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屋根裏部屋から届く声を聞きながらジーンは眠りについた。
「ふふ、ウルサイなどと思わないわ。なんて心地良い音かしら」
そう呟くとジーンはベッドに身を沈め夢に落ちた。
ジーンは仄暗い場所で一人で佇んでいる夢を見た。
青白い光で微かに目視できるのは、壊れて崩れた石柱と冷たい白色の床だった。
「夢なのに冷たいとわかるものなのね……」
見回すと細く長く延びる階段を見つけた、先が暗くて足元は見えないが恐怖はなかった。
なにもかも諦めた彼女だからこそかもしれない。
「踏み外して死ねるのならそれでいいもの……」
微笑みながら階段をヒタヒタと上る、時々崩れている箇所があって踏み外しそうだったがジーンは気にしなかった。
やがて広い踊り場に出た、階段はまだ先に延びてはいるがそれ以上進むことは叶わなかった。
黒衣を纏った何者かが彼女を拘束したからだ。
銀色の髪に青白い瓜実顔の男は恐ろしく美しい貌をしている。だが死神ではなさそうだ。
「……死を期待して上ったのに、ガッカリしたわ」
「夢を叶える途中でそれを望むのか?お前の魂は美味しそうに光っているぞ」
黒衣の男は掌に何かを乗せて、ジーンの目の前に突き出した。
ドクドクと動く赤い塊は心臓だった。
「ひょっとして私の心臓?」
「そうだぞ、なんだ覚えてないのか。呑気なヤツだな」
拍子抜けした男は拘束を解いた、逃げる様子がないと知って何故かつまらなそうだ。
男は悪魔だと名乗った、高熱を出して気を失った時に生死を彷徨った彼女が無意識に悪魔を呼んだのだという。
「さっぱり記憶にないわ」
「……意識の混濁にあったからな、目覚めとともに忘れたか。可笑しいと思わないのか?己の性格がガラリと変わった事に違和感を持つだろうに」
「あら、あなたのせいなの?……そっかそういう契約をしたってことね」
「理解が早くて助かるね、あの日、お前の悲しい魂に呼ばれて来た甲斐があったよ。凄く美味そうだ」
目の前の悪魔はジーンの心臓にキスを落としてニヤリと笑う。
「ふーん、魂って心臓に宿るものなの?」
「いいや、そういうわけじゃない。別に契約箇所がたまたま心臓だっただけさ。脳でも眼球でもなんでもいいのさ、ただな命に係わる重大な箇所ほど願いは叶い易く俺の魔力も強くなる、そして魂も美味しくなるんだ」
悪魔は舌なめずりして下品に嗤った。
「よくわからないわ、結局魂はどこにあるのよ?」
「秘密だ」
なんだそれはとジーンは不貞腐れた。
「それで私の願いは叶ったと判断して迎えにきたの?」
「いいや、残念ながらお前の魂はまだ満足してない、非常に残念だがな!でもそれは魂がもっと美味くなるという事だからな、我慢してやる」
「それはどうも」
それから悪魔は契約箇所を増やせと言ってきた。
「なんだ、それが目的だったの。どうぞ、好きなところを奪えばいいわ」
ジーンは迷うことなく両手を広げて身を捧げるように微笑んだ。
「なんて潔い、お前はとても自分に残酷で美しいのだな」
悪魔は蠱惑的な笑みを浮かべるとジーンの身体に触れた。
「ふふ、ウルサイなどと思わないわ。なんて心地良い音かしら」
そう呟くとジーンはベッドに身を沈め夢に落ちた。
ジーンは仄暗い場所で一人で佇んでいる夢を見た。
青白い光で微かに目視できるのは、壊れて崩れた石柱と冷たい白色の床だった。
「夢なのに冷たいとわかるものなのね……」
見回すと細く長く延びる階段を見つけた、先が暗くて足元は見えないが恐怖はなかった。
なにもかも諦めた彼女だからこそかもしれない。
「踏み外して死ねるのならそれでいいもの……」
微笑みながら階段をヒタヒタと上る、時々崩れている箇所があって踏み外しそうだったがジーンは気にしなかった。
やがて広い踊り場に出た、階段はまだ先に延びてはいるがそれ以上進むことは叶わなかった。
黒衣を纏った何者かが彼女を拘束したからだ。
銀色の髪に青白い瓜実顔の男は恐ろしく美しい貌をしている。だが死神ではなさそうだ。
「……死を期待して上ったのに、ガッカリしたわ」
「夢を叶える途中でそれを望むのか?お前の魂は美味しそうに光っているぞ」
黒衣の男は掌に何かを乗せて、ジーンの目の前に突き出した。
ドクドクと動く赤い塊は心臓だった。
「ひょっとして私の心臓?」
「そうだぞ、なんだ覚えてないのか。呑気なヤツだな」
拍子抜けした男は拘束を解いた、逃げる様子がないと知って何故かつまらなそうだ。
男は悪魔だと名乗った、高熱を出して気を失った時に生死を彷徨った彼女が無意識に悪魔を呼んだのだという。
「さっぱり記憶にないわ」
「……意識の混濁にあったからな、目覚めとともに忘れたか。可笑しいと思わないのか?己の性格がガラリと変わった事に違和感を持つだろうに」
「あら、あなたのせいなの?……そっかそういう契約をしたってことね」
「理解が早くて助かるね、あの日、お前の悲しい魂に呼ばれて来た甲斐があったよ。凄く美味そうだ」
目の前の悪魔はジーンの心臓にキスを落としてニヤリと笑う。
「ふーん、魂って心臓に宿るものなの?」
「いいや、そういうわけじゃない。別に契約箇所がたまたま心臓だっただけさ。脳でも眼球でもなんでもいいのさ、ただな命に係わる重大な箇所ほど願いは叶い易く俺の魔力も強くなる、そして魂も美味しくなるんだ」
悪魔は舌なめずりして下品に嗤った。
「よくわからないわ、結局魂はどこにあるのよ?」
「秘密だ」
なんだそれはとジーンは不貞腐れた。
「それで私の願いは叶ったと判断して迎えにきたの?」
「いいや、残念ながらお前の魂はまだ満足してない、非常に残念だがな!でもそれは魂がもっと美味くなるという事だからな、我慢してやる」
「それはどうも」
それから悪魔は契約箇所を増やせと言ってきた。
「なんだ、それが目的だったの。どうぞ、好きなところを奪えばいいわ」
ジーンは迷うことなく両手を広げて身を捧げるように微笑んだ。
「なんて潔い、お前はとても自分に残酷で美しいのだな」
悪魔は蠱惑的な笑みを浮かべるとジーンの身体に触れた。
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