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68.郷愁の白い家
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「きたなー!!」
「……」
イデアルの城の門前、大戦斧を持つ黒髪の少女が道をふさいでいる。
言動通り、カエデは彼女に見つかったようだ、建物の上でステルス状態のカエデを30メートル先から見つめている。
完全に透明になれないこの機能は、直視されるとバレやすい。
しかし、大戦斧の少女は、すぐに感知した。
もしかしたらエイルのように、魔力のレーダーが強力なタイプかもしれない。
「……」
さて、バレちゃあしょうがないな、ここでくたばってもらおう。
「ん?よーく見なさい私!おねぇちゃんの妹マグナよ!……っと?何あれ?」
こちらも見つかることは想定内、後は喉の仕返しだ。
対物ライフルを構えて、バイポッドを展開、スコープに少女を捉える。
本来は人を撃つような銃ではないが、これほどの威力なら敵にスキが出来るだろう。
あの大戦斧に対してどうだろうか?
ステルス解除、視界の少女はしめしめといった表情、そう、そしてカエデはトリガーを引き、弾丸が標的に吸い込まれてくイメージを持つ。
エネルギーの塊を発射。
空気を巻き込み、貫いて。
コレが開戦の合図だ。
だが、オトメが聞いた音はこれではない。
「ふふーふ?それいぃっ!」
着弾したのは少女の大戦斧、ガードに成功したようだったが、着弾と同時に弾丸が炸裂した。
爆発物のそれに近い爆発、煙が上がり、カエデは自分の弾丸がそんなものではないと感じる。
オトメが聞いたのはほぼ同時に鳴ったこっちだった。
たまたまとしては感じが悪い、すぐに次の弾をコッキングレバーを引いて込める。
薬莢はストレージに消えていく。
さて、もう一発……
「いいねぇ、強烈過ぎる一撃だよ……さすがにスキルを使わないとヤバかった」
「……?」
カエデは耳が良い、少女の発言が聞こえる。
スキルだと?
それで銃弾を防いだというのか?
この近距離で?
確かにこの世界の盾ならそれ程の偉業を成し遂げることができるかもしれないが。
「さぁ、こいよ!喉ナシ女!お前はおねぇちゃんにすら会えずに、ここで死ぬ!……撤回する!」
「?」
「そっちは来ないだろうから、私から行くぜぃ!」
「……!」
マズイ、あの少女の魔力と運動能力を考えると、ここまで跳躍一つだろう。
移動するか?いや、移動速度は強化魔法に頼ってもすぐに感知される、しかし今はそれぐらいだろう。
その前に、腕試しだ。
銃をしまうことなく、カエデは銃口を向け続ける。
どうせならもう一発食らってもらおう。
「とーう!」
跳躍した。
先の戦闘を考えて、あの少女は浮遊魔術でも使えるのだろう、時速60キロくらいで突撃を図る。
建物といっても、無人そうな建物でも、民家のように見える。壊すのは少し忍びない。
そうも言ってられない。
容赦ない一撃に銃口をピタリ密着して動かす。
「もらい!」
「……s」
少女が大戦斧を振り上げたと同時に発砲、そのスコープには少女がほとんど映っていない。
近距離かつ高速移動中の相手に対する高度な偏差射撃、天性の目と感覚、訓練の賜物。
「来た!」
「……!」
見事に着弾したが、捕らえたのは先同様に大戦斧だった。
ありえない、どんな筋肉をしていたら振り上げた巨大な武器をすぐに動かせるのだろうか。
「自らの火力、味わうといいよ」
勢いのままカエデに突撃、カエデは回避せずに硬直していた。
弾丸は爆発、爆斬撃だ。
「……!」
「砕け!」
手ごたえを感じた少女は視界の悪さを魔力レーダーで補う。
目を閉じて周囲を観察する。
イメージするのは無色の世界、耳と感覚で掴む自分の世界、しっかりと頭に描かれる脳内世界、そこには周りの風景以外何も映らない。
