ソード・プリンセス！ ～剣術王女の冒険日記～

王女リリアと西の魔王

魔王の部屋・５

「いやあ、お見事、お見事。完璧に西の魔王を討伐したわけだね、諸君は」

　そう言いながら、現れた相手は――魔貴族のラムザだった。

「やっぱり生きてたのね、あんた」

　私はそう言い、ラムザの方を向いて剣を構えた。
　隣のホルスも、ラムザに手のひらを向ける。

「おいおい、君に刺されたぶんが効かなかったわけじゃないんだ、戦うほどの元気はないよ」

　ラムザはそう言って手を挙げる。

「……どうだかね」
「本当さ、君の強さに誓って嘘は言ってない」
「あんた、どこまで見てたの？」
「ずっと……と、言いたいところだが、そこの西の魔王さんの正体が分かった辺りからさ。君に刺されて、こりゃかなわんと思ったもんだから、灰になったふりをして姿をくらました。傷がある程度癒えたところで、城に様子を見に来たんだ――君たちが城で戦ってるのを見れるかと思ったもんだから」
「で、ここにたどり着いたの？」
「西の魔王の部屋で戦ってる可能性は高いと思ったからね。ま、代わりに見れたのは、紫のちび妖魔の泣いてるところだったってわけだけど……」
「大きなお世話じゃわい」

　こう言ったのは、西の魔王だ。

「ま、俺が正しい道を教えてあげたおかげで、君たちは見事に西の魔王をやっつけられたってわけだ。感謝してほしいね」

　なんだか図々しいことを言うラムザに向かって、

「……西の魔王を始末したいと思ってただけじゃないんですか」

　こう言ったのはホルスだ。
　普段は誰にでも優しい彼も、ラムザにはなんだか手厳しい。

「西の魔王の正体に怪しげなところがあると思ってたのは事実だがね、そこまで嫌ってたわけでもないさ。俺はここのお客さんとして、悪くもない待遇だったからね」
「うぬぬ、恩知らずめ」

　西の魔王はうめく。

「おいおい、悪く思わないでくれ、俺なりに、強い子たちに敬意を示した結果なんだ。あんたに悪意があったわけじゃない」

　と、ラムザは西の魔王に言った。

「とはいえ、これまでずっと、騙されてた魔物たちは可哀想だな……城の連中にあんたの正体を言ってから、おいとまするとするよ。……じゃあな、お嬢さん！」

　ラムザは、そう言って、風のように立ち去った。

「おい、待て！　それは困る……とほほ」

　と、西の魔王は肩を落とす。

「ふん、あのラムザが言わなくても私が城中に言いふらしてくれる！」

　そう言ったのは、ジョージの腕の中のデュラハンの頭だった。