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再建
格の違い
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とりあえず悩んでても仕方ないので、いつもと同じ様に鍛錬をしながら、日々過ごした。
違った事はクルルが熱心に手合わせを願い出てきた事くらいであった。
正直、あれからのクルルは怖かった。
何かを抑えきれずにいる感じであった。
そんなこんなでグランマスターの座をかけた戦い当日になった。
闘技場に何故か、客が入れられていた。
ゲイガ曰く、ギルド運営にもカネがかかるんだ。それに闘技場を使うのもタダじゃないんだぞと。
客の入りは満員とは言わないが、馴染みの顔がたくさんあった。
前哨戦として、行われる二戦の組み合わせはこちらの希望通りであった。
まぁ、男女で戦わせるのはって事ですんなりと受け入れられた。
レーラと戦わせなかった時はこちらにどんなとばっちりが来るか分からなかったので、ひとまず安心だ。
だが、浮かない表情なのはルドラであった。
「ボス、あれと戦う意味ありますか?弱い者いじめはしたくないんですが。」
ルドラは全く乗り気ではなかった。
「ルドラ、それは失礼じゃないか。一寸の虫にも五分の魂と言って、あまり見くびってると痛い目を見るぞ。」
これは実際の戦いの場合での話のつもりであったが、流石にルドラもガチ本気ではやらないだろうという甘えが心の中にあった。
だが、開始早々にルドラは一気に距離を詰め、その爪でテッドの頬を思いきり殴ると、辺りに鮮血が散った。後方に吹き飛んだテッドを追い、そのまま床へ叩きつけた。
正しく秒殺であった。
見ていた観客もしばらくは何の声も発せれなかった。
ルドラは戻ってくるなり、首を大きく横に振り。
「ボス、何の手応えもなかったですよ。」
早速、次の試合に移ることになったが、兎人の登場に観客はざわついた。
後方支援などでさえ稀にしか見ない兎人がまさか一対一の戦いに出てくるなど通常では有り得ない事であった。
しかも、相手は虎人という事もあり、一方的な惨劇になる事以外想像出来ない様子であった。
レーラはクルルに以前と同じ感じで。
「こんな場所に連れ出されて、本当にアイツは何を考えてるのか。悪いけど、手加減とかは期待してるなら、それは考えが甘いわ。だから、出来るだけ早く倒してあげるから。」
クルルはその言葉をそっと微笑んだ。
そして、一度こちらに戻ってくると。
「不慮の事故が有っても仕方ないよね。」
そう言葉を発するクルルはやけに落ち着いていた。
それと同時にリョーにはその言葉の真意が直ぐに分かった。
リョーは大慌てでミューゼに声掛けた。
「クルルは何処までいける?」
ミューゼは一瞬、顔を曇らせ、首を横に振った。
それが何を意味するかはリョーにも分からなかった。
だが、魔法なしでもそれなりにレーラと戦う事は出来るだろうと言うのがリョー自身の見立てであった。
だが、クルルは決して自分を過信しない性格なのは分かっていた。
そのクルルが不慮の事故と口にした以上、クルルは本気でレーラを殺すつもりで向かうのだけは伝わって来た。
本当は止めたかったが、それは出来ない事だと分かっていた。
リョーはクルルをジーッと見た後、周りに聞こえる大きさで。
「先に言っておく。この戦いで命を落としても知らないぞ。」
その言葉に観客はざわついた。
この状況で意味するのはクルルの死であると捉えていたのだから。
その言葉を聞き、ミューゼは大慌てで。
「クルル、今回は武器以外の使用は認めない。これは師からの命令だ。」
クルルはリョーを見て。
「凄いハンデ戦を強いるんだね。」
「それくらい出来ないと連れていく訳には行かないからな。それにお前にアイツを殺めさせる訳にもいかないからな。だから、言っただろ。恨むなら、俺を恨めって。何か無理を言ってるか?」
クルルは呆れた様にため息をつき。
