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新天地
鍛冶を習いたい
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あのドワーフの親方、何かあったんだ。
とりあえず、部屋に戻っても寝るくらいしか用はないので、少しでも情報を集めとかないと。
話の内容としては、オードと言うと、このフェルメールでも一番の名工であったらしい。
ただ気難しくて、簡単に弟子も取らないし、なかなか長続きしなかったらしい。
仕事も自分が気に入らないと、断ってしまうタイプらしい。
それでも彼の腕前を買って、依頼は絶えなかった。
確かに世に出る作品はその辺の鍛冶屋とは出来が違っていた。
それに依頼主によって、仕事を選んだりはしなかった。
それが事件の発端だった。
彼の渾身の作品をある貴族が依頼したが、使われない作品を作る気は無いと、きっぱり断った。
それをその貴族は自分の名誉を傷付けられたと騒いだが、彼の顧客の中にも貴族に繋がる者は居たので、大して大事にはならなかった。
だが、その貴族はオードの弟子を唆し、オードの名である剣を作らせた。
勿論、オードの作品とは比べようがない劣化品であった。
それでも量産品とは全然、質は段違いで良品ではあったが。
オードは自分の銘がある以上、言い訳はせずにその貴族に頭を下げた。
貴族は新しい作品を代わりに作れと命じたが、
それを頑なに拒否した。
その夜、貴族に唆された弟子は貴族の屋敷の前で自害した。
その弟子はオードの甥であった。
「ワシは自分のエゴで甥の命を奪ってしもうた………ワシは鍛冶を止める。」
それから三年以上、彼が鍛冶場に立つ事はなくなったそうだ。
話を聞きながら、何となく理解しようとしたが……何か納得出来なかった。
夕食の残りをかきこんで、部屋へ戻った。
【決めた、オードのおっさんの弟子になる。】
翌朝、宿を出るなり、あの鍛冶屋へ向かった。
勿論、誰もいなかった。
鍛冶屋の前でただ待つ事にした。
誰かから聞かされたのか、オードはやってきた。
「こんな所で何してる?昨日も言うたが、うちは廃業したんじゃ。」
「勝手に廃業されたら、困る。」
自分でも分かってたが、とんでもない事を言い出すつもりだ。
一瞬、オードは思考が止まった。
「……勝手にって。何でお前が困るんだ?」
「村を追放されたオレを住み込みで置いてやろうって変わり者はこのフェルメールにもほとんど居ないに違いない。だが、その一つはここだと思う。それに何より噂じゃ、アンタは腕はいいらしい。そんな所が選択肢からないなんて、困る。」
オードは怒りもせずに。
「もう腕も鈍ってるし、お前が聞いた噂はそれだけか?」
「ん~……後は甥が自殺したのを自分のせいだと思ってるバカだって事くらいか?」
流石にオードは顔を真っ赤にしていた。
だが、構わずに続けた。
「アンタ、自分のエゴで殺したって言ってたらしいが、エゴで何が悪いんだ?使われない作品を作る気は無い……それが本心なら、アンタが作ってたのは……どんなに綺麗事で飾っても、人殺しの道具だ。腕前が悪くて、勝手に死ぬなら自業自得だ。でもな、鍛冶屋の腕が悪くて、そいつが死んだなら?勝手に他の銘を刻むなんて………それ、鍛冶屋なのか?何でアンタ、ちゃんと怒ってやらなかった?」
オードは顔を真っ赤にしながら。
「気付いたんだよ、アイツがそんなに追い込まれてたのを。そして、その時まで気付いてやれなかった事も。どう怒って良いか分からなかったんだよ。」
「他の弟子と同じ様に褒めて、叱ってやれば良かったんだよ、ただそれだけの事なんだ。」
オードはしばらく考え。
「お前、弟子になりたい様には見えんけどな。」
仰る通り、偉そうに説教してる辺り、普通弟子になりたい人がする事じゃない。
「寝る所ないなら、寝るくらい許してやるよ。散らかすなよ。」
とりあえず拠点確保。
だが、やはり鍛冶の技術も覚えておきたい。
ギルドに登録出来る迄、ただ鍛錬してても、万が一怪我したら、それで路頭に迷うのは確実だ。
簡単な基本さえ覚えていれば、そうなった時に多少は有利だろう。
