228 / 230
護衛衆
審査後
しおりを挟む
リョーは護衛衆候補の三人を翌日からでも集めて、鍛練しようと考えていた。
だが、三人の姿を見ると到底無理なのが明らかであった。
「とりあえずお疲れ様でした。鍛練自体は明日から行う。だが、自分の身体と相談して参加する様に。」
リョーはそう言葉を残すと、闘技場へ戻っていった。
しばらく三人はそのまま、横になりながら。
「護衛衆とか要るのか………。」
ハーリーは痛みに耐え、苦笑いを浮かべながら。
「全く相手にもならんとはな。しかも、明日から鍛練だとは……。」
ブソンは表情をほぼ変えず、天井を見つめていた。
「流石に明日とか……この怪我、そんなに直ぐに治らないよ……。」
アンリは不安そうな声で。
その言葉に三人の間で悲壮感が漂い始めた頃。
「どうしたの?具合はどう?」
そんな空気をお構いなしに虎丸がやってきた。
「明日からの鍛練、参加出来そうにないんだけど。」
虎丸はキョトンとした表情をしながら。
「無理しなくていいよ。明日から参加しろだなんて言ってないから。」
何か言いたそうな三人に対し、虎丸は小さな小瓶を三本置き。
「これ、傷薬だから……じゃあ、またね。」
そう言い残すと、虎丸はその場から立ち去った。
そして、三人は何も言えずにただ虎丸の後ろ姿を見送る事しか出来なかった。
「……やってけるのかな。」
そう口を開いたのはアンリであった。
二人ともその言葉に何も答える事が出来なかった。
そんな微妙な空気が漂う中、ただ静かな時が流れていた。
「…って言うか、二人の家って……。」
ハーリーは急に何かが脳裏によぎったのか訊ねた。
二人ともほぼ平民に近い家柄であった。
ハーリーはそれを聞き、少し呆れながら、体を起こした。
「本当にあの人、家柄とか関係なしで選んだんだな。」
他の二人は意味がよく分からずにハーリーをただ見つめていた。
だが、ハーリーの考えは間違っていた。
逆にリョーが敢えて、爵位を持つ者の審査を厳しくし、二次選考の時点である程度、落としていた。
三人は虎丸が置いていった小瓶に口をつけ、一気に飲み干そうとした。
次の瞬間、三人の表情は歪んだ………あまりの苦さに。
だが、吐き出す訳にもいかなかった。
小瓶に押された刻印が安価な傷薬ではないのを証明していた。
ハーリーは一瞬、吐き出そうかとしたが、他の二人が耐えてるのを見て、吐き出す事が出来なくなってしまった。
ようやく何とか飲み干すと、三人は口ではなく、鼻で呼吸していた。
吸い込む空気さえも苦いらしい。
そんな様子を見ていたのか、少し苦笑いを浮かべて近付いてきたのは………レーラであった。
「よくそんな不味いの飲めたね。」
レーラ曰く、何度か飲まされかけたが、どうしても飲めずに抗議すると仕方なく丸薬に交換されたらしい。
つまりは丸薬も有り、ほとんど飲み薬を飲む者は居ないとの事。
レーラの発言に呆然としながらも……三人ともある事に気付いていた。
そう、先程までは体を起こす事さえ辛かった程の痛みが薄れてきている事に。
だが、三人の姿を見ると到底無理なのが明らかであった。
「とりあえずお疲れ様でした。鍛練自体は明日から行う。だが、自分の身体と相談して参加する様に。」
リョーはそう言葉を残すと、闘技場へ戻っていった。
しばらく三人はそのまま、横になりながら。
「護衛衆とか要るのか………。」
ハーリーは痛みに耐え、苦笑いを浮かべながら。
「全く相手にもならんとはな。しかも、明日から鍛練だとは……。」
ブソンは表情をほぼ変えず、天井を見つめていた。
「流石に明日とか……この怪我、そんなに直ぐに治らないよ……。」
アンリは不安そうな声で。
その言葉に三人の間で悲壮感が漂い始めた頃。
「どうしたの?具合はどう?」
そんな空気をお構いなしに虎丸がやってきた。
「明日からの鍛練、参加出来そうにないんだけど。」
虎丸はキョトンとした表情をしながら。
「無理しなくていいよ。明日から参加しろだなんて言ってないから。」
何か言いたそうな三人に対し、虎丸は小さな小瓶を三本置き。
「これ、傷薬だから……じゃあ、またね。」
そう言い残すと、虎丸はその場から立ち去った。
そして、三人は何も言えずにただ虎丸の後ろ姿を見送る事しか出来なかった。
「……やってけるのかな。」
そう口を開いたのはアンリであった。
二人ともその言葉に何も答える事が出来なかった。
そんな微妙な空気が漂う中、ただ静かな時が流れていた。
「…って言うか、二人の家って……。」
ハーリーは急に何かが脳裏によぎったのか訊ねた。
