仮想世界β!!

音音てすぃ

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62.年上の武器

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 どういうわけか、この村は人間に優しくしなければならない掟があるらしい。
 マニーが宿を手配してくれ、四人の雨風を凌げる場所が手に入った。
 一部屋に四人だ、これなら誰も変な事はできないな……うん。ってなにも考えてないし!
 そう、注意するキョウスケもいないんだ。少し寂しい。

「お疲れ……さまです」
「おう……飛んでたな……エイル」

 宿を見た後、ベンチに横になっているエイルを見かけた。
 隣にはカエデが見守っている。

「すまんな、二人を置いて宿を見に行ったんだ。結構いいところだったぞ」
「そう……どすか……そーれはケッコウ……です」
「どすかって……ですかだろ。かなり疲弊してますね」

 エイルはこちらに視線を向けられない程に疲弊している。
 目に光がない。
 絶叫マシーンとかいう言葉が頭をよぎった。

「……」
「そうそう、エイルを見守ってくれてありがとうカエ……ううん!」

 名前を言いそうになったところでカエデがこちらを睨みつける。
 それを一瞬感知して誤魔化した。

「……」
「言ってないからね!まぁそれはそうとして、お前の名前、偽名でもいいから決めようぜ」
「そうえすえー、ああえを言いたいでふー」
「エイル!コトバがおかしいぞ!」
「……!」

 カエデが氷の入った袋を用意して首の後ろに入れる。
 それ、あってるの?

「で、マニーたちの前でカエ、まで言ってるから……睨むな!で、カエでいいんじゃないかと」
「……うん」

 悪くないな、かなりきわどいが、と言いたいようだ。
 これからそうしよう。
 ははは、そんなんでいいんだこの女性。
 何なら最初から偽名を教えてくれればいいのに、あれ、カエデって結構おバカ?言ったら蹴られそう。

「……?」
「どうしたカエ?」

 何かその名前を呼ぶの恥ずかしいな。
 カエデは僕の横を見ていた。
 あれ、そういえばキリカがいない。

「カエ……さん、僕はキリカを探しに行く、一応集合場所を宿にしておく。行けばどの部屋かわかるから」

 カエデは頷いてエイルを見守っていた。
 その光景は母親と娘の姿に見えた。
 野外戦闘服と魔導服、このコントラストは予想できないだろう。

ーーーーーー

「へぇ、武器強化してくれるんだこのお店。腕凄そう」
「安くしとくし、魔具の強化もできるぜ」
「おぉーいキリカー?」

 それなりに亜人の多いところを歩いていると、キリカが見えた。
 やっぱりここまで亜人が多いと人間が目立つな。
 ううん、亜人ってまだ怖いな。
 スキャンしてみたい。

「あ、オトメ君じゃん、来てきて武器屋だぞー」
「マジか!ここにもあるのか!当たり前か」
「よお兄ちゃん、見てってくれや!」

 キリカと話していた店主は僕ら人間より身長が低くずんぐりとした体形の亜人、いわゆるドワーフという生き物だろうか、頭にゴーグル、ハンマーを持っている。

「おう、どんな武器があるんだ?」

 胸の高鳴りを感じる。ジャンプしたい。

「剣から槍、戦斧とか大体あるぜ」
「ほぉ」

 僕はメインが片手剣だから剣を見たいが、槍や斧もいいな。

「タグが……『大剣:エルテミックス』これなら僕でも扱えそうな重さと───大きさだな(ブンブンッ)」
「オトメ君それもいいけどさ、ここの親方のガットさんね、魔具強化が出来るみたいなんだよ」
「おお、得意分野だぜ」

 僕はそれを聞いて、エフェクトシールドを渡してみた。

「僕が持ってるのはそれだ。多少重いが防御が安心できるから好きな剣だ。ガラクタらしいが……」
「……いいや?これは上等武器だぜ。すこし劣化が進んでいるが……そもそも神格の武器だぜこれ。どこでこれを?」
「神格?うそだろ?」

 こんなボロ剣が?有り得ない。
 神様?創作の話ですよね?

「人からいらないと貰ったものなんだ、倉庫に眠っていたらしいし」
「そんなことが……確かに嘗ての力は失っているようだな、100年くらい前ならもっと強力な武器だっただろう」
「ははは……ってそんな前からあるの!?」

 いったいライラ先生は何歳なんだ!?
 というかそんな貴重な武器をどうして僕にくれたんだ?

「真の力の解放は無理かもしれないが、強化してやろうか?具体的には魔力反射結界の範囲が広くなるだろう、多少任意の位置に貼れるようになるかもしれん」
「おお!やってくれるか!僕はオトメ、隣はキリカ、店主はガットさんでいいのか?」
「ガットだ、よろしくなオトメ。素材だが、魔石が多少必要だな、店に今ねぇんだ、持ってるか?」
「……あっちゃ、すません前に使ってしまって」

 そうだ、エリアル・マジックの合成で使ってしまって今は無い。
 どこで手に入るのだろうか?

「そうか……村でも買えば高いんだよな、取ってきた方が早い」
「どこで取れるの?」

 キリカは奥の刀を眺めつつ、こちらの話はしっかり耳に入れている。

「どこでというほど確定した場所はないんだが、強いモンスターが大体落とすな。今なら熊とかかなぁ?」
「くま?」
「うちの奥さんも熊肉が好きなんだ、良ければ狩ってきてくれ」
「どこにでるんだ?くま」
「村から北に行けばたまーに見る。この村には結界が貼ってあるから外からの侵入はまず無理だから安心して暮らしているが、それを破って入ってくることがあるくらいだ、危険キケンだなぁ」

 魔石をドロップする熊とはどれ程なのだろうか、嘗て倒したイノシシのように巨大だったらいやだな。

 当分は旅の疲れを癒すためにこの村に滞在する。
 明日は四人で熊を討伐に行こう、そしてお礼に熊肉を振舞おう。

 そして必ず再生水を見つける。


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