中年剣士異世界転生無双

吉口 浩

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第21章 サリーの誘拐

夜道のサリー

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 商店街で買い物をすませたサリーが「走るこぐま亭」への道を急いでいた。
 既に日は暮れている。
 ガレンドの街の城壁の門は、もうしまったころだろう。
 月明かりと家々から漏れる灯りにうっすらと浮かび上がる道を頼りに歩いていく。
 こぐま亭までほど近いある曲がり角まで近づいた時。
 後ろから突然現れた手足が、サリーの体をむんずとつかんだ。
 サリーの口はおさえられ、声も出せない。

「へへ……狙うなら姉ちゃんだと思ってたのさ」

 男はそんな声を出した。
 サリーは抵抗しようと指にはめた魔力の指輪に力をこめる。
 しかし、その集中は、腹に見舞われた拳に邪魔された。
 サリーの意識が、痛みとともにだんだんと薄らいでいく――。

 数十分後、走るこぐま亭である。
 五郎とルーが、1階の食堂で飲み食いをしていた。

「遅いな」

 エール酒を飲みながら五郎が言った。
 そう言われて、ルーが壁にかけられた時計を見、

「心配か」
「自分の女が夜道を歩いて心配でない男もいまいよ」
「たしかにな。とはいえ、あいつはあれで魔法の指輪を……」

 と、ルーがそこまで言ったところである。
 さささ、と、五郎たちのテーブルに近づくものがいた。
 顔には覆面をかぶっていて、ぎょろりとした目の玉を覗かせているだけだった。

「なにかな?」

 五郎が言った。

「今おっしゃってたサリーさん……とか言う方のことなんで」
「サリーがどうかしたかな」

 と五郎が問うと、

「へっへっへ……ちょいと、身柄を預かってましてね」
「なにっ」

 五郎は常に似合わず声を荒げた。
 それをおさえて、ルーが、

「つまり、お前がサリーをさらった、ということか?」
「ま、そういうことです」

 ルーが男の首元をひっつかんだ。

「なら、お前の命と引き換えにしよう」

 そう言ってルーが、男の首元に斧をかざす。

「へ、へへ……ところが俺のお仲間はそんなにお優しくないんで……俺を殺せばサリーさんだって戻らねえ」
「なにが望みだ」

 五郎が問う。

「俺についてきてくださればいいんです。ただ……武器はなしだ」
「分かった」

 五郎とルーは酒場のマスターに武器を預けて、男のあとについて歩き出した。
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