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ハルとレイ
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一人の青年がビルの屋上から街を眺めていた。
空は徐々に明るくなり、街はうっすらと霧がかかっている。
ビルの屋上に柵はなく、青年は縁に腰掛けていた。すると、青年の隣に誰かがそっと舞い降りてきた。
「ハル。昨日も休まずに働き続けたでしょ。俺が書類を届けに行っている間は休むよう言ったのに。」
ハルと呼ばれた青年は、隣に降り立った人物に向け、ゆっくりと顔を上げた。
「レイ、おかえり。ちゃんと休んだよ。」
「嘘。ハル、今の自分の顔分かってないでしょ。」
レイはそういうと、両手をハルの頬に当て、ギュッと力を込める。
「いっ…休んだって…ちょっとだけ…仕事したけどすぐ…終わったし。」
「休憩所に帰った形跡がなかったよ?ここまで探し回ったんだよ?」
レイに言われ、ハルは視線を泳がせてしまっている。
そんなハルの様子を見て、レイは思わず微笑み両手をハルの頬から離す。
「今回もハルの働きで仕事が予定よりだいぶ早くに片付いたよ。今日はこのまま帰って報告書を提出して休んでしまおう。」
レイがそう言うと、ハルはまた視線を街へと戻す。
何か考え事をしている表情のハルに、レイはそっと片手を差し出す。
「さあ、帰ろう。帰ってゆっくり休もう。」
ハルはレイに視線を戻し、ゆっくりと差し出された手を掴み立ち上がった。
そしてそのまま2人が浮かびあがると、どこからか風が吹いたのと同時に2人の姿は何処かへ消えてしまった。
天界へ辿り着いた2人は、真っ白な建物の廊下を歩いていた。
ここでは何処へ行っても、恋人同士が寄り添い、抱き合っている姿をあちらこちらで見かける。
時折レイが横目でハルの様子を見るが、ハルはきつく前を見つめ目的地に向かって歩き続ける。
そして目的の部屋の前に着くと、ようやくレイがハルに声を掛けた。
「ハル、すごく険しい顔しているけど大丈夫?」
「…俺は大丈夫。というか、部屋の中が…大丈夫だろうか?」
「あぁ…。前回タイミングが悪かったもんね。まぁお昼休みだったし、今日はほら、朝一番だし大丈夫だとは思うけど…。」
「俺も入らないとダメなんだよな?」
「報告書の提出は必ず2人でって言われているからね。」
「…すぐに終わらせよう。」
2人はお互いに顔を見合わせ、扉に向き直り、ノックをして扉を開けた。
「んっ…んっ……あっ…やっ…あっ、あっ、あっ…あっあぁああっ」
ハルとレイが扉を開けると、机の上で絡み合い、ちょうど絶頂を迎えた2人の人物がそこに居た。
「っつ…!!!」
「……。」
その光景を目にしたハルは息を呑み、レイは呆れた顔で視線を向けた。
「つっ……ふぅ……ん?あぁ…お前たちか…。何か用なのか?」
机の上で覆いかぶさっていた人物が2人に気付き、起き上がって2人に声をかける。
覆いかぶさらていた人物は、抜かれる時に「んっっ…。」と声を上げたきり、机の上に倒れたまま力尽きてしまった。
「…アイザ様、勤務時間中ですよ。せめて人目のつかないところでお願いします。」
レイが呆れた声で話かける。
「ん?もう朝なのか?お前たちが急用で押しかけてきたのかと思ったぞ。」
「もう朝ですね、窓の外が明るくはありませんか?」
「うむ、本当だな。それにしてもお前たちはいつもタイミングが悪いな。偶然にも程があるぞ。」
「奇遇ですね。同じ事を思っていました。」
レイは淡々と答えると机まで歩き、そこに倒れている人物には目もくれず、空いている場所に報告書を置いた。
「今回の報告書です。ではこれで失礼致します。」
