天使の休息

そらうみ

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シル

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アイザ様の部屋から退出した俺は、コンに連れられ彼の部屋に来ていた。

「コレとコレ、あとはコレがあれば大丈夫だろう。」

コンはどうやら、これから俺の部屋で過ごすつもりらしい。
そのためにまず、必要な物を取りに来たようだ。

そしてそのまま俺の部屋に来たコンは荷物を置き、真っ直ぐに俺の部屋のベッドに向かった。
そして持参した枕をベッドに置いて、そのまま寝転がった。

「あぁ~ようやくぐっすり眠れるぅ~!!!」

嬉しそうにベッドに寝転がるコン。

丁度その時、部屋の扉がノックされた。

「シル、居る?もし1人なら相手して欲しいんだけど…。」

すると、寝転がっていたコンが無表情で起き上がり、扉へ向かっていく。
そして扉を開け、相手を確認してから話始めた。

「俺、シルのパートナーで今日からシルと一緒に過ごすから。
悪いけど、もうシルに相手してもらうのを止めてもらいたいんだ。
出来ればシルと関係のある他の人達にも、そう伝えてもらえると助かる。」

訪ねてきた者は最初は驚いた表情をしていたが、チラリと俺に視線を合わせ、仕方がないといった表情でそのまま帰っていった。
所詮体だけの付き合いだったから、特に何か言う事もなかったのだろう。

それからしばらくは、来訪者が来るたびにコンが同じように説明をして追い返すを繰り返した。

ようやく誰も訪ねなくなってきた頃、コンは再びベッドに寝転び嬉しそうに大きく伸びをした。

「はぁ、今度こそ本当に…ゆっくり出来る…。おやすみ…。」

そしてコンはそのまま眠りについてしまった。





何がどうなっているのだろうか?

俺は椅子に座り、考えた。

俺は今回新しくコンとパートナーになった。
そして初仕事を終え、天界に帰ってきた。

いつも通りに過ごしていたら、コンが俺の部屋にいきなり怒りながらやって来て、
その次の日にはアイザ様にパートナーの解消を申し出た。
しかし、コンが俺と一緒に過ごすことで問題ないらしい。

…どういう事だろうか?

コンは俺と恋人になりたいのだろうか?
しかし、恋人になりたいとは言っていなかった。

嫉妬や妬みで、俺が他の奴と過ごすのが気に入らないのだろうか?
しかしコンの態度からどうも考えられない。

俺が誰かと過ごす事で、コンに被害があるといった感じだ。
でもそれは妬みや嫉妬ではない…。
ではこの状況は一体何なのだろうか?


俺はよく、何を考えているのか分からないと言われる。
そして何人の者が、気楽に俺と体だけの付き合いを持ち、それ以上深く関わる事はない。

しかしコンに対しては、俺が散々言われてきた事を言いたい。


何を考えているのか分からない。


初めてコンと出会い、パートナーになって仕事をした時からだ。
コンは、時たま驚いた様子で俺を見ることがあった。

なぜ俺を見て驚いているのだろうか?
今まで俺と過ごしてきた者で、俺に驚く態度をした者はいなかった。

そしてそれからは、俺がコンに驚かされ、混乱させられている。


…俺も眠ろう。


普段から体力には自信がある方だが、今はゆっくりと眠りたい。

ベッドに向かうと、微動だにせずぐっすりと眠るコンがいる。

俺はそんなコンを不思議な気持ちで眺めながらその隣に横になり、久しぶりに長い眠りについた。





コンと一緒に過ごす生活は思った以上に順調だった。
コンに合わせて早寝早起きをし、今までとは対照的な生活を送っている。

仕事も問題なく進み、あれ以来コンが怒っている姿を見ていない。
と言うよりコンは出会った頃よりもよく笑うようになり、普段も機嫌が良い。

よく俺にも話しかけてくれるし、毎日問題なく過ごしている。
ただただ平和な毎日だ。

俺は誰か特定の1人とこんなにも長く過ごした事がなかったから、正直とても不思議な気持ちだ。
今まで少しでも長く誰かと過ごしたとしても、しばらくすると相手が自然と去って行く。
そういうものだと思っていた。

別に今の状況に不満もないので、このまましばらくこの状況が続くと思っていた。

だがある日、俺は自分からこの生活を壊してしまう事になる。





いつもの様に、コンと一緒にベッドで眠りにつこうとしていた。
朝まで並んでそのまま眠るだけだ。

しかし先ほどからどうも落ち着かない。
どうしたのだろうか?

