転生オメガの奮闘記

そらうみ

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オメガであるということは

結婚報告

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ルーク王子の婚約が決まり、もうすぐ一年が経とうとしていた。
そして近々ルーク王子の結婚式があり、俺とレイは正式に婚約する事になっている。


その日、俺は朝から嬉しくって上機嫌だった。
だって今日は…アリスが一年の遠征から帰ってくる!!!
凄く嬉しい!早く会いたい!会って色々話がしたい!
レイとの婚約報告も、直接言いたい!

そんな俺の様子を見ていたレイが、笑いながら俺に話しかける。

「レオンスは本当に、アリスが好きなんだな」

「もちろん!小さい頃から一緒にいたし、俺は色々アリスに助けてもらった。
今の俺がいるのは、アリスのおかげなんだ」

俺はニコニコしながら、ソファに座っているレイの隣に腰掛ける。

「私もアリスには感謝している…。
私たちが初めて会った時の事を覚えているか?」

「俺が寝ぼけて、レイの手を掴んだ時?」

「そう、あの後部屋にアリスが来ただろ?
そして部屋を出ていった私を、アリスが追いかけてきた」

そう言えばあの時、アリスが俺に代わってレイに弁解しに行ってくれたっけ?

「私に追いついたアリスは、真っ先に私にこう言ったんだ。

“貴方がレオンスの、運命の番なのですね”と」

「!?!?!?」

「そしてアリスは
“貴方とレオンスが結ばれるまで、私がレオンスを守ります”
とだけ言い、その場を離れたんだ」

ア、アリスぅぅぅぅう!!!まじか!!!アリスまじか!!!
一体どこまでアリスなんだ!!!

「私はレオンスが初めて城に来た時から、ずっとレオンスの香りを感じていたんだ。
レオンスの香りを感じて、会いたい、側に行きたいと思っていたよ。
でも自分からは何も行動出来なくて、遠くからお茶会の様子を眺めたりしていたんだ…」

え!?レイが俺の香りに気づいてた?そして、そんな事してたのか!?

「レオンスが倒れ部屋に運ばれた時、私はようやく会う事が出来たんだ。
兄上は、私のレオンスに対する様子に気付いていた。
だから5年もの間、お茶会を続けていたのだと思う。
きっと兄上ならお茶会など数回開いて、フィルと既成事実を作り終わらせいていただろう。
20歳までの約束なんて、本当は守るつもりなんてなかったはずだ。
この間それとなく聞いたら、はぐらかされたけどね」

既成事実…お兄さん…やりそうですね。
そしてレイは、そんな事情を隠さず俺に話してくれている。

「私は本当に周りに助けてもらってばかりだ。
でもこれからは、私もみんなの力になりたい。
将来国王になる兄上を支えていきたいし、今度は私がレオンスを守っていきたい。
レオンスを守り支えてくれたアリスは、私にとっても大切な人だ」

レイはそう言って俺に微笑む。
俺がアリスを大切に思う気持ちを、ちゃんと理解してくれるレイも…本当にこう言う所が…。

俺は思わずレイに抱きついた。
感情が高ぶったらレイに抱きつく法則が、俺の中で出来つつある。
そしてそのままレイを見上げる。

レイは俺の頬に手を当て、微笑んでくれている。
くっ…顔が良いのってほんとずるいな…。いや顔だけが良いんじゃないけれど。

そしてレイがゆっくり俺に近づく。
今レイから強い香りはしていない、俺の体も動かす事が出来る。
だけど俺は動かない。

そして俺とレイの唇が重なる直前…部屋の外から声がする。

「アリス・アダムズ参りました」

俺は慌てて立ち上がる!顔真っ赤!

「入ってくれ」

レイが笑いを堪えながら言った。

「お久しぶりです。レイナード殿下、レオンス」

部屋に入ってきたアリスは、以前より日焼けした肌、短く切った髪、そして騎士の正装姿で立っていた。
めちゃくちゃかっこいい!!!ほんとアリスはどこまでカッコ良くなるんだ!?

「アリス!会えて嬉しい!」

俺はアリスに駆け寄りハグをする。
その後ろでレイが声をかける。

「アリス、今は私たちだけだ。どうか昔のように、友人として接してほしい」

アリスは微笑んで答え、俺たちはソファに座った。

「実は先ほど到着したばかりで、今はあまり時間がないんだ。後で改めてうかがうよ。
まずは2人に会いたかったんだ」

「アリスが無事で良かった…。本当に…」

アリスが無事に帰ってきたら、レイと婚約する事を直接報告したかったんだ!
話しかけようとした俺の言葉を、アリスが遮る。

「実は2人に報告したい事がある。
レオンス、私は結婚したよ」

「え!?」

え!?結婚!?え!?報告したい事って…アリス!?!?!?

