完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)

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「んまあ!失礼ねぇ社交界において私を知らないなんて、まぁ良いわ、自己紹介してあげる私はサハンナ・キンバリー、男爵令嬢にして王太子の婚約者よ」
ツンと上を向いて居丈高にいう彼女はオクタヴィア・アングラルドと同等だとでも言いたげだ。立場を弁えていないというのに何処までも図々しい。

「ほお、そのがなんだと言うのかね。大事な茶会を台無しにされた報いを受けて貰おうか」
「金蠅ですって!?何よ、ちょっと金持ちだからって」
だが、反論する途中で彼女は護衛たちに寄って捕縛されてしまう、キャンキャンと騒ぐ前に猿轡をされてしまうのだった。

モガモガと蠢く芋虫状態されたサハンナは今更に後悔している、喧嘩を売る相手を間違えたのだから仕方がない。

「良く聞け小娘、この国など私の気分ひとつでどうとでもなるのだ。しかし、この国には彼女アルメスの母親君がいる、だから我慢しているのだよ。わかるか?わからないのならば牢獄で考えるのだな」
「んもごご!んぎぃ」

「連れていけ」と手を上げればあっという間にサハンナは連れ去られた、とんだ捕り物劇を目の当たりにしたアルメスは終始驚いて声も発せない。

「これは済まないな外の護衛たちの怠慢と言える、私から謝罪しよう」
彼はそう言って腰を折る、それを見た彼女は大慌てで詫びる必要などありませんと宥めるのだった。

「彼女はなんと言うか、あの通り怖いもの知らずなのです、世間の一般常識を何処かへ落としてきたような人なの」
「あぁ、そうだろうな。私が言うのもなんだが国力の差も知らないのだろう」
彼も彼女も肩を竦めると「プッ」と噴き出しやがて大笑いに変わっていった。


***


「なんですって?サハンナ・キンバリーがそのような?」
「ええそうよ、驚いたわ」

兄ニールはサハンナの近辺を探っていたらしいが、どうも後手に周ってしまう。そして、悔しそうに「なんてことを」と憤った。彼なりに動いていたのだが、どうにも上手くいかない。

「ご主人様、サハンナのことは申し訳ありません。ですが、王家のことは調べましたよ」
「そう、それで何か報せが?」
「ええ、王太子に動きがありました、どうやら正妃選びをやり直す様子です。あんな頭空っぽを推すほうが可笑しいのですがね」
「まぁ、正妃を替えるねぇ今更だわ」

彼女はホゥと溜息を洩らし、少し冷めた茶を口にする。そして「苦い」と顔を顰めた。侍女は慌てて代わりの茶を淹れてくれた。

「それで、正妃を替える理由は……聞くまでもないわね」
「そうです、このままではサハンナと結婚は難しいと気が付いたようで。そりゃそうでしょうよ、あのオクタヴィア・アングラルド殿下に喧嘩を売る阿呆なのですから、今頃は王も王妃も頭を抱えているでしょうね」
「ふむ」

今回の件はサハンナの首と賠償金だけで済ませようとすることは間違いないだろう、ここに来て一気に王族はオブリネール侯爵家に頭が上がらないことになったのだ。


「彼、クレマンは愛するサハンナのやらかしをどう受け止めるかしら、彼女の死罪を嘆くのでしょうけれど……まぁ私が口を挟むことではないわね」

かつて、クレマンの愛を奪い合った仲だが、いまのアルメスにとって悍ましい過去でしかない。早く忘れたいと願いつつ紅茶を一気に飲み干すのだった。




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