なかなか寝付けずにいると、まだ眠っていなかったコンがじっと俺の顔を見ているのに気付いた。

「…眠れない?」

「悪い。起こしてしまったか?」

「いや…俺もちょっと眠れなくて…。」

「珍しいな。いつもすぐに眠るのに。」

「うん…シルはさ、常に誰かと過ごしていたよな。」

「? 特定の人物では無いが、そうだな。あまり1人では過ごしていない。」

「実は俺もそうなんだ…誰か特定の奴と長く一緒に過ごした事がない…。」

「そうなのか?」

「そうなんだ…。だから、誰かとこんなに長く過ごすのは初めてで、何だか不思議な気分だ…。」

いつもはハッキリと話すコンだが、どうやら今日は様子がいつもと違う。
俺もコンも互いに黙ってしまう。

もうコンは眠くなってきただろうか?
俺は先ほどと変わらず寝付けそうにないため、起き上がりベッドから降りた。

「どこ行くんだよ!?」

部屋から出ようと扉に手をかけた時、後ろでコンから声を掛けられた。

「寝付けないから、少し散歩してこようと思う。」

「…シル…その…お前今…欲求不満なんだよ…。」

小さな声で答えるコン。
しかし静寂な部屋ではコンの小さな声もしっかりと聞き取れる。

「…欲求不満?」

俺は振り返り、ベッドの上で起き上がっているコンを見つめた。

「うん…シルは今まで毎日のように…誰かと…ヤっていたから…あんまりそういう事なかったんじゃないかな…。」

視線を落としながら話すコン。

「シルは俺と過ごすようになって…その…ずっとしてなかったろ?だから…体が…。」

俺は落ち着きのない気持ちが、体の疼きに変わっているのを感じていた。
そしてゆっくりコンの方へ歩いていく。

「よく考えれば、シルは今まで通りの生活をしてただけだ。でも、俺が他の誰よりシルといるのが楽だったから、シルを今の生活に変えてしまったんだ。別に恋人でもないし、シルもたまには他の誰かと過ごしても良いのに。
本当に自分からは行動しないんだよな。…そのおかげで俺は一緒にいられるんだけれど…。」

俺はもうベッドの側まで来ていたが、コンは下を向いたまま話していてどうやら俺に気付いていないようだ。

「だからさ、恋人じゃなくても…恋人になったらきっとパートナー解消してしまうからさ…他の奴らのように…俺で良ければ…っんんっ!?」

俺はコンが言い終わらないうちに押し倒し、そのまま貪るようにキスをした。

「んんっ…まっ…いきっ…っちょ…んんっ…。」

いきなりで驚いた様子のコンだが、抵抗はせずにそのまま腕を俺の首に回してくる。

俺はキスを止める事なく、勢いよく自分とコンの服を脱がしていく。
こんなにも無我夢中になって相手を求めることは初めてだ。

またコンに驚かされている。

しかしすぐに思考は止まり、ただ目の前のコンを求めて勢いが増し体が熱くなっていく。

「…はっ…シルっ…もうちょっと、ゆっくり…はっ…んんっ!?」

俺は止める事なくコンにキスをしながら、両手でコンの体中を撫で回しながら掴んでいた。

「っんんっ…そこ…いたっ…やっ…つまむ…っ…ふっ…。」

こんなにも余裕がない事があっただろうか?
普段相手のペースに合わせたり、相手が俺にするのを眺めていたのが嘘のようだ。

こんな事、初めてだ。

俺はキスを止め、コンの入り口に手を置き指を入れていく。

「ふっ…っつ~んんっ。」

コンは俺から手を離し、手の甲を自分の口の上に置く。

「…?柔らかい…?」

コンはずっと俺と過ごしていたはずだ。
なのになぜこんなに柔らかいのだろうか?