煙が少し晴れて、目を開く。
「ふーん、まぁやるじゃん」
「(僕は生者じゃないぜ)」
無惨に黒焦げに真っ二つになっていたのはECFのロゴを刻んだ盾だった。
変わり身の術……そんなものがあったなと少女は思い出した。
「すると、アイツは何処に?私のおねぇちゃんが召喚した『魔具:インデックスリーパー』の爆発を食らって……生きているはずが?」
ほぃー、魔具か、およそ攻撃を受けると爆発するのか、なんて物騒な。武器名言わない方がいいですよ。慢心ダメ絶対。
弾丸が爆発しているように見えた、なら、触れたものを爆発物に変えると考えてもいい。
それは危険だが、使用者も危ないはずだ。
サブマシンガンを使って一気に弾丸を叩き込んでもいいかもしれない。
「……ふー」
瞬時に盾を前にタクティカルストレージから引き出し、爆発の中から強化魔法で少女から離れた。
あの威力、真面目に当たれば……致命的一撃だろう。
さて、どうしたものか。
前回の戦闘を思い出す、何か月も前のことだが、記憶は鮮明だ。
超人的な身体能力、銃弾がほとんど身体に命中しない。
あの武器をどうにかすればいいだろうか。
前回はあんな能力を見せなかったのに。
なら……?
「……!」
「そこか!」
少女の背後に四角い物体を投げつけた。
そのおかげでカエデが建物の下側にいることに気づく、それと同時にスイッチを入れる。
カエデが投げたのは、手動で爆発させることができる爆弾。
威力は一軒家が原型が無くなるくらい。
「なに!防げ……」
耳が痛くなる程の爆発、盾を出して衝撃を和らげた。
体の中身が出るほどの衝撃だった。身体強化魔術必須だ。
「……」
ステルス起動、距離を取って地面に匍匐、もう一度対物ライフルを展開。
随分と派手に爆発かました。
あの白い人間が出てこないことを願う。
「ったー、効くな……前より動き良いじゃん」
あの爆撃を受けて生きている、常人とは思えない防御力、予想はしていたが、こちらの攻撃力にも限界がある。
直接あの黒髪頭に銃口を当てて脳みそをぶちまけてやるのがいいだろうか。
「まーた距離取って!インファイトしようぜ!」
民家は形を無くして、その炎と瓦礫からノロっと登場大戦斧、道路一直線、絶好の的、米粒のようだ。
一発、いや、三発入れる!
この瞬間の為の今までだ、第一射に全てがかかる。
近づく少女、それを狙うカエデ、一発。
狙いは右腕、武器ごとちぎる算段。
硝煙の奥でヒット、響く衝撃音がしたのはやっぱり大戦斧、爆発を起こしつつさらに接近。カエデは視界を確かめる。確実に武器に弾丸がめり込んでいる。
こちらの火力は意外と高かった。防御時の衝撃、余裕ではないようだ。
焦りの表情の次、既にコッキングは完了している。
間髪入れずに二発目、こちらの体にも強い衝撃が伝わった。
これは向こうも学習した、光を見て回避される。
さて、このカエデが弾丸を外すだろうか?
ツルギさんに教わったことの一つ『刀の一振りは自らの血液を代償に、弾丸の一発は四肢の一つを代償に……だ』何を言っているか全くわからなかったが、つまりは、相手にした攻撃は同等の攻撃が帰ってくるというリスクがあるよ、という意味だと思っている。
まぁそれはいいとして、この外した一発、これは陽動の一発だ。
回避後は一瞬の硬直がある、そこにもう一発。
「なにっ速っ!」
着弾。
「……」
ーーーーーー
僕があの爆音を聞いて、城の方向に走って数分、こうもあっさり門に着いた。
アバンドグローリーでは門番がいたが……どうして破壊されているんだ?
門の前側の地面がえぐれているが、人一人分から後ろが無傷だ。
おそらく僕が聞いたのはここを破壊した音に違いない。
「というか、この門、入っていいのかな?誰もいないし……いいよね?」
「だめー!」
「うお!」
僕の前に落下してくる黒髪、風圧を感じる。
コイツ知っている、そうだ、マグナだっけ?
