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武者修行

虎丸

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その頃、虎丸は街中を散歩していた。
虎丸にとって、一人で出歩く事なんて久しぶりだった。
まして、人間の街中を歩くなんて、考えられなかった。
いい匂いにつられて、ある店へと近付いていったが……。
店主からはシッシと追い払われた。
そら、迷い犬にしか見えないもんな。
その時、目の前にポトっとイイ香りがする肉が。
虎丸が視線を上げると、そこには目をキラキラさせて、こちらを見てる男の子が。
「ワンワン、お腹空いてるんでしょ?どうぞ。」

虎丸は喋る事は出来ないが、人の言葉はかなり分かる様になってきた。
虎丸はクンクンと匂いを嗅ぎ、その肉を一口頬張った。
やはり焼きたての肉は美味しい。虎丸は少し女将の肉が恋しくなっていた。
肉を食べ終えると、男の子は恐る恐る虎丸の頭を撫でようと手を近づけてきた。
虎丸は動かずにその手を受け入れようとしたが、金切り声がそれを邪魔した。
「ボン、そんなばっちいモノに触れちゃあ、ダメです。」

少しグレーかかった髪をしたおばさんが男の子の手を取った。
「えっ、ワンワン撫でたい……。」
「ダメです。この前も咬まれかけたのに。こら、あっち行きなさい。」
おばさんは持っていたカゴで虎丸を追い払った。
虎丸は仕方なしに少し離れた場所へ歩いていき、振り返ると残念そうにこちらを見てる少年が見えた。

その次の瞬間、男の子の背後から2人組の覆面姿の男が現れ、頭からスッポリと袋を被せ、連れ去っていった。
おばさんはただオロオロとしていたが、ようやく落ち着いたのか。
周りに助けを求めたが、もう姿も見えなくなっていたし、自ら進んで関わろうと言う奇特な人も居なかった。
下手に賊と関わるのは得策ではない。
虎丸もリョーを見てて、それは学んだ。
だけど、肉くれたし……。
虎丸は少し迷っていた。

おばさんは今にも泣きそうな表情で周りの人に助けを求めていた。

それを見て、放ったらかしには出来ずに、虎丸は匂いを辿り、男の子が居るであろう場所を特定した。
街の外れにある建物であったが、周りには人気がなかった。
と言うか、多分ここが賊の拠点だと知ってるんだろうな。
虎丸は付近でどうしようかウロウロした。
とりあえず一度、リョーの元に帰らないと心配してるかなって。
だが、鍛冶場に戻ろうにも入口に人が複数居た。
隙間から中を覗くと、リョーは火に向かい、何かしてた。
しばらく待ってはみたが、まだまだ時間がかかりそうな雰囲気で………少年が監禁されてる場所に戻ってみた。
見つからない様に中を覗ける場所がないか、辺りをうろついてみた。
今の虎丸なら入れそうな穴を見つけ、中に入ってみると。
数人の見張り役の男が退屈そうにしていた。
「何で、こんなガキのお守りしなきゃいけないんだよ。」
「仕方ないだろ。こいつのオヤジが反対派まとめようとしてんだからさ。話さえまとまれば、褒美貰えんだからさ。モンスターとかと戦うより楽だろ。」
「でも、暇過ぎだろ。」
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