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しおりを挟むあれから五年、すっかり調教されたニールはアルメスの言いなりだ。政治家になりたいだのという妄言も言わなくなった。だが、肝心の父ランデルからは野心が抜けない。近頃は妃候補として勉学に励むように言い付けてくる。
「時間がないわ、今の私は13歳。後3年……16歳になったら妃候補として確定してしまう」
ぶつぶつと拙い拙いと言いながら居室の中を徘徊している、侍女だったネリゼはとうの昔に伯爵家へ嫁ぎ幸せを掴んでいた。
「あぁ、羨ましい!伯爵はとても優しい殿方だと手紙にあるわ!」
彼女はない物ねだりするように蒼くなったり赤くなったりと忙しい。王太子クレマンがクズでなければここまで悩まずに済むのにと苛立つ。
「それならば頭の悪い振りをすれば良いのでは?」とニールは至極当然の事を言う。
「バカね!自分を下げてまで候補から外れてどうするの!あんたに矜持はないわけ?」
近頃は成長してキツイ顔になってきたアルメスに睨みつけられて「ごめんなさい」と言いながら恍惚な顔をするニールは変態である。
「ああ……その眼差しは素晴らしい、ボクは満足ですよ。ご主人様」
「あーはいはい、ド変態が死ね」
「ふわぁぁぁ!何というご褒美!ありがとうございます!」
変態に拍車がかかったニールはビクビクと前のめりになって逝ってしまったようだ。つくづく変態な兄を見てウンザリするアルメスだ。
「いい事兄さん、父様は自分の娘を捨てゴマにするほど狂っているの。出世欲の塊なのよ、これをどうにかしないと私の将来はメチャクチャなのよ!」
「ああ……可哀そうなアルメス様!わかりました!全身全霊で阻止してみせますとも!上手く行った暁にはボクの事を踏みつけてOOを潰してくださいね!」
「うわぁ……」
***
「茶会ですって?」
午後一から父に呼びつけられたアルメスは不機嫌さを隠そうともせず、嫌そうな顔をした。貴族の娘としてはとても残念な醜態と言える。
「なんだその顔は、常に人の目を気にしていろ。誰が見ているがわからないのだぞ」
「ふん、私には関係ないわ。剣の稽古を中断してまで聞く話ではないもの!失礼します」
「待て!女だてらで剣などと」
「はあ?その古臭い考えうんざりしますわ」
悉く父親に楯突くアルメスは反抗期特有の拒絶反応をした。人生二度目の反抗期は酷いものだ。
「良いかアルメス!王家主催の茶会は必ず出て貰う!なんと言っても王妃様主催なのだからな!」
「ふん、馬鹿々々しい。尻尾振りなどしませんからね」
「アルメス!」
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