12 / 15
オメガであるということは
再び
しおりを挟む
俺が泣いた事について、レイもフィルさんも何も言ってこなかった。
その日の帰り、泣き腫らした俺の顔を見たアリスも、何も聞いてこなかった。
きっと2人がアリスに上手く話しておいてくれたのだろう。
そして俺はあの日からいつものように過ごせて…いなかった!
あの日レイに抱きついて泣いてしまった…レイに、抱きついてしまった!!!
泣いた事はもういい、忘れよう!
レイに抱きついてしまった日から、俺の調子がおかしい。
なんだかずっとそわそわする。
確かに日頃からもっと近くで香りを感じたいとは思っていたが…。
それがいきなりのゼロ距離になったからか!?
でもあの時は香りを感じるどころじゃなかったし…とにかくあの日以来、レイが近くにいると落ち着かない。
しかもレイの近くにいて落ち着かないならまだしも、家に帰り1人になっても落ち着かない。
自分の部屋で1人になると、ふとその日レイと話した内容を思い出し、レイに言われた事を思い出しては嬉しくなり、自分がレイに言った事を思い出して恥ずかしくなり…。
そうなると何だか我慢ができなくなって、ベッドでジタバタするを繰り返していた。
情緒不安定過ぎる!
え、俺今までどうやってレイと過ごしていたんだっけ???
ほんと誰か助けて!
俺は何とか今まで通りにしようと必死なのだが、なかなか思うようにいかない。
そんな俺の態度のせいなのか、最近レイもいつもと様子が違う。
俺と一緒にいても何か考え事をしていたり、心ここに在らずって感じだ。
俺と一緒にいて…楽しくないって思われてる?
やばい…そうだとしたら泣きそう!
いやもう当分泣きたくは無いんだけど!泣いて抱きついちゃったし!あっ、また思い出してしまった!!!
自分の事にいっぱいいっぱいだった俺は、この時ある大切な事を忘れていた。
ある日いつものように別室に行くと、部屋にはレイしかいなかった。
フィルさんがいないのは珍しい。そして、レイがすごく真剣な表情で俺を見ている。
わーあんまり見ないでほしい、緊張するから!
俺はギクシャクしながらソファーに座ると、レイが黙って俺の隣に座る。
隣!?いや、隣に座ることもあったよな。普通普通、落ち着け俺。
そんな俺にレイは落ち着いて話しかけてきた。
「レオンス、今日は大事な話があるんだ。」
「はいっ!?何でしょうか!?」
「レオンスに…お礼が言いたいんだ。」
「…お礼?」
「私は今まで、王子として何不自由なく生きてきた。
でも私は兄上のように優秀ではないし、特にやりたい事もなくただ毎日を過ごしていただけなんだ。
でもレオンスと出会い、この場所で一緒に過ごすようになった。
ここにいる時、私たちは何か特別な事をしている訳ではない。
でもたわいのない事でもとても楽しくて、レオンスに会える事を考えて毎日を過ごすようになっていた。
こんな事は初めてだった。
そしてレオンスはあの日…私がピアノを弾いた日、自分の気持ちを私に見せてくれた。
あの時、初めて他人が私に心を見せてくれた気がする…。
そして、初めて私は他人と関われた気がしたんだ。
レオンス、私と出会ってくれて、色んな気持ちを教えてくれて、本当にありがとう。」
レイが俺に微笑む。
どうしよう…すごく嬉しい!
凄く真剣な顔をしていたから何事かと思ったけど…お礼を言おうとして緊張してたのか!
でも俺はレイにお礼を言われるような事は何もしていない。
どちらかと言えば俺がお礼を言う立場だ。…泣きついちゃたし。
そう思い、話そうとした俺の言葉をレイが遮る。
「だから…もうすぐお別れだと思うと…正直とても辛いんだ。」
…お別れ?
あ、そういえば俺がここに通っているのは、期限付きだった!
もう5年経つの?早っ!レイともう会えなくなる?
よく考えれば…レイは王子様だった!
友達として一緒に過ごしすぎて正直忘れてた!そうだよ、俺王宮に通ってるんだ。
ここ王宮!!!友達の家だけど普通の家じゃない、ここ王宮!!!
