仮想世界β！！

音音てすぃ

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28.言えないシャワー

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　これはオトメが気絶してからすぐの話。

「よいしょっと！」

　ギンジさんがオトメを持ち上げて部屋に運ぼうとしていた。

「ん？ギンジか、訓練終了まで時間はまだあるぞ？」

　尋ねたのはツルギ、既にシャワーを浴びていて、髪が少し濡れていた。

「それがな、たった三撃で倒れちまってな……」
「ほぉ、ギンジの拳を三回耐えられるとは大したものだ」
「でよぉ、汗だくだからシャワーを浴びたいんだが……オトメをどうすればよいか……」
「なんだそんなことか、任せろギンジ」

　ツルギはそう言うと、瞬間移動でギンジから姿を消した。

「またか……内部でやるなって言われてるのになぁ……怖い者知らずだなホント」

ーーーーーー

　女性シャワー室前にて。

「──────アリエはどこだ？アイツに頼もうと思ったのだが……」
「あ、ツルギさんこんばんわ……じゃなくてお疲れ様です！」

　ツルギに遭遇したのは風呂上りのキリカだった。
　頭から蒸気が出ている。

「キリカか、そうだお前でもいいな」
「へ？」
「二人分には魔力を多く使うが……やむを得ないか」

　ツルギがそう言うと、キリカの襟を掴む。
　まるで親猫が子猫を運ぶときの絵面。

「な、何を！？もしや、また地面に叩きつけるんですか！？」

　ツルギは無言で瞬間移動をする。
　勿論目の前にはギンジがいる。

「やはり移動は二人が限界か……ほらギンジ、連れて来たぞ、コイツにオトメを預けろ」
「おおサンキュー、ツルギ、キリカ！」
「私、何も聞いてないですけど！」

　既にギンジはシャワーへ向かった。

「キリカ、オトメをシャワー室で洗ってくれ」
「はあぁ！？」
「じゃな」
「じゃあなじゃないです！どうやって……！」

　またしてもツルギは瞬間移動で消えてしまった。

「……」

　キリカが白目のオトメを見る。
　髪、服は汗で濡れていて、このまま朝を迎えたらと思うと可哀想だ。

「廊下にそのままにはできないし……どうすれば……」

　まず、男性シャワー室にキリカが入れるわけはない。
　だからといって女性のシャワー室に連れて行けば問題だしな。

「ツルギさんも勝手だなぁ……しょうがないやるか」

　キリカはオトメを負ぶって廊下を歩き出した。
　垂れ下がった頭がキリカの左頬に近い。

「子供みたい……何かいい匂いだなぁ」

　キリカが女性シャワー室に到着し、「今から気絶した男を入れたいんですけど、いいですか？」と言うと、皆が了解した。

「いいよーキリカちゃん頑張ってー」
「キリカさんが失神しないようにね！」
「あれ、私、からかわれてる？」

　とりあえず脱衣所で、オトメの上半身から服を脱がしていく。

「汗でくっついてうまく脱がせないや……おりゃ！」

　なんとか上半身を裸にできて満足する。
　おおよそ人生で初めて男性（気絶）を脱がす機会に、喜びに似た緊張を感じている。
　その訓練によりパンプアップした筋肉、そう、大胸筋に触れてみる……おお、これは素晴らしい！
　そうやって終始キリカはニヤけているのだろう。

「じゃあ次は……」

　下半身だ。一気に頭の血流が多くなり、手が止まった。

「え、やっていいの？……そ、そうじゃなくて、こんなことしたらダメだよ！ったくツルギさんめー！」

　嬉しいのか恥ずかしいのか、果たして本当に嫌なのか、ただ言えるのは彼女は一人の女としてこの状況でもニヤけ顔が治らないことだ。

「しょ、しょうがないよね！任されたお仕事なんだから（へっへっへ）！」

　遂にキリカがオトメのズボンを捉えて、脱衣、靴下、下着のアレもパージする。

「ブッ！！」

　キリカはまたまた、青年男性（気絶）の全裸を見るという初めてを経験し、卒倒してしまう。

「あぁーサッパリー……あれ、オトメ君、どうしてここに？そして君はキリカちゃんだっけ？」

　現れたのはアリエさんであった。
　状況を察したようだ。キリカを起こしてくれる。

「キリカちゃん！起きて！」
「ハッ！私は何を？それはそうと、あなたは？」
「私はアリエ、君の上司って言ったらわかりやすいかな、どうせツルギ隊長に頼まれたんでしょ？さぁ頑張って」
「が、頑張ります！あと、これからよろしくお願いしますアリエさん」

　アリエは笑顔で手を振って消えていく。

「きっと経験豊富なんだろうなぁ……私も何とかしなければ！」

　キリカはオトメを持ち上げて、シャワーヘッドが一つある個室に投げ入れ、自分も入り、足と頭以外を隠してくれる扉を閉める。
　そして水を出してオトメの体をケアし始めた。
　体から感じる熱と疲労。
　その人の感情も洗えたらいいなとキリカは思った。

　その後、ルーム210に運んだのも彼女であり、ツルギから制服を受け取り、枕元に置いたのも彼女だ。
　ルーム210の三人は自分たちより早く寝ている新入りに驚いただろう。

　そしてその日、キリカは男性に対して耐性を得た……はず。

「覚悟決めちゃえばカンタンカンタン」

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