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育成
来客
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「突然の訪問、誠に申し訳ございません。」
深々と下げた頭を上げると、そこにはまだ真新しい鎧に身を纏った整った顔立ちの騎士が立っていた。
「堅苦しい挨拶は抜きで御用は何かな?」
リョーは顔を曇らせながら、問いかけた。
リョーは厄介事を持ってきたに違いないと、心の中で思っていた。
「用と言う程の事ではございませんが、一度御手合わせして頂けませぬか?」
その言葉にリョーは溜息をつきながら。
「何の得がある?」
騎士は意味が分からないのか、唖然とした表情でリョーの顔を見つめていた。
「御手合わせして頂けますよね……。」
リョーは呆れ顔で首を横に振った。
そんな様子を見てた虎丸は騎士を哀れに思ったのか。
「主、話くらいちゃんと聞いてあげれば?」
騎士は嬉しそうに虎丸を見た。
「堅苦しい挨拶はいいと言ったが、名前も名乗らない相手と手合わせするつもりはない。」
騎士は大慌てで。
「これは失礼致しました。当方、ニードル・ディオスと申します。」
まぁ、名乗られても…どういう家柄かも分からないし、手合わせする目的が何なのかついでに語ってくれると有難いのだが。
「で、何故手合わせをそんなに望む?」
「近々、近衛騎士団の選定があり、それに応募する為に推薦が必要で………それで有る方から条件として………。」
その条件を提示したヤツ、誰だよ。
そんな面倒な事に巻き込んでるんじゃないよ。
「やはり…そんな事の為に手合わせする気はない。」
「そんな事?王をお守りする為に近衛騎士団に入りたい事を……。」
ニードルは明らかに怒気を露わにしていた。
「所詮、それはキミが出世したいが為だろ?」
ニードルは何も言い返せずに腰のベルトに挟んでた手袋をリョーに投げつけた。
「逃げたりはしないだろうな。推薦とか最早どうでも良い。我が忠誠をバカにされた以上、許してはおけぬ。」
リョーは面倒くさそうに投げつけたられた手袋を拾った。
だが、その次の瞬間、ニードルの背後から人影が。
「その直ぐに頭に血が上る性格を直す方が先だと言ったつもりだったんだが…。それに深く考えずに行動する所も。」
姿を見せたのはベイルであった。
「この手袋、ちゃんと受け取ったよ。命を賭けてまでの決意だとは思わなかったよ。ベイル、立会人を頼む。」
リョーはベイルをチラッと見て。
それに慌てたのはベイルであった。
「本気じゃないよな。その手袋だって、深い考えがあった訳じゃないんだ。」
だが、リョーはベイルを見ながら。
「近衛騎士団に入りたいと思う人間が知らなかったとか、軽々しく決闘を申し込むのか?」
ベイルはそう言われると言葉に詰まった。
だが、状況が飲み込めないニードルは。
「手合わせしてもらえるんなら、なんでもいい。」
ベイルはニードルを睨み。
「バカか、お前は決闘を申し込んだんだ……。」
ニードルは直ぐには理解出来なかったが、理解すると苦笑いを浮かべ。
「そんなつもりは無い。近衛騎士団への推薦は欲しいが、決闘なんかするつもりは流石にない。」
「逃げるのか?」
リョーはニードルに吐き捨てる様に。
その言葉にニードルはリョーを睨みつけた。
だが、それに気付いたベイルはニードルを蹴り飛ばした。
「我慢しろ。決闘になったら、お前死ぬぞ。」
ニードルは床に倒れ込みながら、ベイルを見ていた。
「どうでも良いが、あんま変な事に巻き込まないでくれよ。」
リョーは溜息をつきながら、ベイルを見た。
「申し訳ない。近衛騎士団への推薦には十三役か各所属の副団長の推薦が必要らしくて、それ関係の面会が多くてな。それに無下に断りにくい者も居てな。」
「家柄が良いのも大変なんだな。」
リョーは形だけでも同情してみせた。
だが、蚊帳の外なのはニードルであった。
「で、推薦の話は?」
ベイルは呆れ顔で。
「近衛騎士団になりたいなら、国内外の色々な情報をそれなりには仕入れておけるようにならないと。キミが手袋を投げつけた人物が誰かも分からない様では話にもならない。」