俺が内心焦っていると、気づけばレイが俺の前にいて…片膝をつき、俺の片手をそっと握った。
あ、これ…見たことある。
「レオンス…君がアリスと婚約している事は分かっている。
そしてもうすぐ兄上はフィルと婚約する。そうするとレオンスはアリスと共に、この王宮から私の手の届かない所へ行ってしまう。
私は今まで何に対しても興味がなかった。
でもレオンス、私は君が欲しい。君だけは諦めたくない。
けれど、私はアリスから無理矢理レオンスを奪おうとしているんじゃない。
私がレオンスの側にいる為には、レオンスに私を選んでもらわないといけない。
どうか一度でいいから私の事を考えてみて欲しい。
私の側で、共に生きて欲しいんだ。
私と…番になって欲しい。」
そう言ってレイは、握っている俺の手の甲に軽く口づけをする。
!?!?!?!?!?!?
俺はしばらく固まった。
そして急に立ち上がり、全力で部屋から逃げ出していた。
廊下を歩きながら、俺は内心パニックになっていた。
え?レイが俺を好きって事?いや俺もレイが好きだけど、今のは…え?そういうこと????
え?これってレイがアルファで俺がオメガだから…そういう事???
あれ?俺って男と結婚するのが嫌でアリスと婚約して…でもレイと一緒にいるのは楽しくて…そのレイが俺に側にいて欲しいって…番にって…え、俺…どうしたらいいの???
俺は泣きそうになっていた。
泣きそうになりながら、ただ必死に歩き続ける。
すると遠くから、俺に近づく人影が見えた。
…アリスだ。
帰る時間になり部屋まで迎えに来てくれたんだろう。
俺はアリスに向かって早足で歩き続ける。
俺がアリスの側まで来ると、アリスは泣きそうな俺の顔を見て驚いていた。
「レオンス!?泣いているのか?…いや、レオンスがそんな顔をするのは…。」
少し考え、そしてアリスはあっさりと言う。
「ああ、レイから求婚でもされたか?」
いやちょっとほんとアリスぅぅぅぅうううう!!!
その日の帰り、泣き腫らした俺の顔を見たアリスも、何も聞いてこなかった。
きっと2人がアリスに上手く話しておいてくれたのだろう。
そして俺はあの日からいつものように過ごせて…いなかった!
あの日レイに抱きついて泣いてしまった…レイに、抱きついてしまった!!!
泣いた事はもういい、忘れよう!
レイに抱きついてしまった日から、俺の調子がおかしい。
なんだかずっとそわそわする。
確かに日頃からもっと近くで香りを感じたいとは思っていたが…。
それがいきなりのゼロ距離になったからか!?
でもあの時は香りを感じるどころじゃなかったし…とにかくあの日以来、レイが近くにいると落ち着かない。
しかもレイの近くにいて落ち着かないならまだしも、家に帰り1人になっても落ち着かない。
自分の部屋で1人になると、ふとその日レイと話した内容を思い出し、レイに言われた事を思い出しては嬉しくなり、自分がレイに言った事を思い出して恥ずかしくなり…。
そうなると何だか我慢ができなくなって、ベッドでジタバタするを繰り返していた。
情緒不安定過ぎる!
え、俺今までどうやってレイと過ごしていたんだっけ???
ほんと誰か助けて!
俺は何とか今まで通りにしようと必死なのだが、なかなか思うようにいかない。
そんな俺の態度のせいなのか、最近レイもいつもと様子が違う。
俺と一緒にいても何か考え事をしていたり、心ここに在らずって感じだ。
俺と一緒にいて…楽しくないって思われてる?
やばい…そうだとしたら泣きそう!
いやもう当分泣きたくは無いんだけど!泣いて抱きついちゃったし!あっ、また思い出してしまった!!!
自分の事にいっぱいいっぱいだった俺は、この時ある大切な事を忘れていた。
ある日いつものように別室に行くと、部屋にはレイしかいなかった。
フィルさんがいないのは珍しい。そして、レイがすごく真剣な表情で俺を見ている。
わーあんまり見ないでほしい、緊張するから!
