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第八章 憑拠リスタート
四十八話 日常トラベル
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裏切り
それは、僕が最近(一ヶ月以上前)聞いた昔話の主人公が体験したことだ。といってもそれは主人公からの視点のことで、実際はしかたないことだったのだ。
今日は十二月二十日。もうそろそろ今年も終わる。冬休みに突入し、今日から冬期講習が始まる。今日は天気予報で雪が降ると言っていたので徒歩で登校したのだが、一切雪は降らなかった。最近は雲を溜め込んで離さない空しか見ていない。今回の登校でよくわかった。
その後一校時目を受けて、休み時間である。
「よぉよぉまわるん。今にも卑屈なこと言いそうな顔してるねぇ」
僕が頬杖ついている机の正面に要君が来た。それを僕は見上げる。髪が目にかかりそうだそろそろ切らないとな。
「別にそんなことはない。ただちょっとイラついてるだけだよ」
姿勢を正しながら手で髪を少し流す。
「へぇ、どうしたんだい?話してくれよ」
要君は僕の前の席の椅子の背もたれに座る。
「それがね、二日後の話なんだけど、僕の父さんが久しぶりに帰ってくるんだ。それで家族でレストランに出かけるらしいんだけど、僕は、ほら『忙しい』だろ?だから家でお留守番なんだよ」
単純に出かける時間帯に僕がいないだけなんだけど。
「それは辛いね。でも、十時には帰ってくるんじゃないの?」
「レストランってのは東京にあるんだ。まとまった休みを取ったのは三人だけで僕は冬期講習」
「ふーん」
いつもこうだ。要君は僕が暇そうにしていると、決まって話しかけて、僕の話を聞いてくれる。でも、雰囲気が少し違った。
「ちょっと訊いてみたいことがあるんだ。──まわるんは、仕事を奪われたらどう思う?」
意味がわからない。
「仕事?どういう意味だ?」
要君がこんなことを話すのは初めてかもしれない。いや……前にもあった。体育大会のときだ。でも、そんなことを言っていた記憶があるだけで、内容は覚えていない。
「んー、少し難しかったかな?例えばで考えて見てよ」
「例えば……僕が就職活動してるとしてか。そうだな……なんというか、シチュエーションは浮かびにくいけど、嫌だな」
「それなら、まわるん。他人によって奪われたらどう?」
「許さないね」
「だよね」
要君の顔はいつもの笑顔。心から笑っている顔は見たことないけど。もし要君から笑顔が消えたら、僕は恐怖で卒倒するかもしれない。
「……オラァ座れぇ!時間だそ!」
どうやら話過ぎたみたいだ。
「やべ、要君、チャイム鳴ってたみたいだ」
要君は頷いて席に戻った。
そして二校時目が始まる。
ーーー夏の反対ーーー
講習の後、放課後。夏と違って部室は暖房無しだと、風邪をひきそうになる。
「こんにちわ」
僕が部室に入ると、暖かい空気がぶわっと体にぶつかってきた。すでに麗乃とハルは椅子に座っていた。
麗乃はパソコンを使っているが、ハルは何か工作?をしている。
「結構暖いな」
僕も椅子に座る。
「内藤先生がストーブを運んできくれたの。凄く暖いよね。しかも灯油補給のタンクはこの校舎付近にあるからラクチンよ」
「それはよったな。……それで、何をしてるんだ?」
僕は麗乃の横に移動し、パソコンを覗く。すると、麗乃は少し横に避けてくれた。
「新入生をどう歓迎するか考えていたの。雪が降るとリハーサル出来なくなるから今のうちにと思って」
おそらく、僕にしたことと同じことをするつもりだろう。
「そ、そうか……頑張れよ!」
「でもね、少し問題がいるんだよ」
「何?」
麗乃は文字だらけの黒い画面を写だした。
「前に使った改造人体模型なんだけどね。いくらプログラムを変えても動いてくれないんだよ」
実は麗乃って凄い人?イヤイヤ待て、改造ってなんだよ。
「うん。応援してる……頑張れよ!」
僕は席を立ち去りハルの横に移動した。あれ以上話を聞くと来年度の一年生が可哀想になってくる。
「……ハルは何をやってるんだ?」
ハルは作業を続けながら話す。
「アタックシリーズの新作です。廻君のアタック9がボロボロになっていたので、開発することにしました。あ、そうだ。もしよかった旧型もお見せできますよ?」
もしかして、僕の持っているのが「9」だから、旧型は八つもあるのか?
「あぁ、気が向いたらな……」
はぁ、どうも変人揃いだ。
僕はこういう時はいつも一人ぼっち。まぁ慣れたけれど、本当にやることがない。たから今回は麗乃の手伝いをすることにした。
そう、日が暮れるまで。
ーーー殺ーーー
「死ね」
時刻 十二月二十二日 十時。
視界は消えた。
それは、僕が最近(一ヶ月以上前)聞いた昔話の主人公が体験したことだ。といってもそれは主人公からの視点のことで、実際はしかたないことだったのだ。
今日は十二月二十日。もうそろそろ今年も終わる。冬休みに突入し、今日から冬期講習が始まる。今日は天気予報で雪が降ると言っていたので徒歩で登校したのだが、一切雪は降らなかった。最近は雲を溜め込んで離さない空しか見ていない。今回の登校でよくわかった。
その後一校時目を受けて、休み時間である。
「よぉよぉまわるん。今にも卑屈なこと言いそうな顔してるねぇ」
僕が頬杖ついている机の正面に要君が来た。それを僕は見上げる。髪が目にかかりそうだそろそろ切らないとな。
「別にそんなことはない。ただちょっとイラついてるだけだよ」
姿勢を正しながら手で髪を少し流す。
「へぇ、どうしたんだい?話してくれよ」
要君は僕の前の席の椅子の背もたれに座る。
「それがね、二日後の話なんだけど、僕の父さんが久しぶりに帰ってくるんだ。それで家族でレストランに出かけるらしいんだけど、僕は、ほら『忙しい』だろ?だから家でお留守番なんだよ」
単純に出かける時間帯に僕がいないだけなんだけど。
「それは辛いね。でも、十時には帰ってくるんじゃないの?」
「レストランってのは東京にあるんだ。まとまった休みを取ったのは三人だけで僕は冬期講習」
「ふーん」
いつもこうだ。要君は僕が暇そうにしていると、決まって話しかけて、僕の話を聞いてくれる。でも、雰囲気が少し違った。
「ちょっと訊いてみたいことがあるんだ。──まわるんは、仕事を奪われたらどう思う?」
意味がわからない。
「仕事?どういう意味だ?」
要君がこんなことを話すのは初めてかもしれない。いや……前にもあった。体育大会のときだ。でも、そんなことを言っていた記憶があるだけで、内容は覚えていない。
「んー、少し難しかったかな?例えばで考えて見てよ」
「例えば……僕が就職活動してるとしてか。そうだな……なんというか、シチュエーションは浮かびにくいけど、嫌だな」
「それなら、まわるん。他人によって奪われたらどう?」
「許さないね」
「だよね」
要君の顔はいつもの笑顔。心から笑っている顔は見たことないけど。もし要君から笑顔が消えたら、僕は恐怖で卒倒するかもしれない。
「……オラァ座れぇ!時間だそ!」
どうやら話過ぎたみたいだ。
「やべ、要君、チャイム鳴ってたみたいだ」
要君は頷いて席に戻った。
そして二校時目が始まる。
ーーー夏の反対ーーー
講習の後、放課後。夏と違って部室は暖房無しだと、風邪をひきそうになる。
「こんにちわ」
僕が部室に入ると、暖かい空気がぶわっと体にぶつかってきた。すでに麗乃とハルは椅子に座っていた。
麗乃はパソコンを使っているが、ハルは何か工作?をしている。
「結構暖いな」
僕も椅子に座る。
「内藤先生がストーブを運んできくれたの。凄く暖いよね。しかも灯油補給のタンクはこの校舎付近にあるからラクチンよ」
「それはよったな。……それで、何をしてるんだ?」
僕は麗乃の横に移動し、パソコンを覗く。すると、麗乃は少し横に避けてくれた。
「新入生をどう歓迎するか考えていたの。雪が降るとリハーサル出来なくなるから今のうちにと思って」
おそらく、僕にしたことと同じことをするつもりだろう。
「そ、そうか……頑張れよ!」
「でもね、少し問題がいるんだよ」
「何?」
麗乃は文字だらけの黒い画面を写だした。
「前に使った改造人体模型なんだけどね。いくらプログラムを変えても動いてくれないんだよ」
実は麗乃って凄い人?イヤイヤ待て、改造ってなんだよ。
「うん。応援してる……頑張れよ!」
僕は席を立ち去りハルの横に移動した。あれ以上話を聞くと来年度の一年生が可哀想になってくる。
「……ハルは何をやってるんだ?」
ハルは作業を続けながら話す。
「アタックシリーズの新作です。廻君のアタック9がボロボロになっていたので、開発することにしました。あ、そうだ。もしよかった旧型もお見せできますよ?」
もしかして、僕の持っているのが「9」だから、旧型は八つもあるのか?
「あぁ、気が向いたらな……」
はぁ、どうも変人揃いだ。
僕はこういう時はいつも一人ぼっち。まぁ慣れたけれど、本当にやることがない。たから今回は麗乃の手伝いをすることにした。
そう、日が暮れるまで。
ーーー殺ーーー
「死ね」
時刻 十二月二十二日 十時。
視界は消えた。
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