深々と下げた頭を上げると、そこにはまだ真新しい鎧に身を纏った整った顔立ちの騎士が立っていた。
「堅苦しい挨拶は抜きで御用は何かな?」
リョーは顔を曇らせながら、問いかけた。
リョーは厄介事を持ってきたに違いないと、心の中で思っていた。
「用と言う程の事ではございませんが、一度御手合わせして頂けませぬか?」
その言葉にリョーは溜息をつきながら。
「何の得がある?」
騎士は意味が分からないのか、唖然とした表情でリョーの顔を見つめていた。
「御手合わせして頂けますよね……。」
リョーは呆れ顔で首を横に振った。
そんな様子を見てた虎丸は騎士を哀れに思ったのか。
「主、話くらいちゃんと聞いてあげれば?」
騎士は嬉しそうに虎丸を見た。
「堅苦しい挨拶はいいと言ったが、名前も名乗らない相手と手合わせするつもりはない。」
騎士は大慌てで。
「これは失礼致しました。当方、ニードル・ディオスと申します。」
まぁ、名乗られても…どういう家柄かも分からないし、手合わせする目的が何なのかついでに語ってくれると有難いのだが。
「で、何故手合わせをそんなに望む?」
「近々、近衛騎士団の選定があり、それに応募する為に推薦が必要で………それで有る方から条件として………。」
その条件を提示したヤツ、誰だよ。
そんな面倒な事に巻き込んでるんじゃないよ。
「やはり…そんな事の為に手合わせする気はない。」
「そんな事?王をお守りする為に近衛騎士団に入りたい事を……。」
ニードルは明らかに怒気を露わにしていた。
「所詮、それはキミが出世したいが為だろ?」
ニードルは何も言い返せずに腰のベルトに挟んでた手袋をリョーに投げつけた。
「逃げたりはしないだろうな。推薦とか最早どうでも良い。我が忠誠をバカにされた以上、許してはおけぬ。」
リョーは面倒くさそうに投げつけたられた手袋を拾った。
だが、その次の瞬間、ニードルの背後から人影が。
「その直ぐに頭に血が上る性格を直す方が先だと言ったつもりだったんだが…。それに深く考えずに行動する所も。」
姿を見せたのはベイルであった。
「この手袋、ちゃんと受け取ったよ。命を賭けてまでの決意だとは思わなかったよ。ベイル、立会人を頼む。」
リョーはベイルをチラッと見て。
それに慌てたのはベイルであった。
「本気じゃないよな。その手袋だって、深い考えがあった訳じゃないんだ。」
だが、リョーはベイルを見ながら。
「近衛騎士団に入りたいと思う人間が知らなかったとか、軽々しく決闘を申し込むのか?」
ベイルはそう言われると言葉に詰まった。
だが、状況が飲み込めないニードルは。
「手合わせしてもらえるんなら、なんでもいい。」
ベイルはニードルを睨み。
「バカか、お前は決闘を申し込んだんだ……。」
ニードルは直ぐには理解出来なかったが、理解すると苦笑いを浮かべ。
「そんなつもりは無い。近衛騎士団への推薦は欲しいが、決闘なんかするつもりは流石にない。」
「逃げるのか?」
リョーはニードルに吐き捨てる様に。
その言葉にニードルはリョーを睨みつけた。
だが、それに気付いたベイルはニードルを蹴り飛ばした。
「我慢しろ。決闘になったら、お前死ぬぞ。」
ニードルは床に倒れ込みながら、ベイルを見ていた。
「どうでも良いが、あんま変な事に巻き込まないでくれよ。」
リョーは溜息をつきながら、ベイルを見た。
「申し訳ない。近衛騎士団への推薦には十三役か各所属の副団長の推薦が必要らしくて、それ関係の面会が多くてな。それに無下に断りにくい者も居てな。」
「家柄が良いのも大変なんだな。」
リョーは形だけでも同情してみせた。
だが、蚊帳の外なのはニードルであった。
「で、推薦の話は?」
ベイルは呆れ顔で。
「近衛騎士団になりたいなら、国内外の色々な情報をそれなりには仕入れておけるようにならないと。キミが手袋を投げつけた人物が誰かも分からない様では話にもならない。」
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