二人ともほぼ平民に近い家柄であった。
ハーリーはそれを聞き、少し呆れながら、体を起こした。
「本当にあの人、家柄とか関係なしで選んだんだな。」
他の二人は意味がよく分からずにハーリーをただ見つめていた。
だが、ハーリーの考えは間違っていた。
逆にリョーが敢えて、爵位を持つ者の審査を厳しくし、二次選考の時点である程度、落としていた。
三人は虎丸が置いていった小瓶に口をつけ、一気に飲み干そうとした。
次の瞬間、三人の表情は歪んだ………あまりの苦さに。
だが、吐き出す訳にもいかなかった。
小瓶に押された刻印が安価な傷薬ではないのを証明していた。
ハーリーは一瞬、吐き出そうかとしたが、他の二人が耐えてるのを見て、吐き出す事が出来なくなってしまった。
ようやく何とか飲み干すと、三人は口ではなく、鼻で呼吸していた。
吸い込む空気さえも苦いらしい。
そんな様子を見ていたのか、少し苦笑いを浮かべて近付いてきたのは………レーラであった。
「よくそんな不味いの飲めたね。」
レーラ曰く、何度か飲まされかけたが、どうしても飲めずに抗議すると仕方なく丸薬に交換されたらしい。
つまりは丸薬も有り、ほとんど飲み薬を飲む者は居ないとの事。
レーラの発言に呆然としながらも……三人ともある事に気付いていた。
そう、先程までは体を起こす事さえ辛かった程の痛みが薄れてきている事に。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
女神の代わりに異世界漫遊 ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~
大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。
麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。
使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。
厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒!
忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪
13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください!
最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^
※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!
(なかなかお返事書けなくてごめんなさい)
※小説家になろう様にも投稿しています
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
召喚勇者の餌として転生させられました
猫野美羽
ファンタジー
学生時代最後のゴールデンウィークを楽しむため、伊達冬馬(21)は高校生の従弟たち三人とキャンプ場へ向かっていた。
途中の山道で唐突に眩い光に包まれ、運転していた車が制御を失い、そのまま崖の下に転落して、冬馬は死んでしまう。
だが、魂のみの存在となった冬馬は異世界に転生させられることに。
「俺が死んだのはアイツらを勇者召喚した結果の巻き添えだった?」
しかも、冬馬の死を知った従弟や従妹たちが立腹し、勇者として働くことを拒否しているらしい。
「勇者を働かせるための餌として、俺を異世界に転生させるだと? ふざけんな!」
異世界の事情を聞き出して、あまりの不穏さと不便な生活状況を知り、ごねる冬馬に異世界の創造神は様々なスキルや特典を与えてくれた。
日本と同程度は難しいが、努力すれば快適に暮らせるだけのスキルを貰う。
「召喚魔法? いや、これネット通販だろ」
発動条件の等価交換は、大森林の素材をポイントに換えて異世界から物を召喚するーーいや、だからコレはネット通販!
日本製の便利な品物を通販で購入するため、冬馬はせっせと採取や狩猟に励む。
便利な魔法やスキルを駆使して、大森林と呼ばれる魔境暮らしを送ることになった冬馬がゆるいサバイバルありのスローライフを楽しむ、異世界転生ファンタジー。
※カクヨムにも掲載中です
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる