひらを後へ向けた。

「はい」

 数秒制止した。

「三人います」

 キョウスケが先に感知した。

「……どこに?」

 僕も出来るだけ小声で聞いてみた。

「前方と後方、上です」

 同時に攻撃予測が表示される。ドクンと脈打った音が聞こえる。避けないと、殺される!

「横に避けろ!」

合図で三人とも回避行動をとる。同時に僕達が居た位置に六つの斬撃が当たる。透明だ。この感覚はセツナの時にも。

「ライヴか?」

 徐々に、斑に透明化が解除され姿が見えてきた。

「……どうして?どうして攻撃したの……スイレン!」

 そう、彼らがセツナのお仲間、暗殺者たちだ。

『スイレン』Enemy
相対レベル:39(回避補正:12)
・武器:アサシンナイフ×2
・防具:アサシンの服(対切断Lv.4,移動速度UPLv4)
・アクセサリー:スプリング付きの腕輪(ナイフ射出)
他スキャンを実行していません。

『ソウ』Enemy
相対レベル:-20(回避補正:-50)
・武器:アサシンナイフ×2
・防具:アサシンの服(対切断Lv.2,移動速度UPLv3)
・アクセサリー:コンバットナイフ(お守り)
他スキャンを実行していません。

『レイミー』Enemy
相対レベル:-33(回避補正:-61)
・武器:アサシンナイフ×2
・防具:アサシンの服(対切断Lv.2,移動速度UPLv3)
・アクセサリー:コンバットナイフ(お守り)
他スキャンを実行していません。
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