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1万年後には
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魔王が眠る部屋に、1人の人物が入ってきた。
「魔王様ー。起きてくださいー。
用意した朝ごはんが冷めますー。」
その人物はやる気のない調子で話しながら、部屋のカーテンを次々と開けていく。
日差しが部屋に降り注ぎ、広いベッドで眠っている魔王を照らす。
「ほらー起きてくださいってば。」
ベッドの側で、もう一度魔王に声をかける。
すると、魔王がモソモソと動き出した。
「…眩しい…。」
「朝ですからね。ほらほら早く朝ごはん食べちゃって下さい。」
「…朝ご飯より…ティスが食べたい…。」
「あっはっは。寝言は寝て言うものです。そのまま起きないで下さい。」
全く感情を込めず、ティスが答える。
すると魔王は、不服そうにゆっくりと起き上がった。
「…ティスが作ってくれた朝ご飯を食べる。」
「じゃあ仕方ない。起きて下さい。先に出ますからね。」
ティスはそう答えると、そのまますぐに部屋を出ていった。
魔王はティスが出て行くのを名残惜しそうに見届けてから、1人支度を済ませて部屋を出た。
魔王が住んでいる城には、魔王以外にティスしかいない。
魔王はずっとティスの周りにまとわりついている。
「…魔王様。何度も言いますがほんと鬱陶しいです。」
「…別に何も邪魔してないだろう…。」
「視線が邪魔しています。部屋で大人しくしていて下さい。」
魔王に対してはっきりとものを言うティス。
ティスの様子を伺いながら、その後ろをちょこちょこ付いて来る魔王。
この2人の関係はずっと変わらない。
「しばらくだったから…側にいたいんだ。」
「いやいや私は全くしばらくではないので。
というか、魔王様の部屋に凄く気持ち悪い人形があったのですが…。
言いたくないのですが、あれって…。」
「気がついたか!アレはティスがいない間に、ティスの代わりにと思って作ったのだ!」
「…どう見ても呪われた人形でした。
いや、普通に技術は凄かったですよ?
耳の形や爪の一つ一つまで緻密に再現されていて、
感動すれば良いのか、気持ち悪がれば良いのか分かりませんでした。
…怖くて服を脱がせてまでは確認していませんが…。
そう、その服ですよ!
衣装がおかしいでしょ!どうしてフリフリのドレスを着ているんですかね?
まさかと思って自分の姿を確認しましたよ。
私を呪いたいんですかね?それなら私にも作って下さい。魔王様の人形凄く欲しい。」
「!?私の人形が欲しいのか!?喜んで作るぞ!」
「あー喜ばないで下さい。お願いだからそれ以上テンションを上げないで…。」
そう言い終わった瞬間、ティスの姿が消えてしまう。
魔王はしまったという表情を浮かべ、慌ててティスがいた場所へ駆け寄った。
ティスは魔王のベッドで目が覚めた。
「あー魔王様、近くにいますか?」
「ティス!目覚めたか!私はここにいるぞ!」
「ここで目覚めたくないんですよ。
って何度も言っているんですがね…。」
そう言ってティスは起き上がり、ベッドから降りようとする。
その様子を見て、魔王が慌てて声をかける。
「もう少しゆっくりした方がいいんじゃないか!?」
「大丈夫です。自分の部屋に戻って服を着替えてシャワーを浴びます。」
「…ティスは本当に…私の事が…」
「あなたの事が?好きになれますよ?私の心臓を返して下されば。」
「それは駄目だ!そうしたら今度こそ、私の魔力でティスを殺してしまう!」
「魔王様が私の心臓持っているから、こうして魔王様の魔力に当てられる度に消し飛んでも、心臓を元に再生を繰り返しているんですよね?
