憑拠ユウレイ

音音てすぃ

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第二章 殺人チェーンソー

九話 会議ゲスト

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休校だってのに部活をしていた僕達新聞部。まぁ、あの後は、こっそり帰ったんだけれど。そして、あの事件はテレビや新聞など、表立ったニュースには──ならなかった。日本規模で見れば小さな出来事なのだろう。いや、放送できないくらい酷い事件だったのかもしれない。
そして五日間ほど経っただろうか。今日は日曜日である。

AM六時三十分

僕のスマホが鳴った。どうやら葛城からの連絡のようで「7時までに部室に来てね。もちろん朝の話だよ?」という内容だ。あと三十分しかないじゃないか。どうかしている。しかし、部長様の命令だ。従うしかないだろう。
朝飯も食べずに、制服に着替え、ボサボサの髪で自転車に乗った。日曜日だ。誰も歩いていない。本当、あくびがでる。 
葛城は人をなんだと思ってるんだろうか。あいつの朝飯を喰ってやる。

「あぁもう!そろそろ夏だってのに、何でこんなに寒いんだー!」

ーーーーー自転車レースーーーーー

学校に着いた。道中、近所で漆黒の閃光と名高い黒猫と学校まで競争をしていたのだ。息が上がって歩けない。しかもこっちは学ランだぞ!寒いとか言ってられない。(汗がハンパない)ただ、あの黒猫は速かった。そう、とても賢い。車の前を横切って、ふらついた車を僕にぶつけようとしてくるし、僕の顔に飛びかかって目を塞ぐし、本当に危なかったぜ。だが勝ったのは僕だ!
あの猫とはなんだかいいライバルになれそうだ。そうだな、名前は『えふびー』と呼ぶ事にしようか。

さっさと部室に向おう。

しかし、人の気配がしないな。僕は基本的に今日は暇だったから別にいいんだけどさ。本当、ここは廃墟かな。
そんな冗談を言っているうちに部室に着いた。

「うーっす……おはようございます…」
朝だからね。静かにしないといけないよ。
「おはよう音希田君」
「おはようございます。音希田君!」
この二人が揃っているのは久しぶりかな。だが、一つツッコミたい。

「誰だお前」

そう、そこには僕が知らない人物がいた。しかもイスに座って飲み物までもらっている。

「すまいせん、挨拶が遅れました。僕は、えーと、なんて言えばいいかな──そうですね、悔喜町の一般高校生です。あなた方と同じ学年なのでタメ口で構いませんよ」

とりあえず挨拶でもしておくか。悪い人じゃなさそうだし。

「僕は 音希田 廻 よろしく」
彼は「よろしく!」と言って握手してきた。そして「僕の名前は……」と続けた。

樹谷きたに 幹也みきや

それが彼の名前。容姿は身長が僕より低い。というか、葛城とほぼ同じか、それ以上といったところ。髪はさほど長いわけでもない。そして、ほんのちょっと茶色がかかっている。顔は身長が低いのもあってか、童顔だ。そんで見たことないジャージを着てる。他校だし。なんだか長い袋持ってきている。竹刀袋って言うんだっけ?いったいどうしてこんな物置にいるのやら。僕も座って話を聞くことにする。どうやら葛城が説明してくれそうだ。

「うーんと、そうだな。話すとしたらまず、なぜ幹也さんが我々新聞部の部室に来てくれたかについてかな。音希田君も知りたいでしょ?」
それに割ってはいるかのように幹也が、話しかけた。
「自分で話しますよ。元はといえば、僕がお願いをしに来たわけですし」
「まあ、さっさと話せ。だいたいにして、他校の生徒がこの学校にいる自体問題だけどな」
ハルが「まぁまぁ」と言って僕にコップについだお茶をくれた。(問題はこれに限った話ではないけれど)

