仮想世界β!!

音音てすぃ

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15.経路

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 戦城アバンドグロウリーは、ミルザンドから30キロは離れている国であり、大昔は最強の戦闘能力もつ国として知られていた。
 国というか一つの城である。全土城壁で囲われており、いくつもの兵器が露出している。噂だと、昔は城が生き物みたいに動いたとか何とか。それが戦城の名前の由来らしい。
 円形の城壁、半径一キロメートル、総人口20万人。
 中央の巨大な城から周りを囲むように街が広がる。
 「メモリー」の内でも小さな国な方。一応ミルザンドの方が何倍も大きい。

 国への移動手段は馬か電車しかないと思う。

 いや、歩いてもいいんだけどね。

「で、結局電車にしたってわけだねオトメ君」

 戦闘用の武器防具は装備済み、ただ、目立つため、お互いフード付きのマントを着ている。ツルバに顔がバレているため、少しでもステルス能力があればいいのだが。

「あぁ、馬でもいいけどわざわざ門から入国しないといけないしね。最近できた電車なら検問は薄い。外套もあるし、ミルザンドの駅なら緩いもんだね」

 電車の中には人は少ない。窓から見える景色は変わらず平野。

「っとハッキリ見えてきたね」

 木々が去り、そこに映る巨大な城壁。
 まるでワンホールのケーキ。
 ただ、壁はケーキとは違って灰色や黒色。
 電車が通ることから、城壁に新しい門を作り、線路を開通させた。それもいくつも。入りやすくてよかった。
 一応最大の国である街マラサへも伸びているようだ。

「オトメ君、城壁の外で農業やってるんだね」

 キリカが電車の窓に指を指した。

 僕も驚いた。総人口20万人の国なら城に入り切るはずがないことはわかっていたが、城の外に町が広がっているとは思わなかった。
 そう考えると国土は相当広いのでは?

 城に近づくにつれて、大きさに圧倒される。

「数百年前には動いていたんだろうなぁ……」
「あの城が動いてたっていう話、オトメ君信じてるの?」
「ちょっとね」
「そっか……でもさ、動いたら怖くない?」
「怖いな!」
「だよねー。あ、でさぁ……」

 この後、くだらない話を駅に着くまで聞かされた。
 日頃どれだけの話したいことがあるのだろうか。
 一方の僕は生まれたての記憶で、話せることはコーヒーの話しかなかった。

『東駅』

 電車を使うことに抵抗がなくスムーズにいったことに疑問を持たなかったのは何故だろう。

「着いたな」
「うん」

 地面は主に石で出来ている。

 人口感が漂う。
 フードをつまんで少し顔を上げてみる。
 見渡す限りの壁、縦に長い建造物、中央の城から放射状に道路がある。
 キリカが城の大きさに圧倒されていた。

「キリカ、大丈夫?」
「デカすぎじゃない?これ動くの?」

 確かに大きい。縦300メートルはあるだろうか、カイナ救出は簡単ではない。

「動くかどうか、迷信でいてほしいな……さぁ行こうか」

 僕達は中央の城へ向かって移動を開始、途中にパブに立ち寄った。

「オトメ君、何しに入ったの?私お酒はまだ飲めないからね」
「違う違う酒じゃない、まぁ待ってて」

 僕はマスターに話しかけた。

「どうもこんにちは。実は僕、この街初めてでお土産に特産とか持ち帰りたいんですけど……」
「ああ、それならグローリーケーキがいいですよ。我が国の城壁をイメージしたケーキです。まず美味しい!」
「ありがとうございます!そうだマスター、せっかくの御縁ですし、少しお話しませんか?」

 出口の扉の横であくびが聞こえた。

「オトメ君まだかなぁ……」

 キリカは少しふてくされていた。

「お待たせ」

 僕は頭をポリポリかきながら登場。

「遅い」

 結構怒っていた。

「ごめんごめん後でケーキ買ってあげるから」
「ホント?それは許す!」

 そんなじゃなかった。

「それで、色々聞き出してきたことがある(やっぱりケーキ無しね)」

 僕『オトメ』は指名手配犯になっていた。

 「いやね、最近ツルバ軍師が街の掲示板に貼っていて、少し騒ぎになったんだけどねぇ」とマスターがいっていた。
 また、女王が行方不明となったが、最近見つかったということを聞いた。

「この女王ってのが恐らくカイナだ」

 軍師ねぇ。一人の兵士として能力高すぎじゃあないですか。

「よし、じゃあ行こう!」
「お、やる気だなぁ」

 ここでちゃんと確認しておこう。

「いいかキリカ、僕の目的はカイナの救出だ。結果的にこの国を敵に回すことになるかもしれない。安全は保障されないし……」
「大丈夫だよ。悪いことしたのは向こうさんなんでしょ?だったらオトメ君は正しいよ」

 キリカの言葉は強さを感じた。お前は正しいなんて言われたの初めてなようで。

「僕の身勝手な作戦への参加、感謝する」
「オトメ、経路を提示します」

 キョウスケが久しぶりに発言したと思う。
 僕の視界右上には『ミニマップ』というものがあり、それが拡大され、赤い線で経路が表示された。

「ありがとうキョウスケ」
「ん?キョウスケ?」
「あーあ何でもないんだ、気にしないでねー」
「変なの」

 何だか僕の中でPEを隠す傾向が無意識にある。
 何故だかは僕が一番わからない。

「──キリカ、いいルートがある」
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