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審査

リョーの審査【露払い】

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リョーは使い慣れた片手剣を手にして、構えた。
少し苦戦はしたが、三人ともに無事に勝利した。
それにニッカに少し感嘆の表情を浮かべた。
「カシューの見立ては間違ってなかったようだね。」
先ほどまで言葉を失っていたゲイガは。
「お言葉ですが、我がギルドからの報告は届いておりませんか?」
ニッカは首を傾げながら、ゲイガを見た。
「この前の騒動、トリトル卿の刺客……C~Dランクで、それを倒したのがそこの2人です。」
ゲイガがもたらしたB級並というには程遠かったが、それでもそれなりの戦力であった。
ニッカは苦笑いを浮かべながら。
「まさかCランク以上の実力があるとはな。」
先ほどの護衛は。
「それは正しくないぞ。カシューが言ってた魔法を使ってないからな。」
ニッカは指摘されて、初めて気付いた。
「………あの申請も本気だったのか?」
護衛は頷いた。
「虎丸の審査も後日、お願い出来るかな?虎丸は人を殺める戦い方しか知らないから。大丈夫だよね、レイが相手なら。虎丸を殺さないで審査する事。」
「やはりバレてたのか……楽しみにしてるよ、どれ程強くなったか。」
レイに気付いた他の護衛は必死に言い訳を始めた。
「これは違うのです。相手がEランクだと聞いて、少し気を抜いていただけで、もう一度やれば、負けたりは……。」
レイは笑顔でその護衛に。
「じゃあ、もう一度やってみるか?そいつ、意外と性格悪いらしいけど…。」
レイはその笑顔をリョーに向けた。
「性格が悪いなんて……。」
否定しようとしたリョーにレイは。
「リザードマンの戦意を折ったのに?」
あぁ、確かにあれはやり過ぎたかもな。
レイは黙り込んだリョーから再び護衛に視線を戻し。
「で、どうするんだ?」
護衛は流石にここで撤回する潔さは持ち合わせていない様子で再び剣を手にして、前へ。
「次は手加減しないぞ、小僧。」
だが、リョーは落ち込む虎丸の背中を叩き。
「落ち込んでないで、いつもと同じ様にやってきな。」
虎丸は首を横に振りながら。
「弱い者いじめはしたくない。これは戦いじゃないんだよね?」
リョーは虎丸の頬を両手で挟み。
「これは主としての命令だよ。虎丸のチカラを見せておいで。」
虎丸は滅多に言わない命令と言われ、渋々前に出た。
だが、それに納得出来ないのは護衛の方であった。
「そんな弱いのは良いから、小僧が来い。」
「ほら、虎丸……ちゃんとしないから、相手に勘違いさせちゃったじゃないか。もし、殺してしまっても仕方ないよ。使役獣に手加減とか期待する方が無理なんだから。」
その言葉に顔を青ざめたのはゲイガであった。
「……おぃ、本気じゃないよな。そいつは……確か。」
「良いんだよね?事故が起こっても。」
その言葉に先ほどの戦いを見てたニッカはブラフだと思いながらも護衛に確認した。
「あぁ、瞬殺してみせますよ。逆にこちらが殺めても知らぬぞ。」
「……バカが。」
レイは吐き捨てる様に呟いた。
護衛と虎丸の再戦は数秒で方がついた。
虎丸に馬乗りになられ、その下で首から血を吹き出し、呻き声をあげていた。
虎丸は全身を真っ赤に染めながら、身を離した。
護衛の首に必死に回復魔法をかけるニッカはかなり焦っていた。
「力の差さえ分からないとは………。それにカシューの報告にあっただろ。あの使役獣の実力は下手すれば討伐指定されるかもしれぬと。」
レイは呆れていた。
だが、レイの呆れはリョーにも向けられていた。
「何が事故だよ、やはりいい性格してるよ……。」
ゲイガはその惨劇を目にしながら。
「やはりケルベロスの幼体なのか?」
リョーは流石にまずいと思い。
「それ、さっき……フラン自身、自信なさそうにしてたよ。それにケルベロスなんてモノが使役獣になる訳ないだろ。」
ニッカは何とか止血に成功し、疲れた表情をしながら。
「頼むよ。審査で死者なんて出したら、始末書で済まないんだからな。」
先ほど虎丸を審査した護衛は言葉を失っていた。
「じゃあ、審査の続きは後日でもいい?もう眠気と空腹で辛いから。」
そういうリョーを見ながら、レイは。
「あぁ、余計に楽しみになってきた。連絡を待ってる。」
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