幹也が話始めた。
「音希田君は不良って見たことありますか?」
「ずいぶんと唐突な質問だな。僕はこの目で不良というものを見たことはないね。あってもテレビのドラマとかになるぞ」
「そうですよね。落書きとかないですし、実際にこの学校は平和そうですね」
「先生方は愛のムチを振るいまくってけどな」
「いえいえ、不良の話ですよ」
こんなかんじで軽い雑談に持ち込んだことで、なんとなく幹也の表情が柔らかくなった。
「僕の通ってる高校は結構荒れていまして、入学後、人生で初めて見ましたよ。不良とやらを」
「ふーん。で?どうなんだ?本物の不良とやらの容姿は」
「容姿ですか。普通に高校生なんですけど、なんかチャラいというか、調子に乗っているというか…」
「そんだけザックリと説明されても──でも不良っていうくらいだから多人数なんだろうな。見ただけで分かる容姿なのか?」
幹也は何回も頷いた。

「前置きはここら辺にしときますか」
ほう。ようやく本題か。

「音希田君はこの前の事件、つまりチェーンソーで首と右腕を切断された人の事件を思えていますか?」
「すげー印象的だったからな。うん。覚えてる」
「もちろん僕が住んでる町で起きたわけですし、悔喜町の皆は警戒して犯人を捕まえよう奮闘してました。──えぇ、まだ捕まえていませんが」
「本当、怖い話だよ。てか、早く捕まえろよな。」


「被害者は僕と同じ一般高校生、いや、僕の大切な友達。名前は 太刀川たちかわ 和彌かずや といいます」

一瞬動揺してしまった。こいつ、被害者の知人だったのか。

「ここからはまだ皆さん全員にもまだ言ってない内容です。他言無用ですよ?」
「りょうかーい」
「あらかじめ言っておきますが、僕の友達の太刀川君は心の中が正義だけで出来ていると思ってください。僕が通う学校には不良がいると言いましたが、小さなイタズラだけで、暴れているとかそういう話は聞かないんですよ。格好だけの集団というか」
「ただの調子にのりたい連中なのかもな」
「それがそうでもなくてですね、あの事件の前日、不良たちが他校の生徒に怪我をさせた。という事件がありました。まぁ、そんなことしていると、太刀川君の正義の心は黙ってないわけで、その日の内に行動にでました。太刀川君の計画は、人気のないことで有名な悔喜公園に呼び出して『もうこなんなことはやめろ』と、交渉する。が、もし、彼らが承知しない場合、暴力を振るう。というものでした」
「ずいぶんと野蛮な正義だな。で、お話だけで済んだとは思えないんだけれども」
「実際僕もついていきましたが、やはり暴力に発展しました。その時僕も一緒に戦おうと思ったんですけど、太刀川君が僕に『帰れ』と言ったんです。まるで、ここは俺に任せろ。と言っているようでした」
「それで、幹也君が帰ると次の日に太刀川君が亡くなっていた。というわけか。──というかさ、なんでお前は帰った?相手は多人数なんだろ?そこは太刀川君の言葉を無視してでも『僕も一緒に戦うよ!』とか言わないと」
「はい……何度も自分を責めました」
言わない方が良かったかな。
「多分幹也君はその不良達が大切なお友達を殺害したと思っているんだろ?まぁほぼ集団リンチだけど……」
「そうです。その通りです。理解が早いですね」
「よく言われる……いや、そこまで話してくれれば誰でも分かるような気がするけど」