「はぁはぁ、ここから先は……ダメ!」
「どうしてぇ?キリカを連れてったのはお前らだろ?故に僕は強行するけど」
一気に鼓動が速くなる、戦闘態勢に体を切り替えて、エフェクトシールドを構える。
「チィ……めんどくさい奴らめ……」
僕は期待する、あの大戦斧のマグマをここまで疲弊させたのは間違いなくカエデだろう、だから。
「僕を通せ!ここは任せるぞ!」
「ぬううー」
予想が正しいなら、カエデは僕の後方、きっとここが良く見えるポイントからあのデカい銃で狙っているはず。
僕は腕を上げて、ブンッと振り下ろし、しゃがむ。
「……フッ」
呼吸が聞こえる。
「またか!」
マグナは僕がしゃがんだほぼ同時に大戦斧で防御、前が見えない関係を利用して前に駆ける。
「あぁ!お前!」
「じゃあな、門番がんばれ」
そして弾丸は斧に着弾し、爆発した。
爆音が続き、周囲は爆弾魔がいるような風景だった。
「逃がすかっ……あああぁもう!」
城内に向かおうとするマグナをカエデのサブマシンが制す。
「なんだこれは……いいかげんにしろ!小賢しい!」
「……」
カエデはすでに門前に来ていた。
両手に小型マシンガン、こちらもボロボロになっている、大戦斧を直接受けてはいないが、爆発の威力で疲弊していた。
こちらも接近戦がんばろう、ここでオトメの時間を稼ぐ、あぁ勿論ここで殺してやるつもりだが。
さーて、どちらの四肢が初めに千切れるか?
「接近戦……いいねぇ、やっぱりそうでないと……銃使いめ愚行極まったね!」
「……」
愚行か、直接味わえ火薬の味。
ーーーーーー
カエデのおかげで城内に潜入出来た。
白と黒で構成される内装、まるで脱色だ。
カチカチと時計の音と、サラサラと砂の音が聞こえる。
ここから確認できるドアは3か所、中央と左右、また、上への階段と奥への通路、他にも部屋はあるだろう。
キリカーどこだー。
警備の人間もいない……まず人の気配がない、ここにキリカがいるのか心配になってきた。
「カエデが何分持つかわからない、全部の部屋を確認している余裕はない……けど、どこだ?」
一歩目を踏み出した時、中央の扉が勝手に開く。
ガチャバダン!そんな感じで、こちらへどうぞーっと誘う。
さらに奥に階段が見える、その上に何か気配がして、足を前に動かした。
「キリカ……か?」
何か憎悪に似た焦燥を胸で感じ、階段の上にあった扉の前に立つ。
あれ?変な汗が……腕で拭う。
右手に握られた剣を見て、この先に居る人間がキリカであることを願う。
魔力の乏しい僕にレーダー欲しい。
「来たか」
「っ!」
向こうで聞こえた声に恐怖した同時に前の扉が開き、玉座を観た。
まっすぐな白い絨毯の先、ただ一人玉座に座る白き人、それ以外の人間は僕だけだった。
ここまで広いと二人では余る空間だ。
嗚呼そうだな、あれはキリカじゃない。
落胆と緊張、戦闘は避けられないと分かる。
「マグナは死んだか?……冗談だ、我が妹が貴様のようなザコ人間に負けるわけがない、外で誰かが足止めでもしてるのか……まぁいい、で、貴様は何のようだ?どうやって入ってきた?」
「訊くか?この包帯眼帯に見覚えが無いとは言わせない。不法侵入すいません、その首……いや、その片腕貰い受けるとする」
「ほぉ、芸当を見せろ、我が十剣の前で踊ってみせろピエロ」
とりあえず切先を向けてみる。実際恐怖で漏れそう。でも膝は準備万端と言っている。
「黙れ、キリカをどうした?」
「……残念だが、もう貴様らに下るとは思えん」
「は?」
口を歪めた後、周囲に人ひとり程の白い大剣が十本出現した。
これが先程の武器召喚か?
