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第五話
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昨日はまともにテオの顔が見れなかった。
だって、俺が平常心、平常心と唱えてる横で「リアン様は美しいですね」やら「リアン様、好きです」などと言われ続けてたんだから!!
もはや揶揄ってるとしか思えない……!
でも、不思議と嫌じゃない。なんなら嬉しいような気もしてくる……ぐぬぬ。
何をやるにもテオの顔が浮かんできてしまい、あんまり眠れなかった。
「おはようございます、リアン様。今日は珍しく起きてらっしゃるのですね」
「う、うん……」
今日もまたキスをされるかもしれない、とビクビクしているとテオが笑う。
「そんな怯えなくても捕って食べたりはしませんよ」
「っ! もー、そういう言い方が怖いんだって!」
「それはそれは失礼しました。あまりにもリアン様が怯えて可愛らしいものでしたから」
テオ爽やかに笑いながら着替えを手伝ってくれる。
なんだかくちびるがスースーする。
……朝のキスがなくなって寂しいなんて、全然思ってないからね!
今日は屋敷の中をあちこち散歩した。
主人がいない間も少人数の執事やメイド、庭師やコックが屋敷に住んでおり、どこも傷んだ様子はない。
すれ違う俺にあたたかく声をかけてくれる人ばかりで本当に良かった。
王都の屋敷は人の出入りが激しく、落ち着かないときもあったけどこの屋敷には訪問者もいないし、付き添っているのはテオだけだから、なんだかいつもより呼吸をするのが楽だった。
婚約破棄されるとわかっていたけど、王子の婚約者として振る舞うのは結構大変だったなあ。
整えられた綺麗な庭でのんびりとアフタヌーンティーをしていると、メイドのマーサが形相を変えて駆け込んできた。
「マーサ、そんなに慌ててどうしたの?」
「リ、リアン様……っ! 第二王子がっ!」
「アルフレッド様がどうしたの?」
「リアンはここか?」
そう言って現れたのは、もう会うことがないと思っていたアルフレッド王子だった。
「え?! なんでここに?!」
「婚約者がへそを曲げているのだ。機嫌を取るのは夫の役目だろう?」
「は……い?」
王子はなにを言っているんだ?
婚約者? 夫? 婚約者破棄したから関係ないのに……。
「どういうことなんでしょう、アルフレッド様」
「リアンは俺がジョンと仲良くしているのに嫉妬してしまったんだろう? なに、俺は優しいから婚約破棄を取り消してやろう」
「嫉妬なんかしていません。私は婚約破棄を受け入れました。どうぞ、アルフレッド様はジョンとお幸せに」
「いつまで意地を張っておるのだ。リアン、王都へ戻るぞ」
アルフレッド王子が俺の手を取ろうとする前に、テオが俺の前に庇うように立ってくれた。
だって、俺が平常心、平常心と唱えてる横で「リアン様は美しいですね」やら「リアン様、好きです」などと言われ続けてたんだから!!
もはや揶揄ってるとしか思えない……!
でも、不思議と嫌じゃない。なんなら嬉しいような気もしてくる……ぐぬぬ。
何をやるにもテオの顔が浮かんできてしまい、あんまり眠れなかった。
「おはようございます、リアン様。今日は珍しく起きてらっしゃるのですね」
「う、うん……」
今日もまたキスをされるかもしれない、とビクビクしているとテオが笑う。
「そんな怯えなくても捕って食べたりはしませんよ」
「っ! もー、そういう言い方が怖いんだって!」
「それはそれは失礼しました。あまりにもリアン様が怯えて可愛らしいものでしたから」
テオ爽やかに笑いながら着替えを手伝ってくれる。
なんだかくちびるがスースーする。
……朝のキスがなくなって寂しいなんて、全然思ってないからね!
今日は屋敷の中をあちこち散歩した。
主人がいない間も少人数の執事やメイド、庭師やコックが屋敷に住んでおり、どこも傷んだ様子はない。
すれ違う俺にあたたかく声をかけてくれる人ばかりで本当に良かった。
王都の屋敷は人の出入りが激しく、落ち着かないときもあったけどこの屋敷には訪問者もいないし、付き添っているのはテオだけだから、なんだかいつもより呼吸をするのが楽だった。
婚約破棄されるとわかっていたけど、王子の婚約者として振る舞うのは結構大変だったなあ。
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「マーサ、そんなに慌ててどうしたの?」
「リ、リアン様……っ! 第二王子がっ!」
「アルフレッド様がどうしたの?」
「リアンはここか?」
そう言って現れたのは、もう会うことがないと思っていたアルフレッド王子だった。
「え?! なんでここに?!」
「婚約者がへそを曲げているのだ。機嫌を取るのは夫の役目だろう?」
「は……い?」
王子はなにを言っているんだ?
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「どういうことなんでしょう、アルフレッド様」
「リアンは俺がジョンと仲良くしているのに嫉妬してしまったんだろう? なに、俺は優しいから婚約破棄を取り消してやろう」
「嫉妬なんかしていません。私は婚約破棄を受け入れました。どうぞ、アルフレッド様はジョンとお幸せに」
「いつまで意地を張っておるのだ。リアン、王都へ戻るぞ」
アルフレッド王子が俺の手を取ろうとする前に、テオが俺の前に庇うように立ってくれた。
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