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運命のアルファを探す俺

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次の日も、そしてその次の日も、俺は電車の中で相手の視界に入らない斜め後ろに立っていた。
そして電車を降りてから改札を出るまでは、少し後ろをついて行く。
相手に気付かれない位置に立ち続ける俺。

何の進展もなし。そりゃ進展するはず無いわな。
いやだってどうしろと? どうやって声をかけるのが正解?

ずっと見ていたい。けれど相手の視界に入る勇気はない。
隣に立つのは緊張するので少し離れていたいけれど、でも近づきたい。

・・・なんだこのわがままちゃんは。


俺は普段よりも朝の通勤時間がずっと短く感じるようになっていた。
あと、早起きになった。



そんな風にずっと進展が無いまま数日が経ったある日、俺はとうとうある決心をし、放課後の教室で亮に宣言していた。

「決めた。ギリストーカーだけれど、今日の放課後相手に会うため、相手の高校の外で待ち伏せする」

「ギリアウト。いや・・・ギリ付ける意味ないな?」

「相手の学生服から、どこの高校かも調査済み」

「・・・蓮、明日の授業の予習範囲分かってる?明日おそらく当てられるぞ」

「外で待ち伏せして声をかける。
朝は通学中だし、声をかけてもゆっくり話せないから、やっぱり放課後が良いと思って」

「蓮は今、俺と会話をしていないんだな?蓮の内なる俺に話しかけているんだな?」

「だから今日は教室に残らないけれど、亮はいつも通りでいいからな」

「うん・・・俺も内なる蓮と、一緒に教室に残るようにするわ」

「亮、明日また・・・話を聞いてほしい」

「俺はちょうど今、蓮に話を聞いてほしい気もするが・・・幸運を祈る」

俺はそのまま教室を飛び出す。
もう今日行動しなければ、ずっと話しかけられない気がするんだ。
不安もあるけれども、相手と話す事が出来たら・・・考えるだけで凄く嬉しい。



次の日、亮からは、俺が帰った後泰昌が教室にやって来て、一緒に帰ったと聞かされた。

しかし俺は、亮の話を聞く余裕が全く無く、一日ずっと上の空になっていた。
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