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43.火傷
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思考は追いつかない。
元女だとエイルは言った。
一緒に風呂に入っているのだから、疑いようのない事実であるのはたしかである。
ウソを言っているようには見えない、ただ、この世に性転換が可能なのだろうか?
男が女にならまだしも……体の機能的にはどうなのだろうか?
ライラ先生が「同じ気持ちを共有するには同じ境遇、同じ体験……そんなものを共有するしかないのさ」と言っている姿を想像した。そう思います。やっぱり同じ経験した人しかわからないものってありますよね。でも僕は女になったことないです。
「信じられないですよね?いきなり……」
「────信じるよ」
次第に声が小さくなるエイルに、キリカはまっすぐな視線を送っていた。
台詞にエイルは打撃を受けたように目を開いていた。
「オトメ君は?」
僕の視界にあるエイルの頭に隠れたキリカの頭がひょっこりと覗く。
「……信じるよ(なわけねーだろ)、ライラ先生に任されているからな(まだ無理だ……)」
「ほら、エイル……君?ええい!エイルちゃんでいいや!私たちもう仲間だからさ、信用しあっていこうよ!」
「なんだか噓くさい台詞だなキリカ」
「そ、そう聞こえる?」
どうやらキリカは全面的にエイルを信用していきたいことをアピールしているようだ。
ただ、その持ち前の不器用さが発動し、上手くエイルに伝わっているかはわからない。
「あの、聞いてくれてありがとうございます。なんだか気持ちが軽くなりました」
「そうだよ、気になることとか、なんでもいい、僕らに言えよ?」
「……はい!」
女から男になった少女エイル、彼(彼女)のバックグラウンドはどうなっているのか、気になってしまった。
「訊いていいかわからないんだけど、どうしてエイルはその体になったんだ?」
「あ、私も気になる」
今のエイルは口が柔らかい、きっと話してくれる。
こういう時は心の傷に触れる行為であることが多い。
だけど、ここにはPEの僕、シロカミのキリカと、ワケアリ二人がいる。
だから……仲良くなれる。
「今から……二年前くらいです」
回想データ『エイルの記憶』容量不明。再生。
ーーーーーー
ザンゲノヤマの出身であるエイル。
まだ彼女と呼ばれていたころ、当時12歳だった彼女は今日も魔術の勉強をするため、「サモンウィリット家」の図書館に向かっていた。
魔術の扱いがお上手とそれなりに有名なサモンウィリット家、その養子として迎えられたエイルは物心がついたころには親がいなかった。
しかし、天性の先天的エーテル場と魔力をもっているため、後継ぎ候補として噂になるほどだった。
家族からも十分以上の愛をもらいながら育ち、何不自由はなかった。
ただ一つあるとすれば、幼く見られることが多かったくらいだ。
図書館には一般人が読むには許可が必要な魔術書が多く貯蔵されている。
魔術は通常炎より危険な取り扱いの難しいものだ。
だから読むだけでも才能と努力、勉強が必要なのだ。
エイルは家族の影響と持ち前の才能で魔術の魅力に取りつかれていた。
暇さえ見つければ図書館に籠り、知識を蓄えていた。
それを続けること一年、コツコツと魔術師としての教養を積んでいた。
そんな勉強詰めの日常を送ってきたある日。
エイルが図書館で本を読んでいた時である。
風の起きない蝋燭の炎が揺れた。
無意識に視線が揺れる炎を見る。
胸騒ぎというものを人生で初めて経験した。
持ち前の魔力で図書館外の状況を偵察してみる。
研ぎ澄まされた感覚は、全てを感じ取り、悪寒が走る。
呼吸が乱れて、胸が痛くなった。
こうしてはいられない……家族が危ない。そう感じたエイルは詠唱用の魔術書を握りしめて外へ走る。