「説明は終わった?」
葛城が問いかけた。というか、話しすぎた。

                現在時刻 七時十四分

「話は理解した。でも、幹也君がここにいる理由はなんだ?そこだけ全く理解できないんだけど」
「言わなきゃダメ?」
「ダメだ。言え」
葛城が目をそらしてキョロキョロしながら話始めた。
「今日の朝5時の話なんだけどね」
「朝!?」
「いちいち驚かないでよ。説明しないよ?」
「おっと失礼」
あれ、僕が責め立てているはずなんだけど。
「私が朝の散歩というか、情報収集というか。そんな感じでカメラを片手に町を駆け回っていると、どうやら悔喜町まで歩いていったみたいなんだよね。そうしたら、第一村人発見!ってことで幹也君を見つけてインタビューをしたの。話ていると幹也君が『とびっきりのネタがあるけど、教える代わりに僕を手伝って欲しい』って言うから、立ち話もあれだから、部室に招待した。ってわけ。理解した?」
「説明ありがとう。お二人さんがとても早起きだって事と葛城が情報収集の欲で出来ていることがわかったよ」
コップのお茶を一気に飲んで、理解の早い僕は質問をする。
「何を手伝って欲しいんだ?でも僕に出来ることは何もないよ」
幹也君は下を向いて「えーっとー……」と言うだけでダラダラと時間が流れた。
「私が言ってあげようか?」
「いいえ!僕が言います……」
そんなに人に言いずらいことなのか?でも、葛城に言えたのだ。僕に言えないハズはない。

「愚かな頼みごとだとはわかってます。えっと、僕と一緒に不良と戦ってくれませんか!」

「え?」

まだ起きて一時間程度しか経っていない。そんな僕の脳みそは今の一文を理解出来なかった。だが、数分すれば話は別。

「復讐が目的なのか?ならやめとけ。怪我で終わる」
「完全に自己満足なんですけどね。もちろん復讐目的もあります。でも、このまま不良達を放っていたら、太刀川君が浮かばれない」
「へぇ、結構情に厚いタイプなんだな。でもね、幹也君。ここを何部だと思ってるの?」
「葛城さんからは特設ボクシング部だって聞きましたが」
いや、まて、そんなものはない。この高校にボクシング部すらない。というか、何故特設なのか。ガチな高校に勝てるはずないだろう。
「葛城……テメー嘘にも限度ってあるだろ。欲しい物のためなら何でもするのかよ!この情報欲女!」
「失礼だな音希田君。私はそんなに欲にまみれていないから」
そう言って後ろ髪を手でまとめて僕に近づいて、まるでアピールするかのようにうなじを見せてきた。
「ほらね。襟足薄いでしょ」
「性欲の話じゃなーい!」
心拍数が上がったことは言うまでもないだろう。
「というか音希田君。元卓球部でしょ。なら戦闘能力は高いはず」
「えぇ……なんでぇ。柔道部じゃないんだから」
葛城の中では卓球部は戦闘能力の高い部類に入るのか。確かに瞬発力、予測、速筋そっきんにも優れているが、戦闘はどうかな。
「てかさ、幹也君よ。もっと頼れる奴に相談するべきじゃないのか?」
「それは──僕は幽霊を見たよ。なんて言っているようなものです。真面目に聞いてくれる人なんて、いなかったんですよ」
「はぁ、そんなものかな」

僕には幹也君の今までのストレスや苦痛、なーんてものがあったとしても、わからない。でも、友達思いだ。って事は伝わってくる。そんな奴を知らん顔出来るほど僕は中身のない人間じゃない。

「今日が休日で良かったな。僕が気分屋で良かったな!いいぜ。一緒に大怪我負ってやろうじゃん」
「あ、ありがとう!音希田君!」

上手く乗せられたというかなんというか、痛いのは好きじゃないんだけど、でも何故か、別にいいかなーって。乗せられてもいいかなって──思う。今のうちに病院に連絡しておくか。喧嘩も何年ぶりだろう。

「僕はもちろんやるとして、ハル、お前はどうするんだ?」
「やはりその話しを出しますか…見ての通り僕はヒョロヒョロで、やや筋肉質の音希田君にはかないません。なのでバックアップという形でどうでしょうか」
確かに戦力にはならないだろう。むしろ要らなかったかもしれない。
「でも音希田君。期待していてくださいね。素晴らしいプレゼントを用意しますから」
軽く無視をした後、僕にはもう一つ気になることがあった。
「幹也君は剣道部なのか?」
竹刀袋を肩にかけていたから気になっていたのだ。
「いや、演劇部です」

                現在時刻八時五十分。

よくも我々の期待を裏切ってくれたな。
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