上 下
92 / 230
賊討伐

呆気ない幕切れ

しおりを挟む
レーラは何も言えなくなってしまった。
そもそも、こんな状況を招いたのは自分のせいであり、あのプライドが高い父が救出の依頼など出すはずがない。
他に心当たりなど幾つもない。
「本当に無事に帰れるの?」
ようやく口から出たのはそれであった。
剣士はレーラを見ながら。
「手段は不問なら………救出する位の事など…たわいもない事なんだがな……。」
少し言葉を濁しながら、答えた。
レーラもテッドも少し違和感を感じたが、それを聞ける余裕はなかった。
2人とも既に分かっていた。
それを認めたくなかったのだ、テッドは特に。
それからしばらくすると、剣士は急に立ち上がり。
「よし、行くぞ。」
そう言うと、洞窟の出口へと歩き始めた。
2人はそれにただ従い、ついていくと……先程まで洞窟の入り口を取り囲んでいた敵の影は全くなくなっていた。
剣士はそのまま里の方へとただ向かって行くだけであった。
だが、我慢出来ずにレーラは口を開いた。

「あの……何があったんですか?」
剣士は振り返りもせずに。
「若の目的が済んだんだよ。後は一緒に里へと戻れば、依頼は完了する。」
レーラは何も分からないが、ただ助けられた事だけは理解した。
ただ一つだけ気になり、それだけを聞かないと気が済まなかった。
「それで……あの人達は……殺されたんですか?」
剣士は急に立ち止まり、こちらを向き、ゆっくりと近づいてきた。
「それが出来るなら、少しは楽だったのにな。若から半殺しは良いが、誰も殺さずに救出しろって、課題出されたんだよ。」
テッドにイライラしてたのは実はこの課題のせいだったらしい。
誰も殺さずの一言にテッドも含まれていたようだ。
敵を殺さずに救出しようと思案してたのに、テッドが自ら死にに行く様な行動に出た事にイラッとしたらしい。
だが、レーラが救出を拒否すれば、依頼を破棄しても良いと言うのは事実らしい。
里に着くと、ダートが駆け寄り、レーラをギュッと強く抱き締めた。
少し遅れて、リョーら一行も里へと帰ってきた。
「本当に誰も殺さなかったんだな、予想より力をつけてたみたいだな。だが、コイツはダメだ。」
カシューは後ろから項垂れながら、ついてくるゼーガを指差しながら。
先程まで姿を消してた片割れが片膝をつき、頭を下げながら。
「わ……カシュー様はレイモンド家の後継ぎであられる以上、他家との付き合いもございますから……今回は強い推薦がございましたから、簡単なテストを致しまして……それなりの実力はあると判断致しましたので……申し訳ございません。」
「まぁ、構わない。なかなか有意義な時間だったし、それに人を見る目ってのは難しいという事も思い知らされたしな。」
そう言いながら、カシューはリョーと虎丸を横目で見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

付与って最強だと思いませんか? 悪魔と呼ばれて処刑されたら原初の悪魔に転生しました。とりあえず、理想の国を創るついでに復讐しようと思います!

フウ
ファンタジー
 勇者にして大国アルタイル王国が王太子ノアールの婚約者。  そんな将来を約束された一人の少女は……無実の罪でその人生にあっさりと幕を下ろした。  魔王を復活させて影で操り、全てを赦そうとした聖女様すらも手に掛けようとした公爵令嬢。  悪魔と呼ばれた少女は勇者ノアールによって捕縛され、民の前で処刑されたのだ。  全てを奪われた少女は死の間際に湧き上がるドス黒い感情のままに強く誓い、そして願う。 「たとえ何があったとしても、お前らの言う〝悪魔〟となって復讐してやる!!」  そんな少女の願いは……叶えられた。  転生者であった少女の神によって与えられた権利によって。  そうして悪魔という種族が存在しなかった世界に最古にして始まり……原初の悪魔が降り立ったーー  これは、悪魔になった一人の少女が復讐を……物理的も社会的にも、ざまぁを敢行して最強に至るまでの物語!! ※ この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。 上記サイトでは完結済みです。 上記サイトでの総PV1200万越え!!

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

グラティールの公爵令嬢

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません) ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。 苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。 錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。 グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。 上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。 広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。

糸遣いの少女ヘレナは幸いを手繰る

犬飼春野
ファンタジー
「すまない、ヘレナ、クリス。ディビッドに逃げられた……」  父の土下座から取り返しのつかない借金発覚。  そして数日後には、高級娼婦と真実の愛を貫こうとするリチャード・ゴドリー伯爵との契約結婚が決まった。  ヘレナは17歳。  底辺まで没落した子爵令嬢。  諸事情で見た目は十歳そこそこの体格、そして平凡な容姿。魔力量ちょっぴり。  しかし、生活能力と打たれ強さだけは誰にも負けない。 「ぼんやり顔だからって、性格までぼんやりしているわけじゃないの」    今回も強い少女の奮闘記、そして、そこそこモテ期(←(笑))を目指します。 ***************************************** ** 元題『ぼんやり顔だからって、性格までぼんやりとしているとは限りません』     で長い間お届けし愛着もありますが、    2024/02/27より『糸遣いの少女ヘレナは幸いを手繰る』へ変更いたします。 ** *****************************************  ※ ゆるゆるなファンタジーです。    ゆるファンゆえに、鋭いつっこみはどうかご容赦を。  ※ 設定がハードなので(主に【閑話】)、R15設定としました。  なろう他各サイトにも掲載中。 『登場人物紹介』を他サイトに開設しました。↓ http://rosadasrosas.web.fc2.com/bonyari/character.html

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

処理中です...