「相手は同じ騎士団に所属している医療担当の者だ。
名はアレツ・ビアードと言い、彼はベータだよ。
私が大怪我をした時、彼が助けてくれてね」

「大怪我!?え!?アリス大丈夫!?」

「その時の怪我はもう大丈夫だよ。その時の怪我で私はアレツと出会い…」

「…助けてもらって、好きになった?」

「いや、その時は多くのものが怪我をしていてね。
私もなかなか重症だったのだが、アレツはきちんと重傷者の優先順位を守り、治療にあたっていたよ」

「そうなんだ…。」

「そしてまた別の時、私は生死を彷徨う大怪我をしてね」

「アリスっ!?本当に大丈夫!?」

「大丈夫だよ。そしてその時もアレツが治療をしてくれたんだ」

「…命の恩人だね。その時に好きになったのか」

「その時と言うより、その直後かな?
彼が懸命に治療してくれてね。ようやく私の意識が戻った時、アレツは周りの目も気にせず大泣きしたんだ。
私が助かって良かったって。普通はそんな風に泣いたりしないみたいなんだけれどね。

そしてそんなアレツを見て、可愛いなと思ったんだ」

可愛いな…そう言えば、アリスが俺にプロポーズしてくれた時も、俺めちゃくちゃ泣いていたな!
アリス泣いている顔が好きなのか!?

「私は傷が回復してからすぐアレツに求婚し、城への帰りに寄った教会で正式に結ばれたよ」

早っ!安定の行動力!
驚いている俺たちに、アリスは微笑みながら話つづける。

「こちらに戻ってから結婚するとなると、色々と面倒だと思ったからね。
あ、そう言えばレイとレオンスも婚約するんだろ? おめでとう」

「あっ、ありが…とう?」

俺は自分の事など吹っ飛んでしまった。
目の前にいらっしゃるのは、間違いなく本物のアリスですね。

「まずは2人に、他の誰かから知らされる前に、私から直接伝えたかったんだ。
後でアレツも紹介するよ。落ち着きがなくて申し訳ないが、私はそろそ戻らないといけない」

そう言ってアリスは席を立ち、俺たちに微笑んで扉に向かう。

「アリス!」

俺は扉に手を掛けたアリスを呼び止める。
だって俺、アリスにまだおめでとうって言ってない!
でもアリスに声をかけようとすると、嬉しい気持ちや驚きの気持ちで言葉が詰まってしまった。

すると、振り返って俺の様子を見ていたアリスが、
いつもの、昔と変わらない笑顔で微笑み、俺に話してくれた。

「レオンス、分かっているよ。
私もレオンスを愛している」

そう言って、アリスは部屋から出ていった。



再びレイと部屋に2人きりになり、俺はレイに話しかける。

「アリスって、本当にアリスのままだった」

「あぁ同じアルファとして、そして1人の人間として、アリスを尊敬するよ」

アルファ…そうだ。アルファは特別な力がある。
でもアリスは、きっとアルファでなくてもアリスなんだろうな。

そして特別な力と言えば…。

「俺たちももうすぐ婚約するし…まあ俺がオメガと言っても、俺自身は体が人と違うだけで何も変わらないしね。
アルファには誘惑の香りがあるけれど、それもレイが出さなければ何事も無い訳だし」

俺はそう言って、隣に座るレイに微笑む。

するとレイが真剣な表情で…俺を見ている。

「レオンス。知らなかったようだけれど、オメガにも力というのか…特殊な事がある…」

「…と、言いますと?」

何だか…アリスに初めてオメガの事を教えてもらった時の感じに似ている…。
正直、何だか嫌な予感がする…。


俺はその後、レイからオメガの発情期と言うものを知ることになる。
そしてそれを知った俺は、立ち上がり…全力で部屋から飛び出していた。
この時はレイも慌てて俺を追いかけてきた。

後に城で働く人達からは、
「オメガはアルファの脚力をも超えるのですね!」
と感心された。

いやいやそこ!?真っ赤になって走っていた俺の状態は!?理由を聞かれても困るけれど!!

どうやら俺は、オメガについて知らないことがまだまだありそうだ…。



え?発情期が何かって?

それは…あなたのご想像に、お任せします!!!

【終】
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