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越国

国境の街

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おじさんは眼光を光らせたまま、良心的な金貸があると続けた。
金貸しと関わるのもしばらくはいい。
何よりも借金ならまだまだある方だ。
丁重におじさんの好意を断ると。
さっきまで優しそうなおじさんが豹変し、腰のナイフに手をかけた。
おじさんは今にも飛びかかろうとばかりに目を血張らせていた。
無抵抗にやられる訳にもいかず、とりあえず虎丸だけは制しておいた。
正におじさんがナイフ片手に動こうとしたその瞬間。
「おっさん、殺されるぞ?」
声の主はおじさんの後ろの馬車の荷台から身体を起こし、如何にも眠そうな声で。
「えっ、マジ?」
おじさんは一瞬、後ろを振り向いて、こちらを向いた。
それから品定めする為か、舐める様に。
「強そうに見えんぞ。純朴そうな少年にしか見えんぞ。」
おじさんは再度、振り返った。
荷台から降り、相変わらず眠そうにしながら。
「おっさん、こんな賊みたいな真似止めて、真面目に行商やった方が良いぞ。」
おじさんは聞こえるか聞こえないかの声で。
「お前らに借金さえなかったら、好き好んでこんな事してないよ。」
「おっさんさ、借金返すのが保険金にならない様にアドバイスしてあげてるのは誰?」
おじさんはため息混じりに。
「この小僧、そんなに強いのか?」
「正しく言えば、分らん。オレは分からん相手には手を出さないのがモットーなんでな。」
おじさんはヤレヤレという表情を浮かべながら。
「分からんって事は弱いかもなんだろ?コイツの持ち物はカネになりそうなんだろ?」
「あぁ、カネにはなるよ……。」
「じゃあ、賭けてみるよ。」
ナイフを抜き、リョーに向かってきた。
二人のやり取りを聞きながら、これは戦わなくて良いかもと思っていた矢先だった。
「………おっさんの借金返しても、余るくらいな。そんなのが盗賊に襲われずに済むなんて、モナス王国でも有り得ないんだがな。」
突っ込んでくるおじさんの頬を蹴っておいた。
だって、金貸しの言葉を聞きながら、それを早く言えよって顔をしてたので。
おじさんはグエッって、言葉を発して、地面に転がっていた。
手加減はしたんだが、襲われると反応的に体が動いてしまう。
「あぁ、言わないこっちゃない。オレは無関係だからな。何よりそんなの連れてるヤツに手出そうなんて、オレならしないな。」
呆れ顔でおじさんの頬をペチペチと叩きながら。
「あっ、もし何か困った事があったら、このベイルを尋ねて来ても、良いんだよ。」
この時はこのベイルと呼ばれる軽いヤツと関わる事などないだろうなって、思ってた。
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