俺が疑問に思っていると、コンが真っ赤になった顔を両手で隠しながら話し始めた。

「んんっ…シルがっ…欲求不満なのを…少し前から気付いて…いて…ふっ…今日寝る前…んんぅ…少し…慣らして…んぁあ!?!?」

俺は後先考えず、コンの中に無理矢理入っていた。

「あっ…おっき…ほんと…止まって…うぅっ…ぅっ…うっっ…。」

気付いたら激しく腰を動かし、俺自身をコンに打ち付けていた。
コンに俺を刻みつけているかのような感覚で必死になっていた。

少しでも深くコンと繋がるため、俺はコンの片足を持ち上げて掴み、より奥へより早く動かしていく。

「うっ、うっ、うっ…んっ、んっ…うぅ…。」

今やコンは顔を隠すことをやめ、両手でシーツを握り、涙目になっていた。
しかし俺は止まらず、止めることが出来ず、勢いよくコンの中に吐き出した。

「くっ…。」

全身に快楽の痺れが走った。

しばらく強くコンにしがみついていたが、少し落ち着いてコンの顔をみると、コンは涙を流していた。

「ううっ、うっ…。」

「!? 痛かった…よな、すまない…。コン、大丈夫か!?」

「うっ…せっかく…パートナーを…見つけることが出来たのに…うっ…どうして俺は…上手くいかないんだろう…。」

「どう言うことだ?」

「パートナーだけで良かったんだ…なのに…好きになったら…また…終わってしまう…うぅ…。」

コンが…好き?

「俺の事が好きなのか?何が問題なんだ?」

「だって…好きになると…今まで必ず上手くいかなくなるっ…んんっ!?ちょ…どうして、大きくなって…あっ…ンンッ!?」

俺は先ほどとは違う快楽の痺れを体に…頭に…そして…心臓あたりに感じた…。

「ちょ…どうして…お前も…んんぅ…俺の事…好きになってるん…だよっ…ぁあっ!!!」

俺がコンを好き。コンがそう言った。

俺はコンが好きなのか。これが好きという気持ちなのか。

俺は今、顔中に血が巡っているのが分かる。
そして再びコンに強く打ち付け始める。

「あぅ、あっ、あっ、んんぅ、ん、んっ、んっ。」

コンは俺の事を何でも知っているんだな。
先ほどから快楽とともに、頬の辺りにくすぐったさも感じている。

「どう、してっ、んんぅ、喜んでっっ、んんっ、なに、わらっ、って、るんだ、ああっっつ!!!」

全身が痙攣し、仰反るコン。

しかし俺の動きが止まりはしない。


きっと一晩中、このまま止まらないだろう。
だがコンもそれでも構わないはずだ。


コンは俺のことをよく分かっているようだから…。





「化け物め…。」

翌朝、コンはベッドの上でうつ伏せになりながら口だけを動かしていた。
全身に力が入らないようで、口以外は全く動く気配がない。

俺も隣で横になりながら、片手でコンの髪をいじっていた。

「皆こんなのを求めているのか…そりゃ…たまにの相手でいいよな…。」

「? 俺は1人だけとこんなに続けた事はないぞ?複数だとあり得るが…」

コンが思いっきり俺を睨む。最初の頃のコンを思い出す。
しかし今のコンは動くことが出来ない。
なので、睨まれながらも今度はコンの頭を撫で始める。

「俺も久しぶりに体のだるさを感じたよ。心地よいだるさだ。」

「シルとは…しばらくパートナーを続けたいと思っている…。これからどうなるか分からないけど…。」

「…パートナーだけか…?」

俺は少し体を起こし、コンに近づいた。

「…っつ!?」

コンは本当に体が動かないようだ。驚いても体がついて来ていない。

「…恋人としても…一緒にいたい…。」


俺は今まで、自分に感情が無いのだと思っていた。

「シル…笑うな…そして、喜びすぎだ…。」

俺はこれから、コンに色んな感情を教えてもらえるのだと思う。

俺はコンの額に、優しくキスを落とした。
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