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王女リリアと西の魔王
魔王の部屋・1
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私たちは、デュラハンの頭を抱えて地下へと向かった。
幸い、案内人もいることだし道行きはスムーズだ。
「それにしてもだな、姫さん」
廊下を歩きながらジョージが言った。
「なに?」
「さっき、デュラハンの頭を、斬らずに蹴っ飛ばしたのはなんでだべ?」
「それは……」
自分でも、ちょっとよく分からない。
あの状況なら、蹴るより斬る方が速かった。
それに、デュラハンの頭を人質に取るのも、あの時点で思いついていたわけじゃない。
「なんとなくよ」
私は答えた。
「そだべか。オラは、あの魔貴族との戦いのせいだべかと思うたんだけどんも」
「どういうことよ?」
「姫さん、蹴っ飛ばされて痛い目にあったでねえか」
そう言われれば、もしかしたら、そうなのかもしれない。
魔貴族のラムザとのつばぜり合いの最中に、お腹を蹴られて吹っ飛ばされた。
もし、ホルスたちの手助けがなければ、倒れたところをそのまま斬られて、負けていただろう。
「……かもね」
私は答えた。
たしかに、ラムザに蹴られたことを心の底で意識していたせいだとしてもおかしくはない。
「そう言われると、なんか自分に腹立つわね」
なんだか、負けを認めて、あいつから影響を受けたみたいな感じがする。
すっごいやな奴だったのに。
「……あんまり、気にしない方がいいですよ」
そう言ったのはホルスだ。
「ちょっとしたことがリリアさんに影響したとしても……そいつに負けたってことにはなりません」
ホルスにしては、強めの語調だ。
『そいつ』なんて言っちゃうのも珍しい。
私は、
「ありがと」
と、笑った。
ホルスの微笑みが返ってくる。
その時。
「この左手の階段を降りたところが、魔王様の部屋だ」
ジョージが抱えている、デュラハンの頭が言った。
私たちは会話を中断して、階段を降りていく。
※
階段を降りると、扉があった。
高さはせいぜいニメートルばかりで、魔王のいる部屋の扉にしては小さい。
「本当にこんな部屋に、あのバカでかい魔王がいるの?」
私が見た限りでは、鋼鉄の鎧に身を包んだ西の魔王は、身長二十メートルぐらいはあったはずだ。
「魔王様御本人は、普段は空を飛んで、城の天井からつながる大穴を出入りされておる」
「じゃ、なんでこの扉があるのよ」
私が聞くと、
「そりゃ姫さん、食事を持ってくる奴や、用がある手下が出入りする場所は必要だんべな」
と、ジョージが言う。
デュラハンも、
「コボルドの言う通りだ」
と、言った。
「なるほどね」
私がうなずくと、
「乗り込みますか?」
ホルスが言う。
「乗り込みたいけど、正面からはやだな」
「なんだ、姫さんにしては弱気でねえか」
「……悔しいけど、さっき、ラムザに殺されかけてるからね。魔王がラムザより弱いってことは、多分ないだろうし」
「こっそり入りたいわけだべか」
「そんなとこよ」
「それは殊勝な心がけだべ」
「殊勝?」
「感心だってことだんべな、オラもこっそり入るのに賛成だ」
ジョージがうなずき、
「となると、この扉を破壊するのはよくありませんね」
こう言ったのはホルスだ。
「んだな、鍵を使って開けるべ」
そう言ってジョージは、私には見覚えのない、鍵の束を取り出した。
デュラハンはそれを見て、
「あ、私の鍵束!」
と、叫ぶ。
「いるかと思って、あんたの体から失敬しておいただよ」
ジョージはデュラハンにウィンク。
「どの鍵を使うか教えてくれる? デュラハンさん」
私が聞くと、
「……赤い鍵だ」
デュラハンは悔しそうに答えた。
「んだば、開けさせてもらうべ……」
