ソード・プリンセス! ~剣術王女の冒険日記~

吉口 浩

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王女リリアと西の魔王

帰り道・2

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 西の魔王を連れた私たちは、山道を歩いて、ひとまず、ドワーフの里へと向かった。

「おお、帰ってきたか!」

 ドワーフの里に入った私たちを見るなりそう言ったのは、ドワーフのビラだ。

「ただいま」
「で、首尾はどうなった」
「……長老さんのところで話すわ」

 私たちは、ビラと共に長老の家に向かい、そこで、起きたことすべてを話した。

「それはそれは……」

 長老はうなり、

「この野郎、成敗してやる!」

 と、ビラが西の魔王に躍りかかろうとしたけど、

「命は助けるって約束したのよ、私の顔を立てて」

 私が止めると、

「お前が言うなら……」

 と、しぶしぶながら納得したみたいだった。

「あ、そうだ」

 私は、腰のシンメリルの剣を抜いて、

「ありがとう」

 と、長老に返そうとしたが、長老は首を振った。

「持っておきなさい、お礼だ」
「でも……」
「それにどうせ、これからのお前さんには必要になるよ」
「……いただきます」

 私は長老に深く一礼をして、ありがたく、剣を腰に差し直した。

   ※

 ドワーフの里を出た私たちは、しばらく進んで、チャラティス湖に着いた。

「さーて、ここにボートを留めといたはずだけんども……」

 と、ジョージがボートを探そうとしたが、

「げげっ」

 と言って、動きを止めた。
 私とホルスにも、ジョージが止まった理由は分かった。
 タキシードを着た少年――魔貴族のラムザが、ジョージの留めたボートの前に立っていた。

「やあ」

 ラムザがにこやかに言う。

「また会うのが、ずいぶんと早かったわね」

 私は言った。

「ああ、思ったよりも体の回復が速くてね」
「なんの用?」
「また遊びたいだけさ、分かってるだろ?」

 ラムザはその手に鎌を出現させ、

「今度は一騎打ちといかないか、お嬢ちゃん。前のは、一対一じゃ完敗したみたいなもんだから気になってるだろ?」

 と、笑う。

「こんな勝負に乗ること、ないですよ」

 ホルスが言った。
 声の感じで、心配してくれていることが分かる。

「ありがとう」

 私はホルスに笑ったあと、

「でも、いいわ。やりましょ」

 そう言って、剣を抜いた。
 ホルスとジョージと、ついでに西の魔王を、手で後ろに下がらせる。

「ノリがいいね、魔王の正体を暴いて、調子に乗っちゃってるのかな?」
「そうかもね」

 ラムザが鎌を構えてじりじりと動く。
 私は呼吸を整えながら、剣を構える。
 一秒とも一分とも分からないぐらいの時間が経った時、ラムザが鎌を構えて跳んできた。
 この前と同じように速い。
 ――でも、ニ回目だ。この前よりはハッキリと見える。
 私は自分から、身を伏せながらラムザの方に突っ込んだ。
 これはラムザも予想していなかったようで、慌てて鎌を振り下ろそうとする。
 が、先にこちらから近づいてしまえば、私の剣の方が速い。
 
 ザンッ

 という音と共に私の一撃が、ラムザの鎌の柄を斬っていた。
 ラムザの鎌が地面に落ちる。

「なっ……」

 とラムザが言った瞬間。
 私はジャンプして、その顔面を蹴飛ばしてやった。
 
「こないだのおかえし」

 私は言った。
 ずっこけたラムザに、剣を突きつける。

「あんたには地図をもらった恩もあるから、命までは取らないわ」

 私が言うと、ラムザは、

「はは……はははっ!」

 と笑う。

「まいった、まいった。今度こそ俺の負けだ、言い訳不能さ」

 ラムザは立ち上がると、

「俺の最高に大好きな人間だよ、君は」

 そう言って、どこかへと去っていった。

「いやー、姫さんもやるでねえか、見事にこの前のリベンジ・マッチを果たしただな」

 ジョージはそう言いながら近づいてくる。
 一方でホルスは、不機嫌な顔。
 私のそばまで来ると、

「意地のためにああいうことをするのは、やめてください」

 と、言った。
 私は、

「……ありがとう、二人とも」

 とだけ答えた。
 どっちに対しても、本音だ。
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