俺はギクシャクしながらソファーに座ると、レイが黙って俺の隣に座る。
隣!?いや、隣に座ることもあったよな。普通普通、落ち着け俺。
そんな俺にレイは落ち着いて話しかけてきた。
「レオンス、今日は大事な話があるんだ。」
「はいっ!?何でしょうか!?」
「レオンスに…お礼が言いたいんだ。」
「…お礼?」
「私は今まで、王子として何不自由なく生きてきた。
でも私は兄上のように優秀ではないし、特にやりたい事もなくただ毎日を過ごしていただけなんだ。
でもレオンスと出会い、この場所で一緒に過ごすようになった。
ここにいる時、私たちは何か特別な事をしている訳ではない。
でもたわいのない事でもとても楽しくて、レオンスに会える事を考えて毎日を過ごすようになっていた。
こんな事は初めてだった。
そしてレオンスはあの日…私がピアノを弾いた日、自分の気持ちを私に見せてくれた。
あの時、初めて他人が私に心を見せてくれた気がする…。
そして、初めて私は他人と関われた気がしたんだ。
レオンス、私と出会ってくれて、色んな気持ちを教えてくれて、本当にありがとう。」
レイが俺に微笑む。
どうしよう…すごく嬉しい!
凄く真剣な顔をしていたから何事かと思ったけど…お礼を言おうとして緊張してたのか!
でも俺はレイにお礼を言われるような事は何もしていない。
どちらかと言えば俺がお礼を言う立場だ。…泣きついちゃたし。
そう思い、話そうとした俺の言葉をレイが遮る。
「だから…もうすぐお別れだと思うと…正直とても辛いんだ。」
…お別れ?
あ、そういえば俺がここに通っているのは、期限付きだった!
もう5年経つの?早っ!レイともう会えなくなる?
よく考えれば…レイは王子様だった!
友達として一緒に過ごしすぎて正直忘れてた!そうだよ、俺王宮に通ってるんだ。
ここ王宮!!!友達の家だけど普通の家じゃない、ここ王宮!!!
俺が内心焦っていると、気づけばレイが俺の前にいて…片膝をつき、俺の片手をそっと握った。
あ、これ…見たことある。
「レオンス…君がアリスと婚約している事は分かっている。
そしてもうすぐ兄上はフィルと婚約する。そうするとレオンスはアリスと共に、この王宮から私の手の届かない所へ行ってしまう。
私は今まで何に対しても興味がなかった。
でもレオンス、私は君が欲しい。君だけは諦めたくない。
けれど、私はアリスから無理矢理レオンスを奪おうとしているんじゃない。
私がレオンスの側にいる為には、レオンスに私を選んでもらわないといけない。
どうか一度でいいから私の事を考えてみて欲しい。
私の側で、共に生きて欲しいんだ。
私と…番になって欲しい。」
そう言ってレイは、握っている俺の手の甲に軽く口づけをする。
!?!?!?!?!?!?
俺はしばらく固まった。
そして急に立ち上がり、全力で部屋から逃げ出していた。
廊下を歩きながら、俺は内心パニックになっていた。
え?レイが俺を好きって事?いや俺もレイが好きだけど、今のは…え?そういうこと????
え?これってレイがアルファで俺がオメガだから…そういう事???
あれ?俺って男と結婚するのが嫌でアリスと婚約して…でもレイと一緒にいるのは楽しくて…そのレイが俺に側にいて欲しいって…番にって…え、俺…どうしたらいいの???
俺は泣きそうになっていた。
泣きそうになりながら、ただ必死に歩き続ける。
すると遠くから、俺に近づく人影が見えた。
…アリスだ。
帰る時間になり部屋まで迎えに来てくれたんだろう。
俺はアリスに向かって早足で歩き続ける。
俺がアリスの側まで来ると、アリスは泣きそうな俺の顔を見て驚いていた。
「レオンス!?泣いているのか?…いや、レオンスがそんな顔をするのは…。」
少し考え、そしてアリスはあっさりと言う。
「ああ、レイから求婚でもされたか?」
いやちょっとほんとアリスぅぅぅぅうううう!!!
10
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

エンシェントリリー
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

邪悪な魔術師の成れの果て
きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。
すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。
それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

憧れていた天然色
きりか
BL
母という名ばかりの女と、継父に虐げられていた、オメガの僕。ある日、新しい女のもとに継父が出ていき、火災で母を亡くしたところ、憧れの色を纏っていたアルファの同情心を煽り…。
オメガバースですが、活かしきれていなくて申し訳ないです。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる