天使の休息

そらうみ

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セイ

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天界のとある一画で、口づけを交わす者達がいた。


「んんー…っ。ふふっ。セイ…そろそろ行かないと間に合わないよ?
アイザ様に呼ばれているんでしょ?」

「んー?もうちょっとこうしていたいなー。」

セイと呼ばれた人物は、唇から首筋へとキスを落としていく。

「早く行っておいで、部屋で待ってるからさ。」

「んーそうだね…じゃあまた後で。」

最後にもう一度唇へキスをすると、セイは立ち上がりその場を後にした。





セイはアイザの部屋に向かいながら考えていた。


きっと新しいパートナーが決まったんだろうな。
今度のパートナー、どんな子だろう?

セイはつい先日、パートナーの解消をしていた。
相手に恋人が出来たからだった。相手は新しい恋人とパートナーになりたいから解消して欲しいとセイに伝え、セイもそれを了承したのだ。

恋人とパートナーを組むものも多いが、セイはどちらかというと、恋人とはあまりパートナーになろうとしなかった。

先ほどキスを交わしていた恋人も、セイではない人物とパートナーを組んでいる。
お互いに今の関係に満足していたので、特にパートナーにならずにいた。


俺はあんまり恋人とパートナーにはならなくても構わないんだよな。
色んなやつと知り合うの楽しいし。


アイザの部屋まで辿り着いたセイは、いつものように気楽な気持ちで扉をノックした。

「アイザ様、セイです。入りますよー。」

扉を開けたセイは机に座っているアイザと、部屋の真ん中に立ちこちらを振り返った人物を見た。

「……。」

「どうしたセイ?部屋に入らないのか?」

「あっ、いえ…失礼します。」

セイはゆっくりと扉を閉め、部屋の真ん中へと進む。
そして先に居た人物の隣に並んだ。

「セイ、こちらはサンだ。今日から新しいパートナーになる。
サン、先ほども話していたがこちらがセイだ。分からない事は何でも聞いて、困った事があれば頼ればいい。」

「はい、分かりました。」

笑顔で答えたサンは、セイに体を向ける。

「初めまして。サンです。これからよろしくお願いします。」

「あっ、うん…。よろしく…。」

サンは、セイの歯切れの悪い挨拶を気にする事なく、ニッコリと微笑んだ。

「では、お前達はさっそく明日から仕事に取り掛かってもらう。
また明日の朝、この部屋に来る様に。」

セイはそれから上の空で自分の部屋へと戻っていった。




「んっ、んっ、んっ、ん…」

部屋に戻ると、先に準備していた恋人に導かれながらベッドに辿り着いていた。
そして今、仰向けになっているセイの上に恋人がまたがり、彼を受け入れて動いていた。

「はっ、はっ、んんっ…セイ…お願いっ…触って…?」

セイはぼんやりしながらも、ゆっくりと手を動かし始める。

「んっ、んっ、きもちっ…もっと、もっと触って…。」

高揚する恋人を見上げながら、セイは今日初めて出会った人物を思い出していた。


サンは瞳が大きかったな…。


サンの大きな目で見つめられた瞬間、セイは固まってしまっていた。
それからどうも自分の調子がおかしいと気が付いている。


もしサンの大きな瞳でずっと見つめられたら、自分はどうなってしまうのだろう?


ふとそう思った瞬間、セイの中で何かが高まった。

「わっ、あっ、セイっ、っ急に、んっ、んっ、んっ、んんっっつ!!!」

気づくとセイは、恋人に力強く抱きついていた。




セイはベッドの上で項垂れていた。
恋人は今、隣の部屋でシャワーを浴びている。

俺…最悪だ…。
最後…サンが頭に…よぎってたよな…。

落ち込んでいるセイとは対照的に、恋人は鼻歌を歌いながら戻ってきた。

「セイ、明日から新しいパートナーと仕事なんでしょ?」

「ん?あぁ…そうだよ。」

恋人は帰り支度を終え、扉に向かって歩いて行く。
セイも見送るために扉へと向かっていった。

「セイ…僕達今日でお別れだね。」

「ん?まぁ今度の仕事もそんなに長くは掛からないからすぐ会えるよ。」

「違う違う。恋人として終わりにするって事。さっき僕の事抱いていた時、別の子の事考えていたでしょ?」

「なっ…!?」

「ふふっ。別に攻めているんじゃないよ?そりゃちょっと悲しいけどさ…気持ちよかったけど…。セイが上の空になっちゃうくらい素敵な子なんだね、その子。」

「・・・・・・。」

「セイがちゃんと僕の事を愛していてくれていたのも知っているし、そのセイがそんな状態になるんだもん、僕どうしようもないよね。僕もね、今のパートナーに凄く言い寄られていたんだけど、今度応えてみようかな?全くタイプじゃないんだけど。」

「!?!?!?!?」

「セイ以上に愛してくれるかもしれないし、愛して欲しいな。」

「なぁ…。」

「あ!僕達パートナーとは恋人にならない主義だったけど、一度試しても良いかもしれないよ?誰かに取られたくないもんね。」

「・・・・・・。」

最後に恋人はセイに向き合って微笑んだ。

「ばいばい、セイ。大好きだったよ。」

俺は恋人を、恋人だった彼を、最後に強く優しく抱きしめた。




本当に俺…最低…。

部屋で1人になってから、セイは見送った扉の前でうずくまっていた。

あいつ…泣いているだろうな…。

今までの付き合いから、相手がどんな気持ちで言ってくれていたのかが分かる。

…あんなに優しく背中を押して貰えたんだ、俺も向き合おう…。

そう思いサンを思い出した瞬間、セイは焦り始めた。

サンは今この瞬間にでも誰かに言い寄られているかもしれない…。
今まで気にしていなかったけれど、この天界では誰もが息を吐くのと同じように愛を囁くのだ。
俺だってそうだし、恋人がいなければ直ぐに誰か愛する者を探し始める。
気になる子がいれば、まずは声をかける事に何も躊躇しない。

サンと恋人になれたとしても…サンが別のやつとパートナーになれば、そいつがサンを好きになり言い寄るかもしれない…。
実際先ほど、別れた恋人がパートナーに言い寄られていた事を知ったし…。
俺もパートナーになる者に言い寄られた事もあったが、いつも恋人がいて大事にしている事を匂わせていたしな…。

俺は次の日の朝一番に、誰よりも早くサンに会わなければならないと決意した。
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