憑拠ユウレイ

音音てすぃ

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第七章 忘却ゴースト

四十三話 公園ホワイト

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「神針丘公園」

僕が坂を登りたどり着いた場所。道路から外れるとあるのだか、あの高台より高いかもしれない。町の人がさらに小さく見える。
周りの木の葉は既に落ち、草は元気がない。ここにあの白い何かはいるのだろうか。

すると、背後から気配を感じた。

僕は素早く後ろを向くが何もいない。さらにその気配は僕の周りを高速で回っているのがわかった。(見えていないけど)
静かにアタック9を身につけ、気配を殴ってみた。

「ギャー!危ないでしょ!」

何も無い空間から現れ、僕の拳を避けたのは白い女の子だった。服も長い髪も肌も白い。ちなみに和服。
お互い驚きで、しばらく硬直した。初めに口を開けたのは僕だ。
「誰だ?……いや、誰ですか?」
その女の子は空中で上下にふわふわ揺れていて、一瞬で人でないとわかる。
「なんで見えるの?」
「なんでって……珍しくもないし。見慣れてるから」
「え!もう幽霊って結構有名なの?」
僕ら新聞部の間ではね。
「イヤイヤ、そんなことはない。君を見てここまで驚かないのは僕くらいだから」
僕は突き出したままの拳を下げた。
「へぇ私が見える人間は初めてかもー」
僕もこうやって自称幽霊と話すのは初めてだ。
「そうか……そうだ。もしかして、さっき僕を助けてくれたのは君?」
女の子は空間でグルグル周りながら喋れるみたいだ。
「ん?そうだよー。気まぐれ気まぐれ~」
そこで、何か違和感があったので聞いてみた。
「それはありがたいんだけど……あのー、もしかして足が無い?」
「そりゃ幽霊だもん!……って言いたいけど、これには理由があるんだよ。教えないけど」
「なんだよそれ」
僕もいくら慣れてるからって、ここまで喋る幽霊さんと話すのは初めてで驚いているのだけれど、何故か人間と話してる気分なのだ。
「そこで聞きたいんだけど、どうして僕の目の前に現れたの?」
女の子の回転が止まる。
「幽霊の仕事。やらないと、存在意義が消えるじゃない」
「イヤイヤ、幽霊ってもう死んでるんだろ?存在意義もクソもないだろ」
「えぇー!そんなことはないよ。だって漫画とかアニメは幽霊は怖くて人を驚かす役でしょ?それなら私もそうするべきでしょ」
あきれた。
「そうか……それなら君の仕事はもう終わったな。じゃあ僕は帰る」
「あー待って待って」
「何か御用?」

高丘たかおか 真敷ましき

「──それが私の名前」
なんだか厄介事が起こる気配がしてきた。
「僕は音希田 廻。どうしたの僕を引き止めて」
「私の足が無い理由、知りたくなーい?」
「教えてくれないんじゃないのか?」
「私の頼み事を聞いてくれたら教えてあげるー」
なんだかしつこいな、梛ちゃんならこんなこと絶対しないのに。麗乃ならありえるけど。
「なんだ?頼み事って。僕は今暇だから聞いてもいいよ」
真敷は楽しそうだ。今まで誰にも気づかれずに幽霊やってきているのだ。こんな楽しい状況は滅多にないのだろう。
「目をつぶって」
僕は言われるがまま目を閉じる。すると、少しだるい気分になったが、数秒すると良くなった。

「開けていいよ。それじゃあ本題。と言いたいけど、ゆっくりお話する空間が欲しいな」
僕は公園を見渡して休憩できそうな小屋らしきものを見つけたのでそこに行くことにした。
「あそこ行かないか?」
「了解」
なんともふざけた幽霊だ。


まぁ暇つぶしにはなるかな。
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