ドアを叩き開けた時には、いつも穏やかな風景は焼けていた。
その方向は「サモンウィリット家」の方角、鮮明な予測、この火災は自分の家なのではないか。
「お父さん……お母さん!」
涙より焦燥、吐き気と震え、寒気、視界が悪くなる。
精神状態はエーテル場を攪乱し始めた。
家の前にたどり着いたエイルは膝から崩れ落ちた。
目の前の炎は手加減なく家を焼き、そこそこ有名な名のある家は燃えていた。
思考は止まっていた。家族は無事なのか?もしまだ中にいるなら、助けに……いや、自分が死ぬかもしれない。
そんなことを考えていると、灰が体を蝕み始めた。
咳、目がやられる。
この場から離れなければ……その前に街の皆に伝えないと……
エイルは震える手でメモ用紙を取り出して状況を伝える文を書こうとしたとき、後ろに気配を感じた。
振り返る。
「あれ、サモンウィリットじゃあねぇな」
黒いマントを身に着けた深い赤髪の男、口元は下品に汚れている。
見た目の若いその男は、腕全体に火傷を負い、エイルに近づく。
「血は高級品じゃないが……いい魔力だなぁ」
「……っ!」
エイルは恐怖で動くことはできない。
直感で男が味方でないことは分かった。
身を守ろうにも上手く魔術が使えない。焦っている。
震えるエイルの髪を握り軽々と持った。
痛みで声が漏れる。
顔を近づけた男は口元を歪ませて笑った。
その歯と歯の間は鮮血に満ちていた。
「お前も喰ってやろうか?」
生命の恐怖はエイルの体を動かす。
しかし、暴れる少女を男は力で離さない。
そのもがく姿を楽しそうに男は眺めている。
「お前みたいなのは死ぬまでが面白い、味も悪くないが……何か魔力くせぇ。そうだな……せっかくだ、新しい術を使ってみるか!」
言葉はエイルの耳にしっかり届いている。
自分にかけられる魔術の種類は?
痛い?
怖い?
辛い?
そんなことを考えると、自分でも不思議なくらいの奇妙な叫びを揚げていた。
「よく鳴く啼く泣くねぇ!殺すより楽しいかもぉ!」
「────────────────────」
救いを求める嘆き。
近距離で聞いたら鼓膜を裂き、自分まで悲愴感に包まれそうなシャウト。
少女を痛めつけ、火傷を負った手から紫のオーラが漏れ始める。
術は一瞬だった。
体全身の神経を触られた感触、今まで感じたことのない痛み。
その場から5メートルは跳躍し、10分はもがいていた。
体はだるさが生まれ、変形を始める。
無気力感が体を支配し、視界が悪くなってくる。
ただ、耳は稼働していた。
「─────とんでもない魔力だ……これはありがたく頂いていくぜ、じゃあな!────よかったーサモンウィリット襲って、極上の美味さだった……」
男は口を腕で拭って、その場を去って行った。
そう、どれくらいの時間が経過したのか、エイルの意識が戻ったころには人間の背中の上だった。
先の恐怖を思い出し、暴れ始めた。当然誰かの背中から落ちる。
「起きたな……私はライラという。君は?森で倒れていたから連れて行こうと思ったのだが……」
「うわぁ!」
エイルは距離を取る。
不思議と痛みは引いて、筋力的に自信がついていることを実感する。
そして、体の魔力総量が少なくなっていることが感覚でわかる。
「まぁそう震えるのは無理もないが……何があった?是非とも私に聞かせてくれないか?大丈夫、私は弱い者いじめはしないからね」
「はぁ……はぁ……ほんと?ほんとですか?もう痛いのは嫌」
「大丈夫だ、もしもの時は最強の鎮痛剤を用意している……死ぬかもしれないが」
これがエイルの過去だ。
性別が反転していることはこの後に明らかになる。
あの男がエイルの性別と魔力を奪ったのだった。
後日、エイルはライラの助手に着くことになる。
それから、あの男に家族殺しと自分の性別を奪った事の復讐を誓った。