ジョージはそう言うと、鍵穴に鍵を入れて、ゆっくりと回した……。
幸い、案内人もいることだし道行きはスムーズだ。
「それにしてもだな、姫さん」
廊下を歩きながらジョージが言った。
「なに?」
「さっき、デュラハンの頭を、斬らずに蹴っ飛ばしたのはなんでだべ?」
「それは……」
自分でも、ちょっとよく分からない。
あの状況なら、蹴るより斬る方が速かった。
それに、デュラハンの頭を人質に取るのも、あの時点で思いついていたわけじゃない。
「なんとなくよ」
私は答えた。
「そだべか。オラは、あの魔貴族との戦いのせいだべかと思うたんだけどんも」
「どういうことよ?」
「姫さん、蹴っ飛ばされて痛い目にあったでねえか」
そう言われれば、もしかしたら、そうなのかもしれない。
魔貴族のラムザとのつばぜり合いの最中に、お腹を蹴られて吹っ飛ばされた。
もし、ホルスたちの手助けがなければ、倒れたところをそのまま斬られて、負けていただろう。
「……かもね」
私は答えた。
たしかに、ラムザに蹴られたことを心の底で意識していたせいだとしてもおかしくはない。
「そう言われると、なんか自分に腹立つわね」
なんだか、負けを認めて、あいつから影響を受けたみたいな感じがする。
すっごいやな奴だったのに。
「……あんまり、気にしない方がいいですよ」
そう言ったのはホルスだ。
「ちょっとしたことがリリアさんに影響したとしても……そいつに負けたってことにはなりません」
ホルスにしては、強めの語調だ。
『そいつ』なんて言っちゃうのも珍しい。
私は、
「ありがと」
と、笑った。
ホルスの微笑みが返ってくる。
その時。
「この左手の階段を降りたところが、魔王様の部屋だ」
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私たちは会話を中断して、階段を降りていく。
※
階段を降りると、扉があった。
高さはせいぜいニメートルばかりで、魔王のいる部屋の扉にしては小さい。
「本当にこんな部屋に、あのバカでかい魔王がいるの?」
私が見た限りでは、鋼鉄の鎧に身を包んだ西の魔王は、身長二十メートルぐらいはあったはずだ。
「魔王様御本人は、普段は空を飛んで、城の天井からつながる大穴を出入りされておる」
「じゃ、なんでこの扉があるのよ」
私が聞くと、
「そりゃ姫さん、食事を持ってくる奴や、用がある手下が出入りする場所は必要だんべな」
と、ジョージが言う。
デュラハンも、
「コボルドの言う通りだ」
と、言った。
「なるほどね」
私がうなずくと、
「乗り込みますか?」
ホルスが言う。
「乗り込みたいけど、正面からはやだな」
「なんだ、姫さんにしては弱気でねえか」
「……悔しいけど、さっき、ラムザに殺されかけてるからね。魔王がラムザより弱いってことは、多分ないだろうし」
「こっそり入りたいわけだべか」
「そんなとこよ」
「それは殊勝な心がけだべ」
「殊勝?」
「感心だってことだんべな、オラもこっそり入るのに賛成だ」
ジョージがうなずき、
「となると、この扉を破壊するのはよくありませんね」
こう言ったのはホルスだ。
「んだな、鍵を使って開けるべ」
そう言ってジョージは、私には見覚えのない、鍵の束を取り出した。
デュラハンはそれを見て、
「あ、私の鍵束!」
と、叫ぶ。
「いるかと思って、あんたの体から失敬しておいただよ」
ジョージはデュラハンにウィンク。
「どの鍵を使うか教えてくれる? デュラハンさん」
私が聞くと、
「……赤い鍵だ」
デュラハンは悔しそうに答えた。
「んだば、開けさせてもらうべ……」
ジョージはそう言うと、鍵穴に鍵を入れて、ゆっくりと回した……。
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