「彼女の言葉を借りよう、死晒せ!」
「……」
イデアルの城の門前、大戦斧を持つ黒髪の少女が道をふさいでいる。
言動通り、カエデは彼女に見つかったようだ、建物の上でステルス状態のカエデを30メートル先から見つめている。
完全に透明になれないこの機能は、直視されるとバレやすい。
しかし、大戦斧の少女は、すぐに感知した。
もしかしたらエイルのように、魔力のレーダーが強力なタイプかもしれない。
「……」
さて、バレちゃあしょうがないな、ここでくたばってもらおう。
「ん?よーく見なさい私!おねぇちゃんの妹マグナよ!……っと?何あれ?」
こちらも見つかることは想定内、後は喉の仕返しだ。
対物ライフルを構えて、バイポッドを展開、スコープに少女を捉える。
本来は人を撃つような銃ではないが、これほどの威力なら敵にスキが出来るだろう。
あの大戦斧に対してどうだろうか?
ステルス解除、視界の少女はしめしめといった表情、そう、そしてカエデはトリガーを引き、弾丸が標的に吸い込まれてくイメージを持つ。
エネルギーの塊を発射。
空気を巻き込み、貫いて。
コレが開戦の合図だ。
だが、オトメが聞いた音はこれではない。
「ふふーふ?それいぃっ!」
着弾したのは少女の大戦斧、ガードに成功したようだったが、着弾と同時に弾丸が炸裂した。
爆発物のそれに近い爆発、煙が上がり、カエデは自分の弾丸がそんなものではないと感じる。
オトメが聞いたのはほぼ同時に鳴ったこっちだった。
たまたまとしては感じが悪い、すぐに次の弾をコッキングレバーを引いて込める。
薬莢はストレージに消えていく。
さて、もう一発……
「いいねぇ、強烈過ぎる一撃だよ……さすがにスキルを使わないとヤバかった」
「……?」
カエデは耳が良い、少女の発言が聞こえる。
スキルだと?
それで銃弾を防いだというのか?
この近距離で?
確かにこの世界の盾ならそれ程の偉業を成し遂げることができるかもしれないが。
「さぁ、こいよ!喉ナシ女!お前はおねぇちゃんにすら会えずに、ここで死ぬ!……撤回する!」
「?」
「そっちは来ないだろうから、私から行くぜぃ!」
「……!」
マズイ、あの少女の魔力と運動能力を考えると、ここまで跳躍一つだろう。
移動するか?いや、移動速度は強化魔法に頼ってもすぐに感知される、しかし今はそれぐらいだろう。
その前に、腕試しだ。
銃をしまうことなく、カエデは銃口を向け続ける。
どうせならもう一発食らってもらおう。
「とーう!」
跳躍した。
先の戦闘を考えて、あの少女は浮遊魔術でも使えるのだろう、時速60キロくらいで突撃を図る。
建物といっても、無人そうな建物でも、民家のように見える。壊すのは少し忍びない。
そうも言ってられない。
容赦ない一撃に銃口をピタリ密着して動かす。
「もらい!」
「……s」
少女が大戦斧を振り上げたと同時に発砲、そのスコープには少女がほとんど映っていない。
近距離かつ高速移動中の相手に対する高度な偏差射撃、天性の目と感覚、訓練の賜物。
「来た!」
「……!」
見事に着弾したが、捕らえたのは先同様に大戦斧だった。
ありえない、どんな筋肉をしていたら振り上げた巨大な武器をすぐに動かせるのだろうか。
「自らの火力、味わうといいよ」
勢いのままカエデに突撃、カエデは回避せずに硬直していた。
弾丸は爆発、爆斬撃だ。
「……!」
「砕け!」
手ごたえを感じた少女は視界の悪さを魔力レーダーで補う。
目を閉じて周囲を観察する。
イメージするのは無色の世界、耳と感覚で掴む自分の世界、しっかりと頭に描かれる脳内世界、そこには周りの風景以外何も映らない。
煙が少し晴れて、目を開く。
「ふーん、まぁやるじゃん」
「(僕は生者じゃないぜ)」
無惨に黒焦げに真っ二つになっていたのはECFのロゴを刻んだ盾だった。
変わり身の術……そんなものがあったなと少女は思い出した。
「すると、アイツは何処に?私のおねぇちゃんが召喚した『魔具:インデックスリーパー』の爆発を食らって……生きているはずが?」
ほぃー、魔具か、およそ攻撃を受けると爆発するのか、なんて物騒な。武器名言わない方がいいですよ。慢心ダメ絶対。
弾丸が爆発しているように見えた、なら、触れたものを爆発物に変えると考えてもいい。
それは危険だが、使用者も危ないはずだ。
サブマシンガンを使って一気に弾丸を叩き込んでもいいかもしれない。
「……ふー」
瞬時に盾を前にタクティカルストレージから引き出し、爆発の中から強化魔法で少女から離れた。
あの威力、真面目に当たれば……致命的一撃だろう。
さて、どうしたものか。
前回の戦闘を思い出す、何か月も前のことだが、記憶は鮮明だ。
超人的な身体能力、銃弾がほとんど身体に命中しない。
あの武器をどうにかすればいいだろうか。
前回はあんな能力を見せなかったのに。
なら……?