私の家族は、間違いなく殺されたとライラ先生から聞いた。
魔術知識と以前から持つ才能はライラの助手としては最高だった。
以前程ではないが、魔力も蓄えることができるようになり、新な魔術も研究した。
「空間破裂魔法:カシロ・ライト」
範囲を指定して、気圧をゼロにし、切断属性で切り刻む。
ヒット直後に傷口から魔力汚染が進行し、激痛を伴う。
指定した魔力の範囲生存時間は2秒、消費魔力はエイルで12%である。
間違いなく人に放つには残虐すぎる魔術だ。
ある日のライラとエイルはベンチでの会話。
「エイル、ついに君の言う男を痛めつける魔術が完成したと聞いたが?」
「はい、完成しました。これでアイツに復讐できますし、危険な森を抜けてザンゲノヤマに帰ることができます」
「そうかい……そうだな……エイルは旅に興味はないかい?」
「旅ですか?」
正直興味はは1%くらい、復讐しか考えていない私には響かない言葉。
「大切な家族を殺された痛みはそれなりにはわかるしー、ぶっ殺してやりたい気持ちのわかる気がするがー、君はまだ若いからな、世界を知るって名目でもいいから、旅をしてみないか?きっとたのしいぞ?」
「……機会があれば……はい」
「ふふふ、そのうち来る気がするなぁ。私も昔は旅をしたが、楽しいぞ」
それから、私は魔術以外にも外の世界に興味を持つようになった。
そして、外から来たという二人がこの街に訪れて、私は夢にまで見た旅に出ることになる。
見たい物は決めている……ミルザンド。
死者が復活するなら、ギルド区、家族を探しに行きたかった。
ライラ先生の故郷、物語でしか聞いたことのない伝説の街ミルザンドに行ってみたい。
ーーーーーー
再生完了、ライブラリに保存。
「……」
僕はその話を黙って聞いていた。
もっと話口調で聞きました。
「ちゃんと話してくれてありがとう、相当な勇気の持ち主だ。なぁエイル、これは僕からの提案なんだけど……」
「なんでしょう?」
僕はエイルを信用すると決めた。
体から湧き上がる、コイツをどうにかしてあげたい、という感情が僕を動かす。
口を開く、半分は出まかせだけど。
「性別、僕らと一緒に奪い返そう!」
元女だとエイルは言った。
一緒に風呂に入っているのだから、疑いようのない事実であるのはたしかである。
ウソを言っているようには見えない、ただ、この世に性転換が可能なのだろうか?
男が女にならまだしも……体の機能的にはどうなのだろうか?
ライラ先生が「同じ気持ちを共有するには同じ境遇、同じ体験……そんなものを共有するしかないのさ」と言っている姿を想像した。そう思います。やっぱり同じ経験した人しかわからないものってありますよね。でも僕は女になったことないです。
「信じられないですよね?いきなり……」
「────信じるよ」
次第に声が小さくなるエイルに、キリカはまっすぐな視線を送っていた。
台詞にエイルは打撃を受けたように目を開いていた。
「オトメ君は?」
僕の視界にあるエイルの頭に隠れたキリカの頭がひょっこりと覗く。
「……信じるよ(なわけねーだろ)、ライラ先生に任されているからな(まだ無理だ……)」
「ほら、エイル……君?ええい!エイルちゃんでいいや!私たちもう仲間だからさ、信用しあっていこうよ!」
「なんだか噓くさい台詞だなキリカ」
「そ、そう聞こえる?」
どうやらキリカは全面的にエイルを信用していきたいことをアピールしているようだ。
ただ、その持ち前の不器用さが発動し、上手くエイルに伝わっているかはわからない。
「あの、聞いてくれてありがとうございます。なんだか気持ちが軽くなりました」
「そうだよ、気になることとか、なんでもいい、僕らに言えよ?」
「……はい!」
女から男になった少女エイル、彼(彼女)のバックグラウンドはどうなっているのか、気になってしまった。
「訊いていいかわからないんだけど、どうしてエイルはその体になったんだ?」