レイはそう言うと相手の反応を待たず、先ほどから全く動かないハルの所まで戻り、肩を掴みながら部屋を出て扉を閉めた。
空は徐々に明るくなり、街はうっすらと霧がかかっている。
ビルの屋上に柵はなく、青年は縁に腰掛けていた。すると、青年の隣に誰かがそっと舞い降りてきた。
「ハル。昨日も休まずに働き続けたでしょ。俺が書類を届けに行っている間は休むよう言ったのに。」
ハルと呼ばれた青年は、隣に降り立った人物に向け、ゆっくりと顔を上げた。
「レイ、おかえり。ちゃんと休んだよ。」
「嘘。ハル、今の自分の顔分かってないでしょ。」
レイはそういうと、両手をハルの頬に当て、ギュッと力を込める。
「いっ…休んだって…ちょっとだけ…仕事したけどすぐ…終わったし。」
「休憩所に帰った形跡がなかったよ?ここまで探し回ったんだよ?」
レイに言われ、ハルは視線を泳がせてしまっている。
そんなハルの様子を見て、レイは思わず微笑み両手をハルの頬から離す。
「今回もハルの働きで仕事が予定よりだいぶ早くに片付いたよ。今日はこのまま帰って報告書を提出して休んでしまおう。」
レイがそう言うと、ハルはまた視線を街へと戻す。
何か考え事をしている表情のハルに、レイはそっと片手を差し出す。
「さあ、帰ろう。帰ってゆっくり休もう。」
ハルはレイに視線を戻し、ゆっくりと差し出された手を掴み立ち上がった。
そしてそのまま2人が浮かびあがると、どこからか風が吹いたのと同時に2人の姿は何処かへ消えてしまった。
天界へ辿り着いた2人は、真っ白な建物の廊下を歩いていた。
ここでは何処へ行っても、恋人同士が寄り添い、抱き合っている姿をあちらこちらで見かける。
時折レイが横目でハルの様子を見るが、ハルはきつく前を見つめ目的地に向かって歩き続ける。
そして目的の部屋の前に着くと、ようやくレイがハルに声を掛けた。
「ハル、すごく険しい顔しているけど大丈夫?」
「…俺は大丈夫。というか、部屋の中が…大丈夫だろうか?」
「あぁ…。前回タイミングが悪かったもんね。まぁお昼休みだったし、今日はほら、朝一番だし大丈夫だとは思うけど…。」
「俺も入らないとダメなんだよな?」
「報告書の提出は必ず2人でって言われているからね。」
「…すぐに終わらせよう。」
2人はお互いに顔を見合わせ、扉に向き直り、ノックをして扉を開けた。
「んっ…んっ……あっ…やっ…あっ、あっ、あっ…あっあぁああっ」
ハルとレイが扉を開けると、机の上で絡み合い、ちょうど絶頂を迎えた2人の人物がそこに居た。
「っつ…!!!」
「……。」
その光景を目にしたハルは息を呑み、レイは呆れた顔で視線を向けた。
「つっ……ふぅ……ん?あぁ…お前たちか…。何か用なのか?」
机の上で覆いかぶさっていた人物が2人に気付き、起き上がって2人に声をかける。
覆いかぶさらていた人物は、抜かれる時に「んっっ…。」と声を上げたきり、机の上に倒れたまま力尽きてしまった。
「…アイザ様、勤務時間中ですよ。せめて人目のつかないところでお願いします。」
レイが呆れた声で話かける。
「ん?もう朝なのか?お前たちが急用で押しかけてきたのかと思ったぞ。」
「もう朝ですね、窓の外が明るくはありませんか?」
「うむ、本当だな。それにしてもお前たちはいつもタイミングが悪いな。偶然にも程があるぞ。」
「奇遇ですね。同じ事を思っていました。」
レイは淡々と答えると机まで歩き、そこに倒れている人物には目もくれず、空いている場所に報告書を置いた。
「今回の報告書です。ではこれで失礼致します。」
レイはそう言うと相手の反応を待たず、先ほどから全く動かないハルの所まで戻り、肩を掴みながら部屋を出て扉を閉めた。
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