農業でも良いのだが、この髪が受け入れられるか微妙だろ。
とりあえず、部屋に戻っても寝るくらいしか用はないので、少しでも情報を集めとかないと。
話の内容としては、オードと言うと、このフェルメールでも一番の名工であったらしい。
ただ気難しくて、簡単に弟子も取らないし、なかなか長続きしなかったらしい。
仕事も自分が気に入らないと、断ってしまうタイプらしい。
それでも彼の腕前を買って、依頼は絶えなかった。
確かに世に出る作品はその辺の鍛冶屋とは出来が違っていた。
それに依頼主によって、仕事を選んだりはしなかった。
それが事件の発端だった。
彼の渾身の作品をある貴族が依頼したが、使われない作品を作る気は無いと、きっぱり断った。
それをその貴族は自分の名誉を傷付けられたと騒いだが、彼の顧客の中にも貴族に繋がる者は居たので、大して大事にはならなかった。
だが、その貴族はオードの弟子を唆し、オードの名である剣を作らせた。
勿論、オードの作品とは比べようがない劣化品であった。
それでも量産品とは全然、質は段違いで良品ではあったが。
オードは自分の銘がある以上、言い訳はせずにその貴族に頭を下げた。
貴族は新しい作品を代わりに作れと命じたが、
それを頑なに拒否した。
その夜、貴族に唆された弟子は貴族の屋敷の前で自害した。
その弟子はオードの甥であった。
「ワシは自分のエゴで甥の命を奪ってしもうた………ワシは鍛冶を止める。」
それから三年以上、彼が鍛冶場に立つ事はなくなったそうだ。
話を聞きながら、何となく理解しようとしたが……何か納得出来なかった。
夕食の残りをかきこんで、部屋へ戻った。
【決めた、オードのおっさんの弟子になる。】
翌朝、宿を出るなり、あの鍛冶屋へ向かった。
勿論、誰もいなかった。
鍛冶屋の前でただ待つ事にした。
誰かから聞かされたのか、オードはやってきた。
「こんな所で何してる?昨日も言うたが、うちは廃業したんじゃ。」
「勝手に廃業されたら、困る。」
自分でも分かってたが、とんでもない事を言い出すつもりだ。
一瞬、オードは思考が止まった。
「……勝手にって。何でお前が困るんだ?」
「村を追放されたオレを住み込みで置いてやろうって変わり者はこのフェルメールにもほとんど居ないに違いない。だが、その一つはここだと思う。それに何より噂じゃ、アンタは腕はいいらしい。そんな所が選択肢からないなんて、困る。」
オードは怒りもせずに。
「もう腕も鈍ってるし、お前が聞いた噂はそれだけか?」
「ん~……後は甥が自殺したのを自分のせいだと思ってるバカだって事くらいか?」
流石にオードは顔を真っ赤にしていた。
だが、構わずに続けた。
「アンタ、自分のエゴで殺したって言ってたらしいが、エゴで何が悪いんだ?使われない作品を作る気は無い……それが本心なら、アンタが作ってたのは……どんなに綺麗事で飾っても、人殺しの道具だ。腕前が悪くて、勝手に死ぬなら自業自得だ。でもな、鍛冶屋の腕が悪くて、そいつが死んだなら?勝手に他の銘を刻むなんて………それ、鍛冶屋なのか?何でアンタ、ちゃんと怒ってやらなかった?」
オードは顔を真っ赤にしながら。
「気付いたんだよ、アイツがそんなに追い込まれてたのを。そして、その時まで気付いてやれなかった事も。どう怒って良いか分からなかったんだよ。」
「他の弟子と同じ様に褒めて、叱ってやれば良かったんだよ、ただそれだけの事なんだ。」
オードはしばらく考え。
「お前、弟子になりたい様には見えんけどな。」
仰る通り、偉そうに説教してる辺り、普通弟子になりたい人がする事じゃない。
「寝る所ないなら、寝るくらい許してやるよ。散らかすなよ。」
とりあえず拠点確保。
だが、やはり鍛冶の技術も覚えておきたい。
ギルドに登録出来る迄、ただ鍛錬してても、万が一怪我したら、それで路頭に迷うのは確実だ。
簡単な基本さえ覚えていれば、そうなった時に多少は有利だろう。
農業でも良いのだが、この髪が受け入れられるか微妙だろ。
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