転生したら、HEROになれるはず

鍛錬

異変

街を出ると、レーラの様子が少し変わった。
話しかけても、何か上の空であった。
そんな感じで進んでいくと、三体の一角鹿が現れた。
その瞬間、明らかにレーラの表情が強張った。
それから目の前に繰り広げられたものは……昔の虎丸を見るようであった。
辺り一面、真っ赤に染まり、肉片が飛散していた。
無我夢中で剣を振るレーラをテッドが必死で制止して、ようやくレーラは剣を振るのを止めた。
レーラは肩で息をしていた。
テッドに聞くと、レーラはほとんど実戦の経験がないらしい。
もし、依頼をこなす際も周りは熟練者ばかりでレーラが戦う事にはならなかったらしい。
レーラ的にはオレは初心者の様なモノだから、自分が頑張らないとと思ってたらしい。
仮にも隣国から旅をしてきたのに、それなりの実力があるとは思ってもらえなかったらしい。
勿論、テッドがこの旅で指導してくれる様に頼んできた事も知らない。
テッドに確認すると、その事実はレーラに告げても良いと言われたが、テッドの立場を考えると、告げない方がいい気がした。
トラントへは約１０日ほどの日程を予定されていた。
一日目はほぼレーラとテッドが現れるモノを排除して、何もせずに一日が済んでしまった。
夕刻くらいに一日目の宿泊予定場所に無事に到着した。
この後は自由にしてて良いらしい。
まぁ、グランのメンバーではないので自由にしてていいのだが。
毎日の日課にしてる鍛錬をこなす為に虎丸を引き連れて、街の外へ。
それを追う様にテッドがやってきた。
テッドを交えて、鍛錬をこなした。
今回は敵を探さずに鍛錬のみを目的にした。
だが、翌朝……旅立つ前に虎丸が真剣な顔をして、三人の前に座り。
「今日はいっぱい食べたいので、その方向でお願いします。昨日は戦えずに欲求不満でした。」
確かに旅に出てから、ほぼ毎日戦ってたな。
それに昨日は虎丸には少し少なめの食事だったかも。
この言葉に驚いたのはレーラであった。
昨日は疲れのあまり、着くなり寝てしまったらしい。
それなのに、物足りないという内容の発言を虎丸から聞いたのだから。
レーラにとって、虎丸は可愛いペットのイメージなんだろうな、きっと。
なんとも言えない空気で始まった二日目であった。