11 / 33
王女リリアと西の魔王
魔法使いの少年・4
しおりを挟む
ホルスの火炎弾の爆発が焼き払った大木の向こう側からは、やっぱり二人のゴブリンが現れた。
「なんだあ?」
「木が燃えちまったあ」
とびっくりしてる。
「不意を打ち損ねて残念だったわね」
私は剣を構えながら言った。
「森林破壊はよくないんですけどね」
と、ホルスが手を構えながら言う。
ゴブリンたちは顔を見合わせたけど、すぐに、
「「かかれっ!」」
と叫んだ。
声に合わせて、ゴブリンたちの後ろの林から、十何人ものゴブリンが飛び出してくる。
「あわわわ、どうするだ姫さん」
今度はジョージが大慌て。
「あれぐらいの数ならどうってことないわよ」
私は言ったけど、私が剣を振るう間でもなかった。
ゴブリンが近づいてくるより先に、ホルスの指先から、何本もの光線が発射されたのだ。
ジュッ
という音と共に、それぞれのゴブリンが持つ武器――斧やら槍やら棍棒やら――に光線が直撃。彼らの持つ武器はたちまちに溶けてなくなってしまう。
「ゲギョッ?」
「ゲゴッ! ゲゴッ!」
あまりのことにゴブリンたちはパニック状態で、もはや言葉も忘れている有り様だ。
私は、
「こちらのお兄さんは偉大な魔法使いなのよ、それ以上逆らうと全員カエルにされちゃうから」
と、言ってやる。
ゴブリンたちはそれを真に受けたのだろう。
争うようにして、その場を走って去って行った。
ところが。
ゴブリンの中の動きの鈍い一人が、逃げようとしてずっこける。
しかも運が悪いことに、こけたところに折れた枝があったもんだから、その切っ先が、
ズブッ
と腕に刺さってしまった。
「アギャー!」
ゴブリンは大声で泣く。
「痛そうね……」
「言うて、オラたちに襲ってきた相手だんべ、バチが当たったんでねえか」
私とジョージがどうしたものかと思っていると、ホルスがさっとゴブリンのそばに駆け寄った。そして、枝を抜いた後に、傷口に手をかざして呪文を唱えた。
ゴブリンの傷口は消えてなくなる。
どうやらホルスは、回復の魔法を唱えたようだった。
傷の癒えたゴブリンは、不思議そうな顔をしたあと、先に逃げた仲間を追って走り去った。
「優しいじゃない」
私はホルスに言った。
「なんだか可哀想になって」
ホルスは寂しげな顔をして言った。
「んだども、こっちを襲ってきたゴブリンにあそこまでしてやるのは甘いんでねえか」
ジョージが言う。
私はジョージに、
「ジョージが言うのが正論だと思う」
と言ったあと、ホルスの方に向き直り、
「でも、私はあんたのこと好きよ」
と言った。
ホルスは、はにかむように微笑んだ。
「なんだあ?」
「木が燃えちまったあ」
とびっくりしてる。
「不意を打ち損ねて残念だったわね」
私は剣を構えながら言った。
「森林破壊はよくないんですけどね」
と、ホルスが手を構えながら言う。
ゴブリンたちは顔を見合わせたけど、すぐに、
「「かかれっ!」」
と叫んだ。
声に合わせて、ゴブリンたちの後ろの林から、十何人ものゴブリンが飛び出してくる。
「あわわわ、どうするだ姫さん」
今度はジョージが大慌て。
「あれぐらいの数ならどうってことないわよ」
私は言ったけど、私が剣を振るう間でもなかった。
ゴブリンが近づいてくるより先に、ホルスの指先から、何本もの光線が発射されたのだ。
ジュッ
という音と共に、それぞれのゴブリンが持つ武器――斧やら槍やら棍棒やら――に光線が直撃。彼らの持つ武器はたちまちに溶けてなくなってしまう。
「ゲギョッ?」
「ゲゴッ! ゲゴッ!」
あまりのことにゴブリンたちはパニック状態で、もはや言葉も忘れている有り様だ。
私は、
「こちらのお兄さんは偉大な魔法使いなのよ、それ以上逆らうと全員カエルにされちゃうから」
と、言ってやる。
ゴブリンたちはそれを真に受けたのだろう。
争うようにして、その場を走って去って行った。
ところが。
ゴブリンの中の動きの鈍い一人が、逃げようとしてずっこける。
しかも運が悪いことに、こけたところに折れた枝があったもんだから、その切っ先が、
ズブッ
と腕に刺さってしまった。
「アギャー!」
ゴブリンは大声で泣く。
「痛そうね……」
「言うて、オラたちに襲ってきた相手だんべ、バチが当たったんでねえか」
私とジョージがどうしたものかと思っていると、ホルスがさっとゴブリンのそばに駆け寄った。そして、枝を抜いた後に、傷口に手をかざして呪文を唱えた。
ゴブリンの傷口は消えてなくなる。
どうやらホルスは、回復の魔法を唱えたようだった。
傷の癒えたゴブリンは、不思議そうな顔をしたあと、先に逃げた仲間を追って走り去った。
「優しいじゃない」
私はホルスに言った。
「なんだか可哀想になって」
ホルスは寂しげな顔をして言った。
「んだども、こっちを襲ってきたゴブリンにあそこまでしてやるのは甘いんでねえか」
ジョージが言う。
私はジョージに、
「ジョージが言うのが正論だと思う」
と言ったあと、ホルスの方に向き直り、
「でも、私はあんたのこと好きよ」
と言った。
ホルスは、はにかむように微笑んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
山姥(やまんば)
野松 彦秋
児童書・童話
小学校5年生の仲良し3人組の、テッカ(佐上哲也)、カッチ(野田克彦)、ナオケン(犬塚直哉)。
実は3人とも、同じクラスの女委員長の松本いずみに片思いをしている。
小学校の宿泊研修を楽しみにしていた4人。ある日、宿泊研修の目的地が3枚の御札の昔話が生まれた山である事が分かる。
しかも、10年前自分達の学校の先輩がその山で失踪していた事実がわかる。
行方不明者3名のうち、一人だけ帰って来た先輩がいるという事を知り、興味本位でその人に会いに行く事を思いつく3人。
3人の意中の女の子、委員長松本いずみもその計画に興味を持ち、4人はその先輩に会いに行く事にする。
それが、恐怖の夏休みの始まりであった。
山姥が実在し、4人に危険が迫る。
4人は、信頼する大人達に助けを求めるが、その結果大事な人を失う事に、状況はどんどん悪くなる。
山姥の執拗な追跡に、彼らは生き残る事が出来るのか!
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
空の話をしよう
源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」
そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。
人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。
生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。
ちょっとだけマーメイド~暴走する魔法の力~
ことは
児童書・童話
星野桜、小学6年生。わたしには、ちょっとだけマーメイドの血が流れている。
むかしむかし、人魚の娘が人間の男の人と結婚して、わたしはずっとずっと後に生まれた子孫の一人だ。
わたしの足は水に濡れるとうろこが生え、魚の尾に変化してしまう。
――わたし、絶対にみんなの前でプールに入ることなんてできない。もしそんなことをしたら、きっと友達はみんな、わたしから離れていく。
だけど、おぼれた麻衣ちゃんを助けるため、わたしはあの日プールに飛び込んだ。
全14話 完結
児童小説をどうぞ
小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる