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王女リリアと西の魔王
チャラティス湖・1
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ゴブリンを撃退した私たちは、森を抜け、湖にたどり着いた。
「ここは、チャラティス湖だんべ。森とギザ山脈の境目の湖だな」
ジョージが言う。
この湖を過ぎれば、西の魔王の城のあるギザ山脈へとたどり着くはずだ。
「さて、どう越えようか?」
私は言った。
大きな湖だ。
迂回すれば、それなりの時間がかかる。
「できれば、渡し船かなんかがあれば、ありがたいんだけどな」
そう。
もし、船かなんかがあるなら、それで直線に渡れちゃえば、一番いい。
「ちょっと前までは、あったんですけどね……」
ホルスが言った。
「そうなの?」
「はい。ただ、ここ最近は、なにしろ……」
「西の魔王が暴れてるからダメってわけ?」
「と、言われてます。なにせ、いつ、空から襲われるかわかりませんからね」
「そりゃま、渡し守だって、船を出したくはないってわけか」
私はため息をついたけど、ジョージが、
「なんだ、姫さんにしては諦めがええね」
と、笑った。
「だって、ないもんはどうしようもないでしょ」
「渡し守が営業してるかどうかって話なら、そりゃ、ねえもんはねえべな」
「でしょ?」
「かといって、船がどこにもねえかは別だ」
「どういうことよ」
「渡し守の商売さ畳もうって時に、船までバカ正直に持ってく奴ばっかでもあんめえ、面倒だから、船のことはここに置いて出てく奴も多いと思うべ」
私とホルスは顔を見合わせた。
「それはまあ……」
「そうかもですね……」
「お嬢ちゃんとお坊ちゃんは、もう少し世事に詳しくならなきゃなんねえな」
「はいはいっ」
私は頬を膨らませたが、といって、ジョージの言う通り、船を探してみてもいい気になっていた。
※
私たちは、しばらく、手分けして船を探した。
やがて、
「これ、どうでしょう?」
と、ホルスが言った。
係留されっぱなしの手漕ぎボートを見つけたのだ。
「うーんこれ、大丈夫?」
「ボクもボートは専門家じゃないから……」
そんな私たちを他所に、ジョージはふんふんとボートのあちこちを見て、
「ま、大丈夫だんべ」
といい、船に飛び乗った。
「まったく、戦い以外のことは、まだまだ私よりあんたね」
私はため息をつきながら、続けて船に飛び込む。
最後にホルスも飛び乗ったが、その拍子にバランスを崩して、私の方に倒れ込んできた。
「わっ……」
「ん」
私は倒れ込んできたホルスに押し倒されてしまう。
ええ、なんなのよこの展開は。
ホルスの華奢な体が、私の上に密着してる。
ドキドキしてるのは、ホルスの心臓なんだか、私の心臓なんだかよく分からない。
ホルスは数秒、私の上に倒れていたが、やがて、顔を真っ赤にし、
「す、すいません」
と、立ち上がった。
「……いいわよ、別に」
体を起こしながら、私は答えた。
まだ、胸がちょっとドギマギしてるのは秘密だ。
私たちを見て、ジョージがにまにましていた気がしたけど、それについては気にしないことにしよう。
「ここは、チャラティス湖だんべ。森とギザ山脈の境目の湖だな」
ジョージが言う。
この湖を過ぎれば、西の魔王の城のあるギザ山脈へとたどり着くはずだ。
「さて、どう越えようか?」
私は言った。
大きな湖だ。
迂回すれば、それなりの時間がかかる。
「できれば、渡し船かなんかがあれば、ありがたいんだけどな」
そう。
もし、船かなんかがあるなら、それで直線に渡れちゃえば、一番いい。
「ちょっと前までは、あったんですけどね……」
ホルスが言った。
「そうなの?」
「はい。ただ、ここ最近は、なにしろ……」
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「なんだ、姫さんにしては諦めがええね」
と、笑った。
「だって、ないもんはどうしようもないでしょ」
「渡し守が営業してるかどうかって話なら、そりゃ、ねえもんはねえべな」
「でしょ?」
「かといって、船がどこにもねえかは別だ」
「どういうことよ」
「渡し守の商売さ畳もうって時に、船までバカ正直に持ってく奴ばっかでもあんめえ、面倒だから、船のことはここに置いて出てく奴も多いと思うべ」
私とホルスは顔を見合わせた。
「それはまあ……」
「そうかもですね……」
「お嬢ちゃんとお坊ちゃんは、もう少し世事に詳しくならなきゃなんねえな」
「はいはいっ」
私は頬を膨らませたが、といって、ジョージの言う通り、船を探してみてもいい気になっていた。
※
私たちは、しばらく、手分けして船を探した。
やがて、
「これ、どうでしょう?」
と、ホルスが言った。
係留されっぱなしの手漕ぎボートを見つけたのだ。
「うーんこれ、大丈夫?」
「ボクもボートは専門家じゃないから……」
そんな私たちを他所に、ジョージはふんふんとボートのあちこちを見て、
「ま、大丈夫だんべ」
といい、船に飛び乗った。
「まったく、戦い以外のことは、まだまだ私よりあんたね」
私はため息をつきながら、続けて船に飛び込む。
最後にホルスも飛び乗ったが、その拍子にバランスを崩して、私の方に倒れ込んできた。
「わっ……」
「ん」
私は倒れ込んできたホルスに押し倒されてしまう。
ええ、なんなのよこの展開は。
ホルスの華奢な体が、私の上に密着してる。
ドキドキしてるのは、ホルスの心臓なんだか、私の心臓なんだかよく分からない。
ホルスは数秒、私の上に倒れていたが、やがて、顔を真っ赤にし、
「す、すいません」
と、立ち上がった。
「……いいわよ、別に」
体を起こしながら、私は答えた。
まだ、胸がちょっとドギマギしてるのは秘密だ。
私たちを見て、ジョージがにまにましていた気がしたけど、それについては気にしないことにしよう。
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