普通に私に心臓を返して魔王様の元を去れば死なないんですけどね?」
魔王はシュンとしてしまっている。
「いつになったら…ティスと結ばれるのだろうか?」
「そうですねー。1万年後には…。」
「!?」
「1万年後には世界も滅んでいそうなので、1万年程はこのままですかね?」
「!?!?!?」
そう言われ、再びシュンとする魔王。
「まぁその時まで付き合いますから…。」
小さな声で答えたティスは、パンパンと雑に魔王の肩を叩いた。
「魔王様ー。起きてくださいー。
用意した朝ごはんが冷めますー。」
その人物はやる気のない調子で話しながら、部屋のカーテンを次々と開けていく。
日差しが部屋に降り注ぎ、広いベッドで眠っている魔王を照らす。
「ほらー起きてくださいってば。」
ベッドの側で、もう一度魔王に声をかける。
すると、魔王がモソモソと動き出した。
「…眩しい…。」
「朝ですからね。ほらほら早く朝ごはん食べちゃって下さい。」
「…朝ご飯より…ティスが食べたい…。」
「あっはっは。寝言は寝て言うものです。そのまま起きないで下さい。」
全く感情を込めず、ティスが答える。
すると魔王は、不服そうにゆっくりと起き上がった。
「…ティスが作ってくれた朝ご飯を食べる。」
「じゃあ仕方ない。起きて下さい。先に出ますからね。」
ティスはそう答えると、そのまますぐに部屋を出ていった。
魔王はティスが出て行くのを名残惜しそうに見届けてから、1人支度を済ませて部屋を出た。
魔王が住んでいる城には、魔王以外にティスしかいない。
魔王はずっとティスの周りにまとわりついている。
「…魔王様。何度も言いますがほんと鬱陶しいです。」
「…別に何も邪魔してないだろう…。」
「視線が邪魔しています。部屋で大人しくしていて下さい。」
魔王に対してはっきりとものを言うティス。
ティスの様子を伺いながら、その後ろをちょこちょこ付いて来る魔王。
この2人の関係はずっと変わらない。
「しばらくだったから…側にいたいんだ。」
「いやいや私は全くしばらくではないので。
というか、魔王様の部屋に凄く気持ち悪い人形があったのですが…。
言いたくないのですが、あれって…。」
「気がついたか!アレはティスがいない間に、ティスの代わりにと思って作ったのだ!」
「…どう見ても呪われた人形でした。
いや、普通に技術は凄かったですよ?
耳の形や爪の一つ一つまで緻密に再現されていて、
感動すれば良いのか、気持ち悪がれば良いのか分かりませんでした。
…怖くて服を脱がせてまでは確認していませんが…。
そう、その服ですよ!
衣装がおかしいでしょ!どうしてフリフリのドレスを着ているんですかね?
まさかと思って自分の姿を確認しましたよ。
私を呪いたいんですかね?それなら私にも作って下さい。魔王様の人形凄く欲しい。」
「!?私の人形が欲しいのか!?喜んで作るぞ!」
「あー喜ばないで下さい。お願いだからそれ以上テンションを上げないで…。」
そう言い終わった瞬間、ティスの姿が消えてしまう。
魔王はしまったという表情を浮かべ、慌ててティスがいた場所へ駆け寄った。
ティスは魔王のベッドで目が覚めた。
「あー魔王様、近くにいますか?」
「ティス!目覚めたか!私はここにいるぞ!」
「ここで目覚めたくないんですよ。
って何度も言っているんですがね…。」
そう言ってティスは起き上がり、ベッドから降りようとする。
その様子を見て、魔王が慌てて声をかける。
「もう少しゆっくりした方がいいんじゃないか!?」
「大丈夫です。自分の部屋に戻って服を着替えてシャワーを浴びます。」
「…ティスは本当に…私の事が…」
「あなたの事が?好きになれますよ?私の心臓を返して下されば。」
「それは駄目だ!そうしたら今度こそ、私の魔力でティスを殺してしまう!」
「魔王様が私の心臓持っているから、こうして魔王様の魔力に当てられる度に消し飛んでも、心臓を元に再生を繰り返しているんですよね?
普通に私に心臓を返して魔王様の元を去れば死なないんですけどね?」
魔王はシュンとしてしまっている。
「いつになったら…ティスと結ばれるのだろうか?」
「そうですねー。1万年後には…。」
「!?」
「1万年後には世界も滅んでいそうなので、1万年程はこのままですかね?」
「!?!?!?」
そう言われ、再びシュンとする魔王。
「まぁその時まで付き合いますから…。」
小さな声で答えたティスは、パンパンと雑に魔王の肩を叩いた。
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