「あ、私も気になる」
今のエイルは口が柔らかい、きっと話してくれる。
こういう時は心の傷に触れる行為であることが多い。
だけど、ここにはPEの僕、シロカミのキリカと、ワケアリ二人がいる。
だから……仲良くなれる。
「今から……二年前くらいです」
回想データ『エイルの記憶』容量不明。再生。
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ザンゲノヤマの出身であるエイル。
まだ彼女と呼ばれていたころ、当時12歳だった彼女は今日も魔術の勉強をするため、「サモンウィリット家」の図書館に向かっていた。
魔術の扱いがお上手とそれなりに有名なサモンウィリット家、その養子として迎えられたエイルは物心がついたころには親がいなかった。
しかし、天性の先天的エーテル場と魔力をもっているため、後継ぎ候補として噂になるほどだった。
家族からも十分以上の愛をもらいながら育ち、何不自由はなかった。
ただ一つあるとすれば、幼く見られることが多かったくらいだ。
図書館には一般人が読むには許可が必要な魔術書が多く貯蔵されている。
魔術は通常炎より危険な取り扱いの難しいものだ。
だから読むだけでも才能と努力、勉強が必要なのだ。
エイルは家族の影響と持ち前の才能で魔術の魅力に取りつかれていた。
暇さえ見つければ図書館に籠り、知識を蓄えていた。
それを続けること一年、コツコツと魔術師としての教養を積んでいた。
そんな勉強詰めの日常を送ってきたある日。
エイルが図書館で本を読んでいた時である。
風の起きない蝋燭の炎が揺れた。
無意識に視線が揺れる炎を見る。
胸騒ぎというものを人生で初めて経験した。
持ち前の魔力で図書館外の状況を偵察してみる。
研ぎ澄まされた感覚は、全てを感じ取り、悪寒が走る。
呼吸が乱れて、胸が痛くなった。
こうしてはいられない……家族が危ない。そう感じたエイルは詠唱用の魔術書を握りしめて外へ走る。
ドアを叩き開けた時には、いつも穏やかな風景は焼けていた。
その方向は「サモンウィリット家」の方角、鮮明な予測、この火災は自分の家なのではないか。
「お父さん……お母さん!」
涙より焦燥、吐き気と震え、寒気、視界が悪くなる。
精神状態はエーテル場を攪乱し始めた。
家の前にたどり着いたエイルは膝から崩れ落ちた。
目の前の炎は手加減なく家を焼き、そこそこ有名な名のある家は燃えていた。
思考は止まっていた。家族は無事なのか?もしまだ中にいるなら、助けに……いや、自分が死ぬかもしれない。
そんなことを考えていると、灰が体を蝕み始めた。
咳、目がやられる。
この場から離れなければ……その前に街の皆に伝えないと……
エイルは震える手でメモ用紙を取り出して状況を伝える文を書こうとしたとき、後ろに気配を感じた。
振り返る。
「あれ、サモンウィリットじゃあねぇな」
黒いマントを身に着けた深い赤髪の男、口元は下品に汚れている。
見た目の若いその男は、腕全体に火傷を負い、エイルに近づく。
「血は高級品じゃないが……いい魔力だなぁ」
「……っ!」
エイルは恐怖で動くことはできない。
直感で男が味方でないことは分かった。
身を守ろうにも上手く魔術が使えない。焦っている。
震えるエイルの髪を握り軽々と持った。
痛みで声が漏れる。
顔を近づけた男は口元を歪ませて笑った。
その歯と歯の間は鮮血に満ちていた。
「お前も喰ってやろうか?」
生命の恐怖はエイルの体を動かす。
しかし、暴れる少女を男は力で離さない。
そのもがく姿を楽しそうに男は眺めている。
「お前みたいなのは死ぬまでが面白い、味も悪くないが……何か魔力くせぇ。そうだな……せっかくだ、新しい術を使ってみるか!」
言葉はエイルの耳にしっかり届いている。
自分にかけられる魔術の種類は?
痛い?
怖い?
辛い?