「……!」
「そこか!」
少女の背後に四角い物体を投げつけた。
そのおかげでカエデが建物の下側にいることに気づく、それと同時にスイッチを入れる。
カエデが投げたのは、手動で爆発させることができる爆弾。
威力は一軒家が原型が無くなるくらい。
「なに!防げ……」
耳が痛くなる程の爆発、盾を出して衝撃を和らげた。
体の中身が出るほどの衝撃だった。身体強化魔術必須だ。
「……」
ステルス起動、距離を取って地面に匍匐、もう一度対物ライフルを展開。
随分と派手に爆発かました。
あの白い人間が出てこないことを願う。
「ったー、効くな……前より動き良いじゃん」
あの爆撃を受けて生きている、常人とは思えない防御力、予想はしていたが、こちらの攻撃力にも限界がある。
直接あの黒髪頭に銃口を当てて脳みそをぶちまけてやるのがいいだろうか。
「まーた距離取って!インファイトしようぜ!」
民家は形を無くして、その炎と瓦礫からノロっと登場大戦斧、道路一直線、絶好の的、米粒のようだ。
一発、いや、三発入れる!
この瞬間の為の今までだ、第一射に全てがかかる。
近づく少女、それを狙うカエデ、一発。
狙いは右腕、武器ごとちぎる算段。
硝煙の奥でヒット、響く衝撃音がしたのはやっぱり大戦斧、爆発を起こしつつさらに接近。カエデは視界を確かめる。確実に武器に弾丸がめり込んでいる。
こちらの火力は意外と高かった。防御時の衝撃、余裕ではないようだ。
焦りの表情の次、既にコッキングは完了している。
間髪入れずに二発目、こちらの体にも強い衝撃が伝わった。
これは向こうも学習した、光を見て回避される。
さて、このカエデが弾丸を外すだろうか?
ツルギさんに教わったことの一つ『刀の一振りは自らの血液を代償に、弾丸の一発は四肢の一つを代償に……だ』何を言っているか全くわからなかったが、つまりは、相手にした攻撃は同等の攻撃が帰ってくるというリスクがあるよ、という意味だと思っている。
まぁそれはいいとして、この外した一発、これは陽動の一発だ。
回避後は一瞬の硬直がある、そこにもう一発。
「なにっ速っ!」
着弾。
「……」
ーーーーーー
僕があの爆音を聞いて、城の方向に走って数分、こうもあっさり門に着いた。
アバンドグローリーでは門番がいたが……どうして破壊されているんだ?
門の前側の地面がえぐれているが、人一人分から後ろが無傷だ。
おそらく僕が聞いたのはここを破壊した音に違いない。
「というか、この門、入っていいのかな?誰もいないし……いいよね?」
「だめー!」
「うお!」
僕の前に落下してくる黒髪、風圧を感じる。
コイツ知っている、そうだ、マグナだっけ?
「はぁはぁ、ここから先は……ダメ!」
「どうしてぇ?キリカを連れてったのはお前らだろ?故に僕は強行するけど」
一気に鼓動が速くなる、戦闘態勢に体を切り替えて、エフェクトシールドを構える。
「チィ……めんどくさい奴らめ……」
僕は期待する、あの大戦斧のマグマをここまで疲弊させたのは間違いなくカエデだろう、だから。
「僕を通せ!ここは任せるぞ!」
「ぬううー」
予想が正しいなら、カエデは僕の後方、きっとここが良く見えるポイントからあのデカい銃で狙っているはず。
僕は腕を上げて、ブンッと振り下ろし、しゃがむ。
「……フッ」
呼吸が聞こえる。
「またか!」
マグナは僕がしゃがんだほぼ同時に大戦斧で防御、前が見えない関係を利用して前に駆ける。
「あぁ!お前!」
「じゃあな、門番がんばれ」
そして弾丸は斧に着弾し、爆発した。
爆音が続き、周囲は爆弾魔がいるような風景だった。
「逃がすかっ……あああぁもう!」
城内に向かおうとするマグナをカエデのサブマシンが制す。
「なんだこれは……いいかげんにしろ!小賢しい!」
「……」
カエデはすでに門前に来ていた。
両手に小型マシンガン、こちらもボロボロになっている、大戦斧を直接受けてはいないが、爆発の威力で疲弊していた。
こちらも接近戦がんばろう、ここでオトメの時間を稼ぐ、あぁ勿論ここで殺してやるつもりだが。
さーて、どちらの四肢が初めに千切れるか?
「接近戦……いいねぇ、やっぱりそうでないと……銃使いめ愚行極まったね!」
「……」
愚行か、直接味わえ火薬の味。
ーーーーーー
カエデのおかげで城内に潜入出来た。
白と黒で構成される内装、まるで脱色だ。
カチカチと時計の音と、サラサラと砂の音が聞こえる。
ここから確認できるドアは3か所、中央と左右、また、上への階段と奥への通路、他にも部屋はあるだろう。
キリカーどこだー。
警備の人間もいない……まず人の気配がない、ここにキリカがいるのか心配になってきた。
「カエデが何分持つかわからない、全部の部屋を確認している余裕はない……けど、どこだ?」
一歩目を踏み出した時、中央の扉が勝手に開く。
ガチャバダン!そんな感じで、こちらへどうぞーっと誘う。
さらに奥に階段が見える、その上に何か気配がして、足を前に動かした。
「キリカ……か?」
何か憎悪に似た焦燥を胸で感じ、階段の上にあった扉の前に立つ。
あれ?変な汗が……腕で拭う。
右手に握られた剣を見て、この先に居る人間がキリカであることを願う。
魔力の乏しい僕にレーダー欲しい。
「来たか」
「っ!」
向こうで聞こえた声に恐怖した同時に前の扉が開き、玉座を観た。
まっすぐな白い絨毯の先、ただ一人玉座に座る白き人、それ以外の人間は僕だけだった。
ここまで広いと二人では余る空間だ。
嗚呼そうだな、あれはキリカじゃない。
落胆と緊張、戦闘は避けられないと分かる。
「マグナは死んだか?……冗談だ、我が妹が貴様のようなザコ人間に負けるわけがない、外で誰かが足止めでもしてるのか……まぁいい、で、貴様は何のようだ?どうやって入ってきた?」
「訊くか?この包帯眼帯に見覚えが無いとは言わせない。不法侵入すいません、その首……いや、その片腕貰い受けるとする」
「ほぉ、芸当を見せろ、我が十剣の前で踊ってみせろピエロ」
とりあえず切先を向けてみる。実際恐怖で漏れそう。でも膝は準備万端と言っている。
「黙れ、キリカをどうした?」
「……残念だが、もう貴様らに下るとは思えん」
「は?」
口を歪めた後、周囲に人ひとり程の白い大剣が十本出現した。
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「彼女の言葉を借りよう、死晒せ!」
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