「従うしかない。私も前に言ったように助けられた命だからね。それにこんなチャンスも貰ったんだから、恨んだらバチが当たる。」
違った事はクルルが熱心に手合わせを願い出てきた事くらいであった。
正直、あれからのクルルは怖かった。
何かを抑えきれずにいる感じであった。
そんなこんなでグランマスターの座をかけた戦い当日になった。
闘技場に何故か、客が入れられていた。
ゲイガ曰く、ギルド運営にもカネがかかるんだ。それに闘技場を使うのもタダじゃないんだぞと。
客の入りは満員とは言わないが、馴染みの顔がたくさんあった。
前哨戦として、行われる二戦の組み合わせはこちらの希望通りであった。
まぁ、男女で戦わせるのはって事ですんなりと受け入れられた。
レーラと戦わせなかった時はこちらにどんなとばっちりが来るか分からなかったので、ひとまず安心だ。
だが、浮かない表情なのはルドラであった。
「ボス、あれと戦う意味ありますか?弱い者いじめはしたくないんですが。」
ルドラは全く乗り気ではなかった。
「ルドラ、それは失礼じゃないか。一寸の虫にも五分の魂と言って、あまり見くびってると痛い目を見るぞ。」
これは実際の戦いの場合での話のつもりであったが、流石にルドラもガチ本気ではやらないだろうという甘えが心の中にあった。
だが、開始早々にルドラは一気に距離を詰め、その爪でテッドの頬を思いきり殴ると、辺りに鮮血が散った。後方に吹き飛んだテッドを追い、そのまま床へ叩きつけた。
正しく秒殺であった。
見ていた観客もしばらくは何の声も発せれなかった。
ルドラは戻ってくるなり、首を大きく横に振り。
「ボス、何の手応えもなかったですよ。」
早速、次の試合に移ることになったが、兎人の登場に観客はざわついた。
後方支援などでさえ稀にしか見ない兎人がまさか一対一の戦いに出てくるなど通常では有り得ない事であった。
しかも、相手は虎人という事もあり、一方的な惨劇になる事以外想像出来ない様子であった。
レーラはクルルに以前と同じ感じで。
「こんな場所に連れ出されて、本当にアイツは何を考えてるのか。悪いけど、手加減とかは期待してるなら、それは考えが甘いわ。だから、出来るだけ早く倒してあげるから。」
クルルはその言葉をそっと微笑んだ。
そして、一度こちらに戻ってくると。
「不慮の事故が有っても仕方ないよね。」
そう言葉を発するクルルはやけに落ち着いていた。
それと同時にリョーにはその言葉の真意が直ぐに分かった。
リョーは大慌てでミューゼに声掛けた。
「クルルは何処までいける?」
ミューゼは一瞬、顔を曇らせ、首を横に振った。
それが何を意味するかはリョーにも分からなかった。
だが、魔法なしでもそれなりにレーラと戦う事は出来るだろうと言うのがリョー自身の見立てであった。
だが、クルルは決して自分を過信しない性格なのは分かっていた。
そのクルルが不慮の事故と口にした以上、クルルは本気でレーラを殺すつもりで向かうのだけは伝わって来た。
本当は止めたかったが、それは出来ない事だと分かっていた。
リョーはクルルをジーッと見た後、周りに聞こえる大きさで。
「先に言っておく。この戦いで命を落としても知らないぞ。」
その言葉に観客はざわついた。
この状況で意味するのはクルルの死であると捉えていたのだから。
その言葉を聞き、ミューゼは大慌てで。
「クルル、今回は武器以外の使用は認めない。これは師からの命令だ。」
クルルはリョーを見て。
「凄いハンデ戦を強いるんだね。」
「それくらい出来ないと連れていく訳には行かないからな。それにお前にアイツを殺めさせる訳にもいかないからな。だから、言っただろ。恨むなら、俺を恨めって。何か無理を言ってるか?」
クルルは呆れた様にため息をつき。
「従うしかない。私も前に言ったように助けられた命だからね。それにこんなチャンスも貰ったんだから、恨んだらバチが当たる。」
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