そんなことを考えると、自分でも不思議なくらいの奇妙な叫びを揚げていた。
「よく鳴く啼く泣くねぇ!殺すより楽しいかもぉ!」
「────────────────────」
救いを求める嘆き。
近距離で聞いたら鼓膜を裂き、自分まで悲愴感に包まれそうなシャウト。
少女を痛めつけ、火傷を負った手から紫のオーラが漏れ始める。
術は一瞬だった。
体全身の神経を触られた感触、今まで感じたことのない痛み。
その場から5メートルは跳躍し、10分はもがいていた。
体はだるさが生まれ、変形を始める。
無気力感が体を支配し、視界が悪くなってくる。
ただ、耳は稼働していた。
「─────とんでもない魔力だ……これはありがたく頂いていくぜ、じゃあな!────よかったーサモンウィリット襲って、極上の美味さだった……」
男は口を腕で拭って、その場を去って行った。
そう、どれくらいの時間が経過したのか、エイルの意識が戻ったころには人間の背中の上だった。
先の恐怖を思い出し、暴れ始めた。当然誰かの背中から落ちる。
「起きたな……私はライラという。君は?森で倒れていたから連れて行こうと思ったのだが……」
「うわぁ!」
エイルは距離を取る。
不思議と痛みは引いて、筋力的に自信がついていることを実感する。
そして、体の魔力総量が少なくなっていることが感覚でわかる。
「まぁそう震えるのは無理もないが……何があった?是非とも私に聞かせてくれないか?大丈夫、私は弱い者いじめはしないからね」
「はぁ……はぁ……ほんと?ほんとですか?もう痛いのは嫌」
「大丈夫だ、もしもの時は最強の鎮痛剤を用意している……死ぬかもしれないが」
これがエイルの過去だ。
性別が反転していることはこの後に明らかになる。
あの男がエイルの性別と魔力を奪ったのだった。
後日、エイルはライラの助手に着くことになる。
それから、あの男に家族殺しと自分の性別を奪った事の復讐を誓った。
私の家族は、間違いなく殺されたとライラ先生から聞いた。
魔術知識と以前から持つ才能はライラの助手としては最高だった。
以前程ではないが、魔力も蓄えることができるようになり、新な魔術も研究した。
「空間破裂魔法:カシロ・ライト」
範囲を指定して、気圧をゼロにし、切断属性で切り刻む。
ヒット直後に傷口から魔力汚染が進行し、激痛を伴う。
指定した魔力の範囲生存時間は2秒、消費魔力はエイルで12%である。
間違いなく人に放つには残虐すぎる魔術だ。
ある日のライラとエイルはベンチでの会話。
「エイル、ついに君の言う男を痛めつける魔術が完成したと聞いたが?」
「はい、完成しました。これでアイツに復讐できますし、危険な森を抜けてザンゲノヤマに帰ることができます」
「そうかい……そうだな……エイルは旅に興味はないかい?」
「旅ですか?」
正直興味はは1%くらい、復讐しか考えていない私には響かない言葉。
「大切な家族を殺された痛みはそれなりにはわかるしー、ぶっ殺してやりたい気持ちのわかる気がするがー、君はまだ若いからな、世界を知るって名目でもいいから、旅をしてみないか?きっとたのしいぞ?」
「……機会があれば……はい」
「ふふふ、そのうち来る気がするなぁ。私も昔は旅をしたが、楽しいぞ」
それから、私は魔術以外にも外の世界に興味を持つようになった。
そして、外から来たという二人がこの街に訪れて、私は夢にまで見た旅に出ることになる。
見たい物は決めている……ミルザンド。
死者が復活するなら、ギルド区、家族を探しに行きたかった。
ライラ先生の故郷、物語でしか聞いたことのない伝説の街ミルザンドに行ってみたい。
ーーーーーー
再生完了、ライブラリに保存。
「……」
僕はその話を黙って聞いていた。
もっと話口調で聞きました。
「ちゃんと話してくれてありがとう、相当な勇気の持ち主だ。なぁエイル、これは僕からの提案なんだけど……」
「なんでしょう?」
僕はエイルを信用すると決めた。
体から湧き上がる、コイツをどうにかしてあげたい、という感情が僕を動かす。
口を開く、半分は出まかせだけど。
「性別、僕らと